【インタビュー】映画『くも漫。』脳みそ夫×小林監督「主演が平田満になっていた…」

映画『くも漫。』脳みそ夫×小林稔昌監督にインタビュー!

映画『くも漫。』脳みそ夫、小林稔昌監督

もしも、風俗店のサービス中にクモ膜下出血で死にかけたら…。衝撃の実録コミックを実写映画化したくも漫。が10月3日(火)TSUTAYAにていよいよレンタル開始! このたび、本作で映画初主演を務めたお笑い芸人・脳みそ夫と、小林稔昌監督にインタビューを敢行した。

「くも漫。」映画化のキッカケは…?

原作者・中川学の自伝漫画を映画化した本作。長年のニート生活の末、父親のコネで教育現場での職を得た中川学29歳。仕事も順調に進み、初めて社会人としての手ごたえと充実感を感じた彼は、その高揚感と抑えきれない性欲から風俗店へと足を運ぶ。No.1 風俗嬢ゆのあの最高のサービスを受け、絶頂を迎えるその瞬間! 完治率わずか30%のクモ膜下出血を発症する…。

誰にでも起こりうるクモ膜下出血の過酷な病床生活を等身大にコミカルタッチで描きながら、男のみみっちいプライド、人の優しさ、さらに生と死のあり方までを映し出した本作。今回の映画化について、本作が長編映画初挑戦となる小林稔昌監督は原作コミックのあるワンシーンを挙げた。

小林監督:僕は基本テレビ番組のディレクターなのですが、自主規制やコンプライアンスでなかなかできないことが多いんです。その中で、原作コミック第2話の“発症の瞬間”を見た時、「あのシーンを映像で作りたい!」と強く思いました。風俗で倒れたことは入口で、その後も中川さんが生き延びて漫画を描いたということが「(発症した)先にドラマがある、絶対何か面白い物語があるはずだ」と確信して企画をつくりました。
普通、風俗店で倒れたことは、隠したいことで、なかなか受け入れられないことだと思うんです。でも、中川さんはそれを“笑い”に昇華して受け入れている。そこから「人生楽しい方がいいじゃない」という“生きる勇気”のようなものも感じました。

映画『くも漫。』

映画『くも漫。』/(C)クリエイティブネクサス

「ドッキリかと思った…」寝耳に水の主演オファー

そして本作で映画初出演を果たしたのは「OL聖徳太子」や「アラサー武士」、「ちびっこ石油王」などユニークながら繊細なキャラクター描写で人気急上昇中のお笑い芸人・脳みそ夫。しかし、当時はまだ無名だった脳みそ夫にとって、主演俳優の大抜擢はまさに寝耳に水の出来事だった。

脳みそ夫:ドッキリカメラかな…と思いましたね(笑)。串カツ屋さんに呼び出されて、マネージャーさんに「実は、主演映画が決まった」って言われても「2度づけ禁止のプレート裏に(隠しカメラが)あるかもしれない…」みたいに信じられなかったのが率直な感想でした。
「ドッキリじゃない」と気づいたのは、現場で何日か撮影した後。スタッフの人たちの疲れ具合が本気すぎて…。ピリピリしてたりすごい疲労感だったので、「こんなドッキリはないだろう」って思いました(笑)。

映画『くも漫。』

映画『くも漫。』/(C)クリエイティブネクサス

そんな脳みそ夫のキャスティングについては、小林監督も「冗談かと思った」と明かす。

小林監督:本作は中川学の物語だから、主演のキャスティングは大事でした。そんな中でウチの制作会社の代表から「脳みそ夫」さんの推薦があったんです。僕は最初、脳さんのことも知らなかったし「何かバカにしているのかな? 冗談かな?」って思ったんです(笑)。

脳みそ夫:そうですね、まだ全然テレビ出ていない、出始めたくらいの頃でしたから…。

小林監督:ただ、クランクインも近づいていたのでとにかく脳さんの動画をめちゃくちゃ見まくりました。その時に「タイタンライブU40」っていうトークライブの動画を観て、あらかじめ持っている構成を、その場の空気の流れで入れ替えたりしていて「ああ、この人は絶対に勘のいい人だ」と感じました。またそのキャラクターの中に、中川学が持つ“ネガティブな印象だけど愛嬌がある”という素養に近いものがあると思いました。

脳みそ夫:コントの芝居を最初にやったら、監督に「それはコントだから、もうちょっと素に近いところで」みたいなお話しがありましたね。逆に素でいればいいだけなので、簡単な部分でした。

小林監督:結局僕らって、小さい映画だし、僕自身もふくめてまだ力もない。ちゃんとオーディションをしたりビッグネームを捕まえることが出来ない中で、沢山観られるネットの動画の声とか、記事とかをみて「どこまでこの人がそのキャラクターに合うだろう?」っていうことを、すごく議論しながらオファーを出す感じでした。

中川学というキャラクターのネガティブな面と、その奥に充満した愛嬌の絶妙なバランス。誇張した演技ではなく素を引き出した芝居で見事に中川学を作り上げていった。しかし、初挑戦となる初日の撮影は「めちゃめちゃ大変だった」と振り返る。

脳みそ夫:初めてが風俗店のシーンで…、もう何が起こってるのかわからないですよね(笑)。ほとんど裸の状態を色んな大人に見られながら…まだ初日でめちゃくちゃドッキリぽかったです(笑)。

小林監督:初日がめちゃくちゃ大変でしたね。何本も映画制作に関わられていた助監督さんも「初日に、こんな深夜まで撮影をするスケジューリングをしたのは初めてです…すいません」って言うくらい。普通初日は、雰囲気を作って“ならす日”らしいんですよ。自分の“線”みたいなものを決めなくちゃいけないし、でも色々大事にしたいシーンだったし、その上「おせおせ!」でピリピリしたムードだったし…。「これがずっと続くのか…」って思ったら、何だかICU(集中治療室)にいる中川学の気持ちになりましたね(笑)。

ロケ先の旅館でネタ見せ? “低予算映画”ならではの苦労

キャスティングにおける緻密なリサーチに加え、限られたスケジュール、予算、人的資源…上映館数も決して多くはなかった“低予算映画”の本作。だからこその苦労も多かったようだ。

小林監督:撮影は上田市内で10日間で撮ったんですが…。宿泊する場所が、僕と、ふたりの助監督ともう1人の4人1部屋で合宿所みたいな雰囲気でした。さすがに、演者さんは別でしたが、それでも一泊4,000円程の旅館でしたからね…。

脳みそ夫:え。そんなに安かったんですか!?(笑)。でも、そこの女将さんと仲良くなって、お孫さんも僕のこと知ってくれていて…。撮影期間がちょうどR-1グランプリ準決勝まで残っていた時期だったんですよね。普段だったら本番前にライブで調整するところを、女将さんの一家を広間に集めて、「明日R-1なんで見てくれ」ってことでネタ見せすることもありました。女将さんにはめっちゃウケたんですが、調整になったのか?っていう(笑)。

小林監督:午前中に病室での自慰行為のシーンを撮影して、OL聖徳太子をやったんですよね(笑)

脳みそ夫:そうそう(笑)それから東京に戻って準決勝をやったんですよ。でもずっと10日間役者モードになっていたから、終わった後に芸人仲間から「おまえ、全然声出てなかったぞ」って。ずっと「中川学です…(ボソボソ)」みたいな感じだったので、役者声でしたから…。
今年のR-1も準決勝まで残っていたんですけど、その前日が名古屋の舞台挨拶で、そこでネタの披露するから「俺なんで毎年『くも漫。』でネタ調整してるんだよ!」って思いましたね(笑)。

小林監督:絶対客層が違いますもんね(笑)

あるWEBサイトで「主演:平田満」になっていた…

映画『くも漫。』

映画『くも漫。』/(C)クリエイティブネクサス

そんな低予算映画ながら、本作の脇を固めるキャスト陣には、平田満立石涼子坂田聡らベテラン俳優陣たちが顔を揃えている。そんな豪華役者陣との共演について聞いてみた。

脳みそ夫:もう、圧倒的な…演技なんかしたら敵わないですからね。なので、それこそ芝居の時はなるべく素に近いところでいるようにしていました。平田さんとは楽屋でお話しもしましたが、演技のことではなく、ずっと下ネタのことしか話してなかったですね…。

小林監督:立石さんに「脳さんどうでしたか?」と聞いたら「脳さんの芝居に合わせて自分も抑え目に、ナチュラルにという感じで母親を演じる様にしていた」という話をしていましたね。やっぱり、平田さんとか立石さんとか、ベテランで芝居経験が豊富な方っていうのは、現場の空気を呼んで、主演・脳みそ夫、中川学に合わせた家族感を出してくれていました。

脳みそ夫:「脳みそ夫の演技が良かった」というお褒めの言葉も頂きますが、やっぱり脇の人が合わせてくれたことがものすごく大きいと思います。

小林監督:あと、原作が実話なのも大きいですよね。もちろん漫画にしているから、原作のキャラクター設定はそれなりにリアルなものから誇張していると思うんです。僕たちもその辺のキャラ設定は誇張していますが、お芝居でやり過ぎるとちょっと引いてしまって、入り込めないこともある…。そこのバランスをキャストのみなさんが台本を読み込んで上手くやっていただいたと思います。

コミックのキャラクターを実写で表現するさじ加減。脳みそ夫のナチュラルな芝居を中心にしたベテラン俳優陣との掛け合いには、個々のキャラクターとその関係性に、等身大で人間臭さい魅力が溢れている。

映画『くも漫。』

映画『くも漫。』/(C)クリエイティブネクサス

脳みそ夫:ただ、あるWEBサイトの紹介で、「主演・平田満」になっていて…。何ですかね、たぶん担当の人が「きっと主演はこの人なんだろう…」って(笑)。

小林監督:あー! あれね、ちょっと面白かったですよね(笑)。顔写真変えてやりたいなっていうくらい、誰かコラージュしてくれないかな(笑)。

脳みそ夫:数日後には直っていましたけど、平田さんが中川学をやるのもなかなか面白いですね…(笑)。

最後のクライマックス、使うつもりのないカットだった!?

お金も時間も少ない中で、原作コミックの世界観、キャラクターの個性、ナチュラルな人間関係の空気感など、こだわりを持って作り上げてきたふたり。インタビュー最後、そんな両名に特に思い出深かったシーンを聞いてみた。

小林監督:どこだろうな…。僕は冒頭から(くもマンに)殴られてアニメーションに行く流れとかはすごく好みなんですよね、個人的にですが(笑)。入口はドキドキする見せ方ができたかなっていうのはありましたね。最初の10分くらいで、「何なのこの世界?」っていう空気から、一気にバスン!と「こういう現実が起きました!」っていう流れは自分としてはすごくお気に入りです。

映画『くも漫。』

映画『くも漫。』/(C)クリエイティブネクサス


小林監督:オリジナルとして観てもらいたいのは、同室の患者・遠藤さんですかね。(最後の)あそこのシーンがあるかないかで、原作にはないオリジナルな表現だったり、テレビではできない映画的表現だったりが出来たのかなと思いました。

脳みそ夫:大変だったのが、車の中で泣くシーンです。牽引車で乗用車を引っ張ってもらっているんですが、「橋を渡りきる間に泣いてくれ。そこが一番いいロケーションなんで」みたいな…芦田愛菜ちゃんじゃないんだから、そんなのいきなり言われても無理じゃないですか(笑)。牽引車のセッティングも4,5時間と凄い時間が掛かるんですが、僕が泣けなくて戻ってきたら、もう現場のピリつきがハンパなくて…。2回目の撮影になるころには、「なんで俺、こんなに責められているんだろう…」って、その状況自体が悲しくなって泣けました。本当、プレッシャーで胃が痛くなるの初めてでした(笑)。

小林監督:一回カットかけた後も本気でずっと泣き続けているんですよ。その時「ヤバい…カットかけちゃったな」と思っていたら、立石さんも脳さんがずっと泣いていたので芝居を続けてくれていたので、結局クライマックスで使ったのはカット後の本気泣きでしたね。

映画『くも漫。』脳みそ夫、小林稔昌監督

映画『くも漫。』脳みそ夫、小林稔昌監督

(取材・文・写真/nony)

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