テクニックや演技でなく、“そこに存在する”ということ。そして“日本人らしさ”とは―映画『ライフ』真田広之インタビュー

真田広之

真田広之

日本を代表する俳優から世界で活躍する俳優へ──『ラストサムライ』をはじめ『サンシャイン 2057』『ウルヴァリン:SAMURAI』『ラッシュアワー3』などのハリウッド映画で、日本人らしさを活かした役で活躍し続ける真田広之。最新作はジェイク・ギレンホールライアン・レイノルズレベッカ・ファーガソンと共演、ダニエル・エスピノーサ監督の『ライフ』。6名の宇宙飛行士が火星で未知なる生命体を発見。人類史上初の発見となるはずが、人類滅亡への大惨事の始まりとなる、SFホラーだ。

真田さんが演じるのは、フライト・エンジニアのショウ・ムラカミ。ベテランのシステム・エンジニアだが、最初の設定から大きな変更があったという。

「最初にお話をいただいたときは、新米宇宙飛行士の設定でした。ただ、自分の年齢からしてもそれは難しいのでは……と思い監督に伝えると、しばらくして、引き受けてもらえるのならベテランの宇宙飛行士に設定を変えると連絡がありました。ムラカミは4回目くらいのミッションで、新人を育てるポジショニングはどうかと。その設定なら演じられる! と引き受けました」

真田演じるショウ・ムラカミ

真田演じるショウ・ムラカミ

設定を変えてでも真田広之に演じてほしいと思わせる、それが真田さんの実力であり凄いところだ。今回はエンジニアとしての専門知識を学び、無重力を表現するための身体的な挑戦もあり、演技面においてもクルーのなかで一番恐怖を抱いている重要なキャラクターを任された。未知なる恐怖とどう向きあったのだろうか。

「地球に残してきた家族に新しい命が生まれ、自分は宇宙で地球外生命体と出会う、ムラカミは同時に2つの“ライフ”と対峙します。任務を果たして生きて家族のもとに帰りたい、彼のなかに生まれた里ごころによって、他の人よりも恐怖が増しているキャラクターだと思い、それも役の個性として使っています」

“カルビン”と名づけられた未知なる生命体はCGで描かれる。撮影現場ではカルビンが今どんな大きさでどんな形態をしているのか、想像力を駆使しなくてはならなかった。

「正体が何も分からない存在はそれだけで怖い。そんな生命体と出会ったとき、人間はどう対処するべきなのか、問いかけと警告がテーマのひとつになっています」と言うように、人間としてのライフ、カルビンのライフ、さまざまな“ライフ”を提示している。映画のなかでも描かれることだが、カルビンは本当に悪意や敵意があるのか? 生存本能が働いているだけではないのか? そこには新しい恐怖があった。真田さんはカルビンについて詳しく説明する。

レベッカ・ファーガソンと。

レベッカ・ファーガソンと。

「カルビンは宇宙の他の生命体にとっても凶暴な存在で、それを自然が封じ込めていたとしたら? 人間が寝た子を起こすように眠りから覚ましてしまったとしたら? 科学者にとっては名誉ある発見かもしれない、企業にとってはお金になるかもしれない、でもそれは人間のエゴです。敵か味方か、どちらの可能性もありうる生命体だとしても、あんなふうに電気でピッと起こされたら、敵と判断されても仕方ないですよね。そんなふうに人間がカルビンに対してしたことの結果、あれほどのモンスターを生んでしまったのではないかと思うんです。自分たちにライフがあるように、ほかの生命体のライフとどう向きあっていくのか。この映画にはさまざまなライフが込められていて、監督が意識していたのはそこでした」

地球上の食物連鎖のように宇宙にも食物連鎖がある──そう考えるとゾッとする。そして、そのゾッとするリアリティーこそダニエル・エスピノーサ監督が目指したものであり、そのために監督が用意したのは、ISS(国際宇宙ステーション)を再現したセットだ。

ジェイクとレベッカ

ジェイクとレベッカ

「ロンドンの大きなスタジオを2つ3つ使い、そこにISSを実寸大で作って撮影しています。SF映画なのに合成用のグリーンスクリーンが一切なく、360度、どこを映しても撮影できる環境でした。しかもセット内のコンピュータのパネルもスイッチも連動していて、ボタンを間違えるとNGになってしまう。撮影は何十ページ分を通しで撮るので、無重力の動きをつけながら、エンジニアとしてコンピュータ操作もする。リハーサルを重ね、身体にたたき込んでいく大変さはありましたが、リアルに作られたセットで演じることは役者としての醍醐味でした」

この『ライフ』はまぎれもなく超大作だが、監督は「ハリウッドのエンターテイメントにはしたくない。明日にでも起こりうる出来事かもしれない、そんなふうに信じてもらえなければ何の恐怖も生まれない」と、役者にも究極のリアルを求め、真田さんたちはそれに応えた。それは「削ぎ落としの作業」「いかに素材のひとつとしていられるか」だったと語る。

ショウ・ムラカミとしてそにいることが求められたという

ショウ・ムラカミとしてそにいることが求められたという

「俳優の性でつい誇張してみたくなるのですが、すべて拒絶されました。演技をするな、セリフっぽく言うな、動きに関しても説明的なことをするな……テクニックや芝居が見えた途端に『ノー!』と言われる(苦笑)。その役になって生きて生活をしてくれ、真実を見せてくれという監督でした。スタントに関しても同様で、スタントマンたちが(無重力を)操るロープにしても、一瞬でも重量を感じると『ノー!』が飛んできました」

映画を観た誰もが思うだろう。実寸大のISSを作り、そのなかでどうやって無重力空間を作り出したのか──。それは何ともアナログな撮影方法だった。

「俳優部とスタント部がタイミングを合わせて動きを作っていくのですが、俳優だけでなくセットも回る、クレーンに乗ったカメラのレンズも回る、合わせ技で無重力を映し出しています。非常にアナログです(笑)。全員のタイミングが合わないとならないので、シーンによっては何十テイクということもありましたが、それは俳優としてとても嬉しいこと。なので『OK!』が出るとテンションは上がりますし、チームワークが強くなっていきました。そのチーム感、連帯感、苦楽を共にしている感じが、そのままISSで過ごしている6人の空気感に繋がっていきました」

実はアナログな撮影方法

実はアナログな撮影方法

改めて凄いと感じるのは、日本からハリウッドへ拠点を移した真田さんのチャレンジング精神。日本を出たことは正解だったかという問いに「今のところはそう思っています」と静かに答え、こう続ける。

「ようやくハリウッドでどう活動すればいいのかペース配分が見えてきて、作品ごとに知り合いも増え、楽しめるようになってきました。俳優として海外で活動するにあたって、言葉は必要不可欠なライセンス。そして、海外の映画で日本人をキャスティングするときに彼らが求めているのは、日本人らしさです。西洋ナイズされた日本人は必要ない。日本を出ることも、海外を学ぶことも大事ですが、俳優においては日本を出ても失ってはいけないものの方が大きい。そのなかで、どんな役と出会えるのか、どの監督と出会えるのか、ひとつひとつの出会いを大切にしながら、ステップアップに繋がるものに飛び込み続けていきたいです」

(取材・文:新谷里映)


映画『ライフ』
公開中

監督:ダニエル・エスピノーサ(『チャイルド44 森に消えた子供たち』『デンジャラス・ラン』
出演:ジェイク・ギレンホール、ライアン・レイノルズ、レベッカ・ファーガソン、真田広之

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アーティスト情報

真田広之

生年月日1960年10月12日(58歳)
星座てんびん座
出生地東京都品川区大井町

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ライアン・レイノルズ

生年月日1976年10月23日(42歳)
星座てんびん座
出生地

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