『海街diary』から『三度目の殺人』まで―広瀬すずが映画で見せた名芝居の軌跡

広瀬すず

広瀬すず

大胆かつ繊細な芝居で見る者を魅了し、若くして邦画界には欠かせない存在となった広瀬すず。もはや国民的女優と言っても差し支えない活躍を見せる彼女は、一躍脚光を浴びたブレイク作『海街diary』から、最新作『三度目の殺人』に至るまでに、どんなキャリアを歩んできたのか?その軌跡を辿ると、透明感に満ちたみずみずしい魅力と、若手とは思えぬ演技巧者ぶりが見えてくる。

映画デビュー作『海街diary』で見せた圧倒的透明感

やはり広瀬を語るうえで、映画デビューを飾った『海街diary』は避けて通れない。綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆が演じる三姉妹と共に暮らすこととなる、孤独を抱える腹違いの妹・すず(是枝裕和監督は子役とキャラクターを同じ名前にすることが多い)を演じた本作では、その圧倒的透明感が衝撃的だった。この透明感が醸し出す儚げで無垢な空気は、親戚から疎外されている孤独な少女という役柄に確かな説得力を与えている。是枝監督による演出が機能していることは明白だが、3人の姉たちとの絡みにも、極めて自然で愛らしい魅力がある。

(C)2015吉田秋生・小学館/「海街diary」製作委員会

(C)2015吉田秋生・小学館/「海街diary」製作委員会

三姉妹との暮らしを送るうちに少しずつ心を豊かにしていくすずの姿は、実に可愛らしいのだが、その可愛らしさの中に、若手女優が出してしまいがちな、あざとさや計算といった余計な部分はない。その結果として、観客は純粋に魅力的な女の子だと感じることができ、広瀬に魅了されたのだ。ちなみに、メガホンを取った是枝監督は筆者が行ったインタビューの中で、広瀬の芝居を「『海街diary』のオーディションのときからムラがなかった」と評していた。この「ムラのない芝居」は、彼女が後に携わる『三度目の殺人』で大きな武器となる。

『怒り』で見せた脱・清純派の覚悟

声優を務めた『バケモノの子』、そして主演作『ちはやふる』『四月は君の嘘』の公開を経て映画ファンに届けられたのが、吉田修一の傑作同名小説を映像化した『怒り』だった。東京・千葉・沖縄にそれぞれ現れた、凄惨な殺人事件の容疑者によく似た男たちと出会った人々の苦悩や葛藤を描く骨太な人間ドラマである。広瀬は沖縄に現れた田中(森山未來)と交流する女子高校生・小宮山泉を演じたのだが、なんと劇中には、アメリカ人によって暴行を受けるシーンがある。清純派の代名詞的な立ち位置を確立していた広瀬が、こうした役回りに挑むだけで衝撃的だったのが、その「やられ様」「汚され方」が実に生々しい。

(C)2016「怒り」製作委員会

(C)2016「怒り」製作委員会

これに続いて見せる泣きの芝居や、精神的空虚の表現に虚構性は現れておらず、その姿から感じられる悲しさには、まさに胸が締め付けられるようだ。家族の物語や青春ドラマへの出演を通じて、“ザ・清純派”というイメージを確立しつつあった広瀬が、キャリアの初期段階でこうしたハードな役に挑んだことは、彼女にとって、ひいては彼女が背負っていく日本映画界にとって、大きな財産になったはずだ。このシーンに挑む覚悟を、彼女がいかにして固めたのかを思うと、一人の映画ファンとしては泣けてしまう。

共演者の変化を受け止める、“ムラのない芝居”が活きた『三度目の殺人』

『怒り』の後は、『チア☆ダン ~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』でキラキラとした姿を見せた広瀬だが、9月9日に公開した『三度目の殺人』では心に影を抱える少女を好演している。『海街』でもタッグを組んだ是枝監督が手掛けた本作は、弁護士の重盛(福山雅治)が殺人事件の容疑者・三隅(役所広司)の真意を追求するサスペンス。広瀬は三隅と親しい女子高生・咲江を演じているが、彼女は笑顔を見せることが皆無に等しく、その姿は広瀬すず史上、最も影を感じさせる。広瀬を象徴する晴れやかな笑顔とは真逆の、氷のような冷たさを感じさせる表情に注目してほしい。

(C)2017 フジテレビジョン アミューズ ギャガ

(C)2017 フジテレビジョン アミューズ ギャガ

先に少し触れたが、是枝監督は筆者がインタビューした際に、咲江の母・美津江を演じた斉藤由貴の芝居が撮影するごとに変わる一方で(これはこれで魅力的だという)、広瀬は芝居を一定に保っており、そのおかげで両者の共演シーンが撮りやすかったと語っていた。実際、広瀬と斉藤の共演シーンはどれも見る者を引き込む「冷たい母子関係」のシーンとして成立している。それは広瀬が『海街』でも見せた「ムラのない芝居」によって、絶えず変化する斉藤の芝居を受け止めていたからに他ならないのである。その女優としての類稀な器量には、脱帽するほかない。

広瀬すずの今後を占う

イメージに囚われず多彩な活躍を見せてきた広瀬は、今後どんなキャリアを歩んでいくことになるのか?まだチャレンジしていないジャンルとしては、アクションやミュージカルなどがあるが、彼女はそうしたジャンルでも成功を収めてくれそうだと期待を抱かせる。先日にはキックボクシングに挑む様子をインスタグラムに投稿していたし、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の初日舞台挨拶でも、アクションで菅田将暉と「闘いたい」とコメントしていた。

そんな広瀬はまだ19歳。八面六臂の活躍を見せても、その将来には無限の可能性が秘められている。国民的女優から、日本を代表する女優、そして世界でも通用する女優に成長していく。そんな輝かしい未来が見えるのは、きっと筆者だけではないだろう。

(文:岸豊)


映画『三度目の殺人』
公開中

監督:是枝裕和
出演:福山雅治、役所広司、広瀬すず、斉藤由貴、吉田鋼太郎、満島真之介、松岡依都美、市川実日子、橋爪功
配給:東宝・ギャガ

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