「右に倣え」の映画はつくらない! 新たなジャンルに挑み続ける『新感染 ファイナル・エクスプレス』のヨン・サンホ監督インタビュー!

ヨン・サンホ監督

ヨン・サンホ監督

2016年のカンヌ映画祭で大絶賛され、その後世界の映画祭で様々な賞を受賞、各国の度肝を抜き、席巻したパニックムービー「新感染 ファイナル・エクスプレス」が9月1日(金)、いよいよ公開。公開に合わせて来日していたヨン・サンホ監督に話を聞いた。

―監督の過去作『豚の王』『我は神なり』『ソウル・ステーション パンデミック』を全部見ました。これらの作品が、『新感染 ファイナル・エクスプレス』にたどりつくまでに、どんな影響があったのか、どうつながっていったのかを教えてください。

これまでの作品を撮影しているときに中心に捉えていたのは「家族関係から醸し出される感情」でした。

『豚の王』という作品では学校におけるヒエラルキー、つまり階級を描いているが、子供たちの中には貧しい家庭もあれば、裕福な家庭もある。そういったことを含めての階級というものを描きました。

『我は神なり』では暴君のような父親がいて、彼によってもたらされる感情というものを描きました。

『ソウル・ステーション パンデミック』では更にそれを極端化し、家族のない人たちの物語を描いているが、終盤はまるでこの世の終末を感じさせるような終わり方になっている。これを撮影し終わって、「次の『新感染 ファイナル・エクスプレス』では何をテーマにしようか」と考えたときに、「次の世代に何を残せるか」ということを考えました。

今が仮にひどい世代だとしたら、次の世代には何を残せるのだろうかという問いかけをしたいと。父親であるソグの世代が、子供であるスアンの世代に残せるものがあるとしたら、それは、とても簡単な「感情」なのではないかと思いました。ですから、それは歌に表されているようなものではないかなと思い、「次の世代に残せる感情」というものをテーマにしたのです。

(C)2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved.

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―そのような気持ちになったのには自身の気持ちになにか変化があったのでしょうか?

個人的な変化があるとしたら、子供が産まれたということでしょうか。子供が産まれた後は本当に色々なことについて考えました。親として子供に望むことは何か? どんなふうに育ってほしいか? と考えたときに、最初に思ったのが「この子は不幸にならないでほしい」ということでした。しかし、よくよく考えてみたら、この子が不幸ではないということは、「不幸な人を理解できない」ということにつながり、これはこれで悲劇だと思い、子供に対する期待を変えたのです。

次に私が子供に期待したことは、人に共感できる能力を持ってほしいということでした。自分は体験していないのだけれども、他人が感じた感情をまるで自分が感じたように共感できる子になってほしいと願うようになりました。最終的には親として子供に望んだことはこのようなことでした。

―近年、ここまでの規模で公開して、話題となる韓国映画はありません。韓国映画ファンはもちろん、ゾンビ映画ファンまでも期待している作品となりましたが、監督ご自身で感じられた日本での期待値の大きさ等があれば教えて下さい。

正直、韓国にいるときは、日本のここまでの期待値の大きさというのはわからなかったのですが、来日してこんなふうに取材を受けている中で感じたことは、本当にすごい数の方が大きな期待をしているのだなと身をもって体験しているところです(笑)。

9月1日の公開日は私自身も本当に楽しみにしているのですが、まず何よりも大勢の方がこの作品を楽しんで見てもらえたらなということを切に願います。楽しんでご覧頂いた中で、何か感じとった感情があったら、「その感情の源は何か?」ということを周りの方々と話し合ってほしいなと思います。そんなふうに映画を見て感じた感情についても話し合えるような機会を持っていただけたら、作ったものとしては本当に嬉しいことです。

(C)2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved.

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―日本で人気のある韓国映画のジャンルというのは、アクションや、スリラー、暴力ものが多いのですが、今回、ゾンビ映画という韓国でも初のジャンルに挑戦された理由は?

以前私は、『豚の王』『我は神なり』といった社会派アニメーションドラマを撮ってきた経緯がありましたので、周りの方から「次はジャンル映画を撮ったらどうか?」と薦められました。そこから、『ソウル・ステーション パンデミック』を制作することになったのですが、出資・配給をしてくださった「NEW」という会社から、「『ソウル・ステーション パンデミック』をリメイクして実写映画にしたらどうか?」という提案を頂いたのです。でも、私としては「アニメと実写とはいえ、同じ作品を2回撮影するのは嫌だな」と思いまして、逆に「『ソウル・ステーション パンデミック』の翌日に、ソウル駅を出発するKTXにゾンビが1人乗っている映画を実写で撮ったらどうか?」と提案をしました。そうしたら、快く受け入れてくださって今に至ります。

―韓国映画でゾンビ映画は挑戦的だと思ったのですが、「これに挑戦しよう」という何か決め手のようなものはあったのでしょうか。

実はゾンビ映画をめぐってはいくつか面白い話があります。『我は神なり』という映画をつくる前からNEWと色々な話をしている中で、「どんな映画を撮りたいか?」との問いに、自分の持っていたアイデアをいくつか提示しました。その中に、『ソウル・ステーション パンデミック』もありました。しかし、その当時、NEWの方からは「ゾンビ映画を作ってもヒットしないから絶対に撮らないほうがいい」と言われていました。当時は私もその意見に同感でした。大衆の多くはゾンビを好きではないというのが伝説としてありましたし、私自身もそう思っていたので。

その後、仕事をしていた数年間の間にゾンビに関する色々なものが世の中に出回り始め、WEB漫画でもゾンビをモチーフにしたものが何本か作られている状況を見て、「確実ではないかもしれないが、今であれば大衆はゾンビを受け入れられるという寛容度が増しているのではないか?」と思いました。

映画というのは冒険も必要です。今なら大衆も受け入れてくれて大丈夫なのではないかと、私も、プロデューサーも、NEWの方たちも同意見でした。

(C)2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved.

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―資金が出にくい題材ではないか? と思ったのですが。

今回は本当に特別なケースだと思います。私は最初にこのゾンビ映画をつくるにあたり、実写も初めてでしたし、規模も小さく、企画の段階ではストーリー自体も列車の中だけの話に限って撮ろうと思っていました。ところが、NEWの方から「超大作でやりたい。商業的にしたほうがヒットする可能性が高いから」とおっしゃって頂いたので、思っていた以上に多くの予算で撮ることができました。

―韓国公開時のコン・ユさんのインタビューの中で、撮影時期にちょうどソウルでMARSが流行していたそうで映画と何かかぶるようなそんな時期があったそうですが、その時期の撮影は大変でしたか?

確かに当時、MARSが流行していたので貿易当局(病原菌を防ぐ国の対策室のようなところ)から言われていたのは、「少しでもMARSの疑いのある患者がいる場合は隔離措置をとる」ということでした。実際に韓国国内では隔離されていた方もいらっしゃいました。もし撮影中にメインの俳優やスタッフが隔離されてしまったら大変なことですので、毎日キャスト、スタッフを含めた全員の健康管理を行っていました。毎日、熱を計ったりしていたのですが、幸い内部から発症する人は出なかったので無事に乗り越えることができたのですが、毎日が緊張の連続でした。

(C)2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM. All Rights Reserved.

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―特別気をつけていたことは?

ビタミンをたくさん摂っていました^^

―韓国映画界に今後望むことは?

韓国映画界の傾向の1つとして、1つのものがヒットすると「それに投資するほうが安全だから」と似たようなモチーフばかりが作られるという風潮があります。でも、映画をつくる以上は、チャレンジ的なモチーフがメインになるべきだと思いますし、そういった様々なジャンルに挑戦していることが韓国映画の力でもあると思いますので、そういった部分をしっかりと守りながらやっていけたらいいなと思います。

次回作『念力』もクランクアップしたとのニュースも伝わり、ますます楽しみなヨン・サンホ監督、コン・ユ主演『新感染 ファイナル・エクスプレス』はいよいよ9月1日公開!

(取材・文:あしあ)


映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』
2017年9月1日(金) 全国ロードショー

監督:ヨン・サンホ「The King of Pigs」(2012年カンヌ国際映画祭監督週間正式出品)
出演:コン・ユ(『トガニ 幼き瞳の告発』『サスペクト 哀しき容疑者』)、チョン・ユミ(『ソニはご機嫌ななめ』『三人のアンヌ』)、マ・ドンソク(『殺されたミンジュ』『群盗』
2016年/韓国/118分/英題:Train to Busan
配給:ツイン

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