『花戦さ』『ハクソー・リッジ』など、武器を持たずに戦う人々を描く映画の魅力

(C)2017「花戦さ」製作委員会

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戦という言葉には必ずと言ってよいほど暴力や武器のイメージが伴うが、歴史の中にはそういった手段を用いずに戦いを駆け抜けた人々の姿がある。今回は、武器を持たずに戦う人々の姿を描く映画として、6月の公開作品から『花戦さ』と 『ハクソー・リッジ』 をピックアップ。それぞれの魅力と併せて観たい作品を紹介する。

武器は花!秀吉に戦いを挑んだ花僧の物語 『花戦さ』

息子の鶴松を亡くし、寵愛していた千利休(佐藤浩市)との反目も重なって暴君と化してしまった豊臣秀吉(市川猿之助)を、花で諫めた花僧・池坊専好(野村萬斎)の姿を描く歴史ドラマ。萬斎が演じた主人公の専好は、最後まで自身の信念を曲げず、美意識を追求して散った利休の遺志を継いで、刀ではなく花を武器として、時の権力者・秀吉に戦いを挑む。その高貴な精神性は、彼が手掛ける立花のように美しく、武器を用いて戦う人々の姿からは生まれえない独特な魅力と、誰もをうならせる説得力を感じさせる。

およそ500年前の物語を描く本作だが、劇中には共謀罪についての議論が紛糾している今日に通じる「監視社会」の恐怖も映し出されており、現代人の胸を打つメッセージ性も十分。萬斎を中心とする実力派俳優たちのアンサンブル、そして若手女優の森川葵が見せる瑞々しい演技にも引き込まれるものがある。


映画『花戦さ』
公開中

【出演】 野村萬斎(池坊専好)市川猿之助(豊臣秀吉)中井貴一(織田信長)佐々木蔵之介(前田利家)佐藤浩市(千利休) 高橋克実(吉右衛門)山内圭哉(池坊専伯)和田正人(池坊専武) 森川葵(れん)吉田栄作(石田三成) 竹下景子(浄椿尼)

【脚本】森下佳子
【音楽】久石 譲
【監督】篠原哲雄
【原作】鬼塚 忠『花戦さ』/角川文庫刊
【配給】東映


銃を持たずに沖縄戦を駆け抜けた衛生兵の姿とは? 『ハクソー・リッジ』

メル・ギブソン監督が、アンドリュー・ガーフィールドを主演に迎え、太平洋戦争における沖縄戦で衛生兵として数多くの命を救ったデズモンド・ドスの姿を描く戦争ドラマ。衛生兵を主人公としているだけでなく、銃を握ることを拒否した兵士=良心的兵役協力者としてのドスの姿を描くこと(通常、衛生兵は自衛のために銃を持つ)によって、物語には既存の戦争映画にはない斬新な切り口が生まれている。

また、徴兵検査に合格することができなかった者たちの悲劇的なドラマや、ドスの父親であるトム (ヒューゴ・ウィービング)の過去、そしてドスが直面する苦境によって形成される人間模様からは、戦争に参加することの意味合いを深く考えさせられる。また、終盤で展開する苛烈な戦闘は、『プライベート・ライアン』を彷彿させる激しさ。ゴア表現にも妥協がなく、戦場のリアリティが徹底的に追及されており、これとドスの非暴力に基づく英雄的行いが対をなすことにより、クライマックスには力強い感動が生まれている。


映画『ハクソー・リッジ』
公開中

監督:メル・ギブソン
製作:ビル・メカニック
出演:アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワーシントン、ルーク・ブレイシー、テリーサ・パーマー、ヒューゴ・ウィーヴィング、 レイチェル・グリフィス、ヴィンス・ヴォーン
原題:Hacksaw Ridge/2016年/アメリカ・オーストラリア/139分/英語、日本語/PG-12
配給:キノフィルムズ


併せて見たい作品は?

『花戦さ』『ハクソー・リッジ』のほかにも、ユーモアを武器にヒトラー批判を展開したチャップリンの名作『独裁者』や、太平洋戦争中の厳しい暮らしを創意工夫で生き抜いた市民の姿にスポットを当てた『この世界の片隅に』など、武力ではなく、言葉や思想を武器に“戦い”を走り抜けた人々の姿を描く映画には名作が多い。ド派手な戦闘を描く映画も魅力的だが、その逆の方向性を持つ作品からは、戦争や戦いについての新たな解釈が得られるはずだ。国家間の緊張が高まる今だからこそ、こういった作品を見てはいかがだろうか?

(文:岸豊)

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