『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ監督の最新作『gifted/ギフテッド』は心あたたまる映画であり、極上のあたたかさ【連載コラムVol.37】

映画ライター・新谷里映が心動かされた、本当に観て欲しい映画たちを連載コラムでお届け。

第37回目は『(500)日のサマー』『アメイジング・スパイダーマン』シリーズのマーク・ウェブ監督最新作『gifted/ギフテッド』。監督の原点であるヒューマンドラマに期待していたが、結果は期待以上。いろいろと考え方のヒントを与えてくれる映画でもあり、なにより観終わった後にやさしい気持ちになれる、そんな一本。


(C)2017 Twentieth Century Fox

(C)2017 Twentieth Century Fox

時季的なものなのか、自分自身の問題なのか、最近は観終わった後にあたたかい気持ちにさせてくれる映画を欲している。次から次へと人が殺されるような映画とか、直視できない事実を描いた映画とか、そういう映画からももちろん得るものはあって、興味深い作品はたくさんあるのだけれど、欲しているのはやはりあたたかい映画。

そのなかでイチオシなのは『gifted/ギフテッド』だ。『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ監督の最新作。しかも彼の原点だというヒューマンドラマであることにそそられたのだが、期待通り、いやそれ以上の感動があった。

物語の主人公たちは、フロリダに暮らす7歳の生意気ざかりのメアリー(マッケナ・グレイス)と、彼女の叔父でシングルのフランク(クリス・エヴァンス)、そして片目の優しい猫のフレッド。この2人と1匹の日常が描かれる。

(C)2017 Twentieth Century Fox

(C)2017 Twentieth Century Fox

タイトルにある「ギフテッド」とは、生まれつき平均より著しく高度な知的能力を持つ人やその能力のことで、メアリーは生まれついての数学のギフテッドを持つ天才だ。けれど、彼女の亡き母が幼い娘に望んだのは、「普通に暮らすこと」「子供らしい暮らし」であり、その意思を尊重して叔父のフランクは彼女を“普通”に育てていた。しかし、それは祖母の出現で大きく変わる……。

天才的な頭脳を持って生まれた人たちを題材にした映画はけっこうある。数学にまつわるメジャーな映画と言えば──

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』
『ビューティフル・マインド』
『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』
『ラスベガスをぶっつぶせ』
『博士と彼女のセオリー』
『奇蹟がくれた数式』
『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』

など……最近も、心を閉ざしてしまった少年が国際数学オリンピックを目指し人生における大切なことを学んでいく青春もの『僕と世界の方程式』や、NASAによる宇宙開発の偉業を支えた黒人の女性数学者たちの活躍を描いた『ドリーム』(公開中)、昼間は会計コンサルタントで夜は腕利きの殺し屋という2つの顔を持った天才的頭脳の男が主人公の『ザ・コンサルタント』などがあった。

(C)2017 Twentieth Century Fox

(C)2017 Twentieth Century Fox

『僕と世界の方程式』は10代の男の子が主人公だったが、ほかは大人の主人公たち(一部は大学生だが)。そこで際立ってくるのが『gifted/ギフテッド』のメアリーだ。7歳の天才。けれど、彼女がいかに天才なのかだけを描くのではなく、天才がゆえに降りかかる問題とどう向きあっていくのか。そこに深い人間ドラマがある。

この物語の場合は、子供らしく普通に育てたいと考えるフランクと、歴史に名を残す数学者になれる可能性を伸ばしたいと考える祖母のイブリン(リンゼイ・ダンカン)。そう、メアリーの母でありフランクの姉であるダイアンも数学の天才だったが、メアリーが生まれてすぐに亡くなってしまった。その背景にも悲しい出来事があるのだ。

特別であること、天才的であることは、普通の人からしたら羨ましいことだ。でも、逆の立場で考えると、望んでも普通に生きることが難しいという苦悩もあるわけで。この映画を通して改めて考えさせられたのは、そもそも普通とは何なのか? 何をもって家族というのか? 人の幸せは人それぞれであって、明確な答えはなくて、それもひとつの道じゃないか? 『gifted/ギフテッド』はそういう考え方のヒントを与えてくれる映画だ。

(C)2017 Twentieth Century Fox

(C)2017 Twentieth Century Fox

血の繋がっている家族であっても意見があわないことだってある、縁あって家族になった他人同士がかけがえのない家族になることもある。家族の在り方について考えさせられた映画のなかで特に気に入っているのが、『幸せのレシピ』『メイジーの瞳』『LION/ライオン 25年目のただいま』といった作品だが、それらを観たときと同じようなあたたかさを『gifted/ギフテッド』からも感じた。極上のあたたかさだ。

そして、ヒーロー役ではない、ごく普通の男性を演じたクリス・エヴァンスの繊細な演技、優しい眼差しに癒され、マッケナ・グレイスの大人顔負けの演技に魅了されるだろう。特に、彼女は演じることの才能=ギフテッドを持って生まれた小さな女優であり、いつの間にか、映画のなかのメアリーとマッケナ・グレイスが重なって見えた。

心あたたまる映画と出会えたことに「ありがとう」と言いたくなる、観終わった後にやさしい気持ちになれる映画だった。

(文・新谷里映)

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新谷里映

フリーライター、映画ライター、コラムニスト
新谷里映

情報誌、ファッション誌、音楽誌の編集部に所属、様々なジャンルの企画&編集に携わり、2005年3月、映画ライターとして独立。 独立後は、映画や音楽などのエンターテイメントを中心に雑誌やウェブにコラムやインタビューを寄稿中。

【tumblr】新谷里映/Rie Shintani 

映画『gifted/ギフテッド』
公開中

監督:マーク・ウェブ『(500)日のサマー』
キャスト:クリス・エヴァンス、マッケナ・グレイス、ジェニー・スレイト、リンゼイ・ダンカン、オクタヴィア・スペンサー
全米公開:4月7日
原題:gifted
配給:20世紀フォックス映画

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アーティスト情報

クリス・エヴァンス

生年月日1981年6月13日(37歳)
星座ふたご座
出生地米・マサチューセッツ・サドベリー

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マーク・ウェブ

生年月日1974年8月31日(44歳)
星座おとめ座
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