「前作への“ラブレター”です」―ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が語る『ブレードランナー 2049』への思い

 

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督

「この映画について聞かれたときは『前作への“ラブレター”です』とよく言っていますし、私はそうなることを夢見て作りました」。そう語るのは、10月27日に全国公開を迎える映画『ブレードランナー 2049』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督だ。前作『ブレードランナー』を手掛けたリドリー・スコットからメガホンを受け継ぎ、ライアン・ゴズリングやハリソン・フォードをはじめとする豪華キャストと続編に相応しい傑作を完成させたヴィルヌーヴ監督に、本作に込めた思いや、ライアンの役者としての魅力などについて話を聞いた。

【STORY】レプリカント(=人造人間)を取り締まるブレードランナー“K”(ライアン)は、一体の旧型レプリカントを“解任”したことをきっかけに、レプリカントと人間が危ういバランスで共存する社会を崩壊させる危険性、そしてレプリカントを独占的に製造するウォレス社の恐るべき陰謀を知ることになる。調査に乗り出した“K”は、世界に迫り来る危機の鍵を握るのが、元ブレードランナーで30年前に姿を消したままになっているリック・デッカード(ハリソン・フォード)であることを突き止めるのだが…。

ブレードランナー2049

ブレードランナー2049

―SF映画の大傑作『ブレードランナー』の続編ですが、オファーを受けた時はどんな心境でしたか?

様々な思いがありました。脚本を渡されたとき、私にこの作品を託してくれたということに、大きな驚きと感動を覚えましたよ。実際に読んでみると、脚本にものすごく圧倒され、魅了され、感動しました。私にとって非常に親しみのあるテーマが込められていたのです。無意識のうちに、そして奇妙なことに、オファーを受けたことが納得できてしまったのですが、「どうすればいいのだろう?」とパニックも起こりました。私の立場で『ブレードランナー』の続編を作るということが、横柄にも思えたのです。

―前作の大ファンだと伺いましたが、どんな思いを抱きながら監督を引き受けたのでしょう?

自分らしく自由に作る方法はないかと思いましたし、成功のチャンスは少ないものだと言い聞かせていました。名作の続編を作るのは、まずいアイディアだと思いますが、脚本がとても素晴らしく、名作の続編に関わらせてくれることに感動して、引き受けることにしたのです。

―実際に監督が手掛けられたことに、映画ファンは満足すると思います。

生意気に聞こえるかもしれませんが、やらないと言っても、他の監督を起用して絶対に作るだろうと思いました(笑)。「どうでもいいな」と思っている人に渡ったら、どうしようかと思いましたよ(笑)。私は絶対に良い作品を作るという約束はできないけれど、全力を尽くして前作に敬意を払った作品を撮ることは約束できると自分に言い聞かせたのです。というのも、前作は私にとって非常に重要な作品でしたからね。青春時代に凄まじい衝撃を受けた映画で、映画監督になることを夢見始めた時に見た作品でしたから、前作と私には親密な関係があるのです。とはいえ、重圧も感じましたよ(笑)。

ブレードランナー2049

ブレードランナー2049

―美しく退廃的でメランコリックな世界観、そして撮影方法からは、前作のスタイルを踏襲していることが伺えました(※撮影監督は前作ではジョーダン・クローネンウェスが、本作ではロジャー・ディーキンスが担当)。まるで前作への“ラブレター”のように感じられる作品ですね。

その通りです!『ブレードランナー』に対する“ラブレター”という表現は、私もよく使う言葉なのです。この映画について聞かれたときは「前作への“ラブレター”です」とよく言っていますし、私はそうなることを夢見て作りました。

―では、前作にはなかった、ヴィルヌーヴ監督ならではのこだわりは?

私の感性がこの作品に出ていると思います。他の監督になることはできませんし、景色や顔の映し方一つを取っても、私の撮影スタイルというものがあります。私には強みもあれば弱みもあって、時には他の人になりたいなとも思うのですが(笑)、結局のところ、自分は自分でしかありませんよね(笑)。本作では、前作で描かれた世界観から離れすぎないように、ということを時折意識していました。

―前作を踏まえて新たな物語を作る上で、特に難しいと感じた点はありましたか?

チャレンジはいくつかありましたが、最大のチャレンジは、リック・デッカード(ハリソン)を再登場させることでした。あのキャラクターを再び登場させることには、とても責任を感じたのです。ハリソン・フォードが演じてくれて感謝していますよ。

ブレードランナー2049

ブレードランナー2049

―監督の『複製された男』には本作に近いモチーフがあるように感じられたのですが、何か関連性はありますか?

『複製された男』は、『ブレードランナー』にとても影響を受けた作品でした。都市の風景それ自体がキャラクターになっていますし、あの物語は、都市が抱えるパラノイア、閉所恐怖症、郊外によるストレスに蝕まれた社会を描いたものです。実は、これは初めてマスコミに明かすのですが、『複製された男』における様々な考えを、本作で拡大しています。しかしながら、必ずしも意識的にそうしたわけではありませんでした。それは、自分の中の強い欲求から生まれた結果なのです。

―主人公の“K”を演じたライアンは、他の作品も含めて、肉体的にも精神的にも傷を抱えた男を繊細に演じるのが実に巧い役者さんだと思います。演出する中で、監督はライアンにどんな魅力を感じていきましたか?

まず、ライアンはとても正確な役者さんです。微妙な動きや表情で、たくさんの感情を表現することができます。カメラの前に存在するだけで、何かを伝えることができる俳優がいるのですが、彼はまさにそういう人ですね。何もしていないのに、感情を読み取ることができます。

―ライアンと同じようなタイプの役者さんと組んだことはありますか?

私が監督した『ボーダーライン』に出演してくれたベニチオ・デル・トロも同じタイプですね。彼にはすごく強い存在感があります。芝居は内側から出てくるものなのですが、力強く映りますね。本作でも、カリスマ性のある俳優が必要でした。皆さんはライアンが素晴らしい役者であることは知っていると思いますが、彼が優れたストーリーテラーでもあることは、あまり知らないと思います。

ブレードランナー2049

ブレードランナー2049

―優れたストーリーテラーであるライアンとは、具体的にどんなことを話し合いながら物語を作っていったのでしょう?

彼は物語を引き締めるという私の役目も大いに手伝ってくれていました。ストーリーを変更したわけではありませんでしたが、それぞれのシーンについて相談したのです。それぞれのセリフを通じて、どうすれば最もエレガントな方法で物事や考えを伝えることができるのかを、私は彼と何時間も何日もかけて作り上げました。創造面において、私たちは親密な関係になりましたから、自分が孤独だと感じたことはありませんでしたよ。これだけのスケール感を持つ映画は、お互いにとっても初めての経験でしたから、私たちはとても親密な友人になり、ともに絆を深めて、一緒にプレッシャーを乗り越えていったのです。

―劇中にはオリジナル版と同様、日本語のネオンサインが登場します。監督の作品ではこれまでにも日本との繋がりを感じさせるものが登場してきましたが、日本文化についてはどんな考えをお持ちですか?

美学的思想においては、日本文化にとてもインスピレーションを受けますね。日本のデザインの純粋さや、洗練されているところにです。(ボイスレコーダーを指しながら)コンセプトアーティストには、「こういうデザインがいいけれど、日本人らしく考えてほしいんだ」と言います。日本のデザインのエレガントさや、線の純粋性は素晴らしいですね。前作を見た時には、ハイブリッドと言うのか、様々な文化が融合しているところが魅力的だと思いました。リドリーは80年代に、将来的には日本や中国などのアジアが文化的なトップに立つと考えていました。そういうわけで、私の映画にも日本文化が登場するのです。日本に来ているからおべっかを言っているのではありませんよ(笑)。日本の影響は、事実としてあるのですから。

(取材・文・写真:岸豊)


【取材後記】前作の精神性を保ちつつ、新たな物語を描き出したヴィルヌーヴ監督の言葉からは、『ブレードランナー』の続編を作るという重責を乗り越えた監督としての達成感がひしひしと感じられた。そして、映画を作るという自らの仕事に対する愛着や情熱、異文化に対する深い好奇心も。監督として内定している、フランク・ハーバートによる小説『デューン』の映画化企画については「頭の中でいろいろと考えているところです」と語るに留まったが、本作で改めて映画作家としての類稀な手腕を発揮したヴィルヌーヴ監督のさらなる活躍には、一映画ファンとして、期待せずにいられない。


映画『ブレードランナー 2049』
2017年10月27日(金)全国ロードショー

製作総指揮:リドリー・スコット
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、ロビン・ライト、ジャレッド・レトー、アナ・デ・アルマス、シルヴィア・フークス、カーラ・ジュリ、マッケンジー・デイヴィス、バーカッド・アブディ、デイヴ・バウティスタ

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