峰なゆかがおすすめする自分が持つ価値観や偏見、大好きなものと向き合えた6本

その作品が持つイメージや本筋に捕らわれずに、独自の視点で自由に映画を鑑賞する峰さん。鋭い分析で作品に隠された新しい魅力を教えてくれた。

※ピックアップ作品は、2015年末に発行された『シネマハンドブック2016』掲載のものとなります。ご了承ください。


峰なゆかがおすすめする自分が持つ価値観や偏見、大好きなものと向き合えた6本

ブギーナイツ

70年代のLA、17歳でデビューし栄華を極めたポルノ男優の転落劇を中心に、ビデオの登場によるポルノ映画業界の衰退を描き出す群像劇。

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アダムス・ファミリー2

アダムス家の財産を狙う殺人鬼が乳母を装って家長ゴメズ(ジュリア)の兄に接近。勘の鋭い子どもたちはサマーキャンプに送られてしまう。

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ハロルドとモード 少年は虹を渡る

狂言自殺や葬式に参列するのを趣味とする“死”にとりつかれた19歳の少年が、79歳の老婦人と出会い、“生”を楽しむ彼女にひかれていく。

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おわらない物語 アビバの場合

子どもを望んで12歳で妊娠するも、母親に中絶させられて家出した少女を、年齢も人種も性別も異なる8人の役者が演じた実験的な冒険物語。

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ムーラン・ルージュ

19世紀のパリ。キャバレーのスターである高級娼婦と貧乏作家の許されぬ恋を描くミュージカル。ビートルズやマドンナらの名曲を使用。

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ザ・シンプソンズ MOVIE

TVアニメの放送20周年を記念して製作された劇場版。シンプソン一家が暮らす街の湖が汚染され、街がドームによって外部と隔絶されてしまう。

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ダメ人間の切なさは難病ものよりずっと泣ける
『アダムス・ファミリー2』はウェンズデーの恋を応援!

『ブギーナイツ』
『ブギーナイツ』

『ブギーナイツ』

普段はそんなに映画を観る方ではなくて、基本的にはお金のかかったハリウッド大作のような映画が好きなんです。だからサブカルっぽい映画ファンの人たちからはバカにされるんじゃないかと心配です(笑)。

今回選んだ中で一番好きなのは『ブギーナイツ』。小さい頃に実家のTVでなんとなく親と観た映画で、それこそ小学生の頃でした。モザイクとはいえ局部が出てきたりもして、大人向けの映画って普通にセックスシーンが出てくるじゃないですか。そういうときは家族もシーンとなって気まずくはあるんですが、私の親はシーンとなりながらもそのまま観させてくれていたんですね。でも当時はあまり内容をわかっていなくて、ただローラーガールがかわいいとか、ビジュアルが気に入った記憶だけが残っている。二十歳くらいで観直して「ああ、これポルノ業界の話だったんだ!」って初めてわかったんです。

私はプライドが高い人間が精神的に傷つけられる展開が特別に好きなんですよ。だから主人公の青年がポルノ男優として成功してイケイケになって、その後の転落劇がたまらない。歌手デビューを目指してヘンなデモテープを作って、男優仲間と二人で歌っているのが下手だったり(笑)。ドラッグを盗もうとしていろいろ最悪な状態になっていくのがいい。いや、プライドが高い人間が嫌いだとか、落ちぶれて、しめしめとかじゃないんです。むしろプライドが高い人間は大好き! ものすごく好きだから、この人が傷つくようなことがなければいいなとは思うんですよ。ただ胸が痛むと同時に興奮してしまうというか。「ああかわいそう、今この人をケアしてあげられるのは私だけ!」みたいに。私だけにこんな姿を見せてくれる、しめしめ、みたいな。やっぱり「しめしめ」になっちゃった(笑)。

ダメな人間がたくさん出てくるのもいいですよね。主人公を好きになる太ったゲイの助監督の誘い方が、口にボールペンを加えて流し目で見るみたいなあの感じも「見てらんないよ!」みたいな気持ちになれていいですね。カントリー音楽が好きな黒人も切ない。よくもこんなにいろんな種類の辛さを詰め込みましたよね。難病ものとかを観るよりずっと泣けますね。

『アダムス・ファミリー2』は前作も好きですけど、『〜2』を選んだのはサマーキャンプでのウェンズデーの恋物語がとにかくよかったからです。逆にメインの叔父さんの結婚話はどうでもいい(笑)。子どもの頃は普通に善良な小学生だったので悩んでいたんですよ。学校の「みんなで頑張ろう!」みたいなノリに完全についていけなくて。「ああいうのが受け入れられない私はゴミ人間では?」みたいな気持ちになっていたところに、『アダムス・ファミリー2』が初めて「サマーキャンプみたいなものを否定してもいいんだ」っていう価値観を教えてくれたんです。自分が初めて肯定された気がしましたね。ウェンズデーもムッチャかわいいし、彼女と恋に落ちるメガネの男の子も好みだし。小学生だった当時は、クラスで一番モテる男子以外は好きになっちゃいけないみたいな空気があって、ああいうメガネの子を好きだっていうと「キモい!」みたいに言われたりしたんですよね。すっかり二人の恋を応援したくなっちゃって、もう人生の中の思い出の一本です。

『アダムス・ファミリー2』

『アダムス・ファミリー2』

『ハロルド〜』はとにかく男の子がかっこいい!
だからおばあちゃんとの恋愛はショックすぎて泣けた

『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』

『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』

『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』

『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』

『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』は古い映画ですが、割と最近になってリバイバル上映されて劇場で観たんです。その頃、つまらない映画にばかり誘ってくる彼氏がいて、「またつまらなそうな古臭い映画に誘われたわ」と期待していなかったのにコレは本当に面白かった! 19歳の男の子と79歳のおばあちゃんのラブストーリーで、ただこのおばあちゃんがステキだとかはまったく思わないんです(笑)。気に入ったのはもう男の子のカッコよさですね。私、坊っちゃんに萌えるんです。裕福な家の子で、70年代のファッションもオシャレでカッコいいし、自殺のマネごとが趣味なところもすっごくかわいい! 私の周りの友達にも薦めてみたら、「この子色っぽい」って評判でした。それで、あまりのカッコよさ、センスのよさに夢中になって観ていたんですけど、仲よくなったおばあちゃんとだんだん恋愛みたいになっていって「あー! やめてー!」ってなりました。『アダムス・ファミリー』のウェンズデータイプの女の子と恋愛が始まったら私もハッピーだったんですけど、ヒッピー上がりのようなおばあちゃんのキャラクターが好みじゃなくて、例え彼女が若かったとしても私は絶対に仲よくなれないタイプだった。だからラブの展開はショックでしたね。そういう意味で後半は泣ける(笑)。でもおばあちゃんもたまにいいところもあるし、最後は「まあ許す」みたいな気持ちにはなりましたけど。あ、おばあちゃんのよかったところは、男の子に指輪をもらったときに、そのままポイッと海に捨てて「こうすればなくさないでしょう」というようなことを言うんですよね。私も何かいらない小物をもらったときにやろうと思いました。いらないものをくれる人、いるじゃないですか、UFOキャッチャーのぬいぐるみとか(笑)。

『おわらない物語 アビバの場合』は12歳の少女が妊娠したことからいろいろ大変な目に遭う話で、物語としては結構よくあるよねみたいな感じなんです。ただ章ごとに主人公を演じる女優さんが変わるシステムで、これがすごくいい。ほかの作品でも採用するといいんじゃないかってくらい。少女の性にまつわる話って、実際のところ女の子のビジュアルが大きく関わってくる。美少女なのか清楚なのか、それともブサイクなのかギャルなのか。外見的なことで周りの受け止め方が全然変わってくるんですよね。極端に単純なことを言えば、妊娠した子が派手な外見だったらバカな尻軽女だと想像するし、清楚な子だったらかわいそうな被害者だとか。そういう偏見ってすごく嫌ですが、自分自身も同じような偏見を持っていて。一つの役をいろんな女優さんが演じてくれることで、そういう先入観を持たずに、ある意味安心感を持って観られたんです。女の子が妊娠してどうしたっていう話の部分だけを純粋に観られるのは、この方法以外にやりようがないんじゃないかな。

「元が取れた!」と思わせてくれるゴージャスな映画が好き
『ザ・シンプソンズ〜』のバートは我が子のように愛おしい

『ムーラン・ルージュ』

『ムーラン・ルージュ』

『ムーラン・ルージュ』

『ムーラン・ルージュ』

『ムーラン・ルージュ』はとにかくお金のかかっているミュージカル映画。地味な邦画だとつい「150円分くらいしかエンターテインメント性がなかったのでは?」と浅ましい見方をしている人間なので、観ていて一番「元を取った!」みたいな気分になれました。多分、私は男だらけの群舞が好きなんですよ。ヒロインの踊り子がいて、パトロンの公爵が「今日こそ一緒に食事をするぞ!」という意気込みでいるのに彼女が現れなくて、クラブのオーナーと踊るシーンがあるんです。そこでウェイターみたいな男の人たちも一緒に踊るんですけど、男だらけの群舞って観られる機会がとっても少ないんです! もともと宝塚で男役の人たちが踊る姿が好きだったんですけど、正確に言うとあれは女性の群舞じゃないですか。もちろん男装しているタカラジェンヌも好きなんですけど、「ついにホンモノの男の群舞が見られた!」みたいな(笑)。

最後の1本は『ザ・シンプソンズ MOVIE』。以前から『ザ・シンプソンズ』のTVシリーズはDVD-BOXを買うくらいファンです。特に長男のバートが好きなんですけど、劇中でバートが全裸でスケボーで滑っていて、大事なところがうまい具合に障害物で隠れているんだけど、最後の最後にそこだけが見えちゃうってギャグがあるんですよ。それを観たときに泣いちゃった(笑)。もう我が子みたいな気分で「バート見えちゃってるよ! 大丈夫?」って泣いちゃったくらい好きですね。TVシリーズに比べると映画版はシュールな要素が少ないのは残念ですが、感動要素が入っていて初めての人でも観やすいはずです。実は結構前に日本語吹替のTV放送がなくなって、新シリーズのDVDも出なくなってしまってるんです。ぜひ“シンプソンズ好き”に増えてもらって、日本語吹替版で最新シリーズまで観られるようになってほしいです!

『ザ・シンプソンズ MOVIE』

『ザ・シンプソンズ MOVIE』


(C) 1997 New Line Productions, Inc. TM & Copyright ® 1993 by Paramount Pictures. All Rights Reserved. THE ADDAMS FAMILYTM is a trademark of Barbara Colyton. All Rights Reserved. TM, ® & Copyright (C) 2012 by Paramount Pictures. All Rights Reserved. (C) 1971 Paramount Pictures and Mildered Lewis and Colin Higgins Productions, Inc. All Rights Reserved. TM, ® & Copyright (C) 2012 by Paramount Pictures. All Rights Reserved. (C) 1997 New Line Productions, Inc. (C) Twentieth Century Fox Home Entertainment, Inc. All Rights Reserved. (C) 2008 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

(取材・文/村山 章  写真/江藤 海彦)

プロフィール

峰なゆか

セクシー女優を経て漫画家、ライターとして活躍。「週刊SPA!」で連載中の、男女や女性同士の微妙な駆け引きにおける“あるある”を取り上げた4コマ漫画『アラサーちゃん 無修正』シリーズ(扶桑社)が女性の共感を呼んだ。

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