【レビュー】映画『ワンダーウーマン』―性別を問わず見る者を魅了する、新たなスーパーヒーローの姿がここに!

(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNEENTERTAINMENT LLC

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10年前のハリウッドでは、製作費が1億ドルを超えるビッグバジェット作品において、女優が主演を務めたり、女性の監督が起用されることは考えにくかったが、時代は変わった。ここ数年で、女優達は次々に男女間の不平等を訴え、女性監督たちも権利の拡大を求めて行動してきた。この今日の映画界における「ウーマン・リブ」的運動の一つの到達点となったのが、パティ・ジェンキンス監督がメガホンを取り、イスラエル出身の美貌の女優ガル・ガドットが主演を務め、1941年にDCコミックスに登場して以来、世界中で愛され続けている同名女性ヒーローの姿を描いた映画『ワンダーウーマン』である。

物語の主人公は、世界から隔絶された孤島・セミッシラで生まれ育ったアマゾンの王女ダイアナ・プリンス(ガドット)だ。アマゾン最強の戦士として育て上げられたダイアナは、ある日、第一次大戦において敵対するドイツ兵に追われ、その逃避行中にセミッシラに不時着したイギリスの諜報員スティーブ(クリス・パイン)の命を救う。スティーブから世界の悲惨な実情を聞いたダイアナは、戦争を始めたのが、ゼウスとの闘いによって打倒されたとされていた悪の軍神アレスだと判断。戦争を終わらせるために、スティーブとともにフランスの戦線に赴いた彼女は、“ワンダーウーマン”として弱き人々の命を救おうと奔走するのだが...。

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8月25日現在、製作費1億4,900万ドルに対して、世界興行収入でおよそ8億ドルという超大ヒットを飛ばし、女性監督の興行収入でも史上最高を記録している本作。この大成功の要因となったのは、何か? それは、女性的な「ファンタジー」と男性的な「アクション」を融合させた作風に他ならない。序盤ではダイアナの人間的な背景が描かれるが、彼女は「ゼウスとアレスの寓話」を事実だと信じる純粋無垢な少女として描写される。ある種のおとぎ話を信じる少女という肉付けは、ディズニー作品をはじめとする典型的な“ヒロイン”のイメージにピタリとあてはまるものだ。また、ダイアナは自身の行動原理として“愛”を掲げているが、このキャラクターはヒーロー映画で他に類を見ない、ワンダーウーマン独自のものである。美人なのにオシャレに興味がなく、たびたび天然発言をして、愉快で可愛らしいギャップを感じさせる点も、ヒーローとして非常に新鮮だ。

ヒーローらしからぬ親しみやすさを感じさせる一方で、彼女は最強の女戦士という側面も持っている。スティーブとともに第一次大戦の戦地へ赴いたのちには、その戦闘力を遺憾なく発揮することとなるが、彼女が披露するアクションは、男性を主人公とするスーパーヒーロー映画のそれと比較しても劣って見える部分が少ない。欲を言えば、CGに依拠している部分が多いので、“カメラの中で完結する”(撮影現場で完結する)アクションがもう少しあっても良かったとは思うのだが、スピーディかつトリッキーな動きを美しく描き出したアクションの数々では、カメラワークやCGといったテクニカルな部分も最大限の効果を発揮しており、スーパーヒーローとしてのワンダーウーマンの魅力が十分に作られている。

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ダイアナの知識に関する描写をはじめ、世界観の設定には煩雑な点も見受けられるが、本作は多層的な人間ドラマとスタイリッシュなアクション、そして悲劇に伴う挫折やほろ苦いロマンスが溶け合った見ごたえ十分のストーリーを紡ぐ。終盤における意外な真実の露見と、これに伴うダイナミックなバトルのスタートも、観客の目を見開かせることだろう。ワンダーウーマンがバットマンらとスーパーヒーローのチームを結成する模様が描かれる『ジャスティス・リーグ』の公開を11月に控えていること、そして昨年に公開した『バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生』が批評的に成功を収めることができなかったことから、本作には興行面でも批評面でも成功を収めることが求められていたわけだが、メガホンを取ったジェンキンス監督や主演のガドットは、見事にこのハードルを越えてみせた。

「ファンタジー」と「アクション」という、女性に対する訴求性と男性に対する訴求性のハイブリッドが実現したことによって、本作が女性・男性の映画ファンの双方から支持されたのは必然と言える。これまでのハリウッドにおいては、女性ヒーローを描く作品は興収が見込めないという男性優越主義的な思想が根ざしていたし、スーパーヒーロー映画は男性が主人公になることが多いために「男性向けのジャンル」だと考えられてきたが、女性を主人公として、性別を超えて見る者の目を奪う物語を構築し、世界興収8億ドルという驚異的な成功を収めた本作は、そうした固定観念を覆す変革的な作品となった。

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マーベル製作の『アベンジャーズ』シリーズに登場したブラック・ウィドウ(スカーレット・ヨハンソン)やスカーレット・ウィッチ(エリザベス・オルセン)など、近年では男性のスーパーヒーローに負けず劣らずの活躍を見せる女性のスーパーヒーローの姿も描かれてきたが、本作に匹敵する製作規模で、女性を単体の主人公として描くスーパーヒーロー映画は公開に至っていない。この背景を踏まえると、女性を主人公とするスーパーヒーロー映画をこのスケールで製作し、大成功を収めたDCエンターテイメントおよびワーナー・ブラザースなど各製作会社は、映画界のバイオリズムに非常に大きな好影響を与えたと言える。気が早く感じられるが、早くも続編の企画は始動しており、ガドットはもちろん、ジェンキンス監督もカムバックするとのこと。果たして、次作でワンダーウーマンはどんな冒険を繰り広げるのだろうか? 一映画ファンとして、今から胸が高鳴ってしまう。

(文:岸豊)


映画『ワンダーウーマン』
公開中

配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:パティ・ジェンキンス
出演:ガル・ガドット、クリス・パイン

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バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生

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出演者 ベン・アフレック  ヘンリー・カヴィル  エイミー・アダムス  ジェシー・アイゼンバーグ  ダイアン・レイン  ローレンス・フィッシュバーン  ジェレミー・アイアンズ  ホリー・ハンター  ガル・ガドット  スクート・マクネイリー
監督 ザック・スナイダー
製作総指揮 クリストファー・ノーラン  エマ・トーマス  ウェスリー・カラー  ジェフ・ジョンズ  デヴィッド・S・ゴイヤー
脚本 クリス・テリオ  デヴィッド・S・ゴイヤー
音楽 ハンス・ジマー  ジャンキー・XL
概要 DCコミックスが誇る2大スーパー・ヒーロー、バットマンとスーパーマンがスクリーンで激突する夢の企画が実現したSFアクション大作。スーパーマン役は前作「マン・オブ・スティール」に続いてヘンリー・カヴィル。一方、バットマン役には「ゴーン・ガール」のベン・アフレック。監督は「マン・オブ・スティール」のザック・スナイダー。真面目な新聞記者クラーク・ケント。しかし、その正体はスーパーパワーを秘めたクリプトン星人だった。第二の故郷・地球でスーパーマンとして幾度となく人類の危機を救ってきた彼だったが、その超人的なパワーが皮肉にも潜在的な人類最大の脅威ともなっていく。バットマンとしてゴッサム・シティの平和を守ってきた大富豪ブルース・ウェインは、そんなスーパーマンに危機感を募らせていくが…。

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