新作映画『あゝ、荒野』を観るべき3つの理由――今こそ映画化されるべき運命だった、50年前の青春巨編

映画『あゝ、荒野』

映画『あゝ、荒野』/(C)2017『あゝ、荒野』フィルムパートナーズ

『あゝ、荒野』ってどんな映画?

2021年、新宿。かつて振り込め詐欺に手を染め、少年院を出たばかりの新次は、兄と慕っていた先輩を半身不随に追い込んだ元仲間に殴り込みをかけるが、逆に今はプロボクサーとなった相手に強烈な一撃を喰らう。倒れ込んだ新次に手を差し伸べたのが、たまたま近くに居合わせた健二だった。その様子を目撃していた元ボクサーの堀口は、新次と健二を自分が運営するボクシングジムに誘う。やがて二人はプロテストに合格し、互いを高め合うが…。

観るべき理由:1――前後編合わせて305分!規格外の青春巨編

原作は1960年代後半から、文学、戯曲、舞台演出、映画監督、写真家など幅広いジャンルで縦横無尽の活躍を見せた故・寺山修司が生前、唯一手がけた長編小説「あゝ、荒野」。出版から約半世紀を経て、ついに実写映画化された本作は、前後編合わせて305分という規格外の青春巨編に仕上がった。

原作では1966年の新宿が舞台になっていたが、映画版では2021年という設定に。どちらも「東京オリンピック」直後の日本が描かれている。また、映画には2011年の東日本大震災に関する描写があり、原作にも被災した母娘の姿が登場する。原作を大胆に脚色しながら、時空を超えてリンクする日本の実像。そこで叫び声をあげる若者たちの葛藤と焦燥には、いつの時代も変わらない普遍性が刻まれている。名著のリブートとして、今こそ意義がある映画化だったと言えるだろう。

観るべき理由:2――自己更新が止まらない菅田将暉の“今”を目撃

そんな“時代”を捉える本作で主人公のひとりである新次を演じるのは、まさに“今”を捉えて離さない俳優、菅田将暉。幼い頃に母親に捨てられた過去、そして犯罪に手を染めた過ちを背負いながら、ボクシングという生きがいと出会い、心身共にあふれるエネルギーをポジティブに転換させる若者像を等身大で体現した。

その姿が俳優という枠を飛び越え、表現者として貪欲に走り続ける菅田本人とオーバーラップするのは言うまでもない。熱演なんて言葉では測りきれない、文字通りの“熱”となって観客をときに刺激し、ときに包み込む…。止まることを知らない俳優、菅田将暉の自己更新をスクリーンで目撃するだけで、本作は見る価値がある。

観るべき理由:3――生の実感を通して、共鳴し合う孤独な魂

もうひとりの主人公が、『息もできない』で監督デビューを果たした俳優ヤン・イクチュン演じる健二だ。こちらは新次と正反対で、引っ込み思案で赤面対人恐怖症。ボクサーの道を歩み出すが、当初は持ち前の優しさが災いし、相手を打ち負かすことを躊躇してしまう場面も。それでも抱える孤独、拳をぶつけ合うことで得る生の実感を通して、ライバルにして同志である新次と共鳴し合うさまは、安易な承認欲求に溺れる現代人には縁遠い、真の意味での濃密な“絆”をスクリーンに叩きつけている。

リングの上でしのぎを削るうち、二人の関係性はより複雑で混沌としていくが、ピュアな絆が血と汗、そして涙でにじんでいくのもまた青春映画の王道。ふと、荒野と化したネオ東京を舞台にした『AKIRA』の金田と鉄雄を思い出してしまい、不思議な気持ちにもなった。

(文・内田涼)


映画『あゝ、荒野』
10月7日(土)前篇、10月21日(土)後篇 全国順次公開

出演:菅田将暉、ヤン・イクチュン
木下あかり モロ師岡 高橋和也 今野杏南 山田裕貴
でんでん 木村多江 / ユースケ・サンタマリア
原作:「あゝ、荒野」寺山修司(角川文庫)
監督:岸 善幸
撮影:夏海光造
脚本:港岳彦 岸善幸
音楽:岩代太郎
制作・配給:スターサンズ
制作プロダクション:テレビマンユオン

フォトギャラリー

この記事を読んだ人におすすめの作品

アーティスト情報

菅田将暉

生年月日1993年2月21日(26歳)
星座うお座
出生地大阪府大阪市

菅田将暉の関連作品一覧

森山大道

生年月日1938年10月10日(81歳)
星座てんびん座
出生地大阪府池田市

森山大道の関連作品一覧

関連サイト

TSUTAYAランキング

おすすめ映画ガイド

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST