【インタビュー】ケネス・ブラナー「読んだ人でも感情的にパンチを食らう映画」『オリエント急行殺人事件』

ケネス・ブラナー

ケネス・ブラナー

原作アガサ・クリスティーの傑作ミステリーの実写映画化『オリエント急行殺人事件』が12月8日(金)より全国ロードショー。ジョニー・デップジュディ・デンチペネロペ・クルスほか超豪華キャストの競演でも大きな注目を集めるなか、このたび本作で監督兼主演を務めたエルキュール・ポアロ役のケネス・ブラナーにインタビューを敢行した!

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トルコ発フランス行きの寝台列車オリエント急行で、尊大な富豪ラチェットが刺殺された。車両には、教授、執事、伯爵、伯爵夫人、秘書、家庭教師、宣教師、未亡人、セールスマン、メイド、医者、公爵夫人、車掌と共通点といえば目的地のみというさまざまな境遇の13名が居合わせた。そして、もう一人乗り合わせた“世界一の探偵”エルキュール・ポアロは、列車がユーゴスラビアの雪だまりで立ち往生する中、列車という密室で再び殺人者が人を襲う前に、事件を解決しなければならない。

「読んだ、読んだ」と人は言うけれど…

シェイクスピア演劇でその名を馳せ、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』ギルデロイ・ロックハート役や近年ではC.ノーラン監督ダンケルクなど話題作への出演で大きな注目を集めるケネス・ブラナー。また『ヘンリー5世』『シンデレラ』『マイティ・ソー』など映画監督としも手腕を発揮してきた。そんなブラナーは本作について「ストーリーが感動的だったからやろうと決めていたんだ」ときっかけを語った。

「この前、舞台でシェイクスピアの『冬物語』を上演したんだけれど、この作品も一つの事件から大きな事件が起こっていくのが醍醐味なんだ。今の自分にとって“一つの行動から大きな混乱が起こる”っていうのは共通したテーマで、人が失った時の悲しみで何が引き起こされるのかという事も語りたかった。もちろん知的な謎解きもひとつのテーマだけれど、そこにスペクタクルな要素や、カラフルなキャラクターを集めることでお客さんをサプライズさせたかったんだ」

オリエント急行殺人事件

(C)2017Twentieth Century Fox Film Corporation

ブラナーも魅了された不朽の名作ミステリー「オリエント急行殺人事件」。初版の発表からすでに80年以上の歳月を経てもなお、ミステリーファンに愛されつづけ、1974年にはアルバート・フィニー主演で映画化もされている。そんな大ヒットセラーのリメイクに「プレッシャーはありましたか?」と質問すると「むしろエキサイティングだったよ」と答えてくれた。

「もちろんチャレンジな事ではあるけど、私にとって心躍ることだったんだ。難しいという事以上に、エキサイティングな試みだった。また“Murder on the Orient Express”というタイトル自体グラマラス(魅力的)でしょ? 乗り込んだ夜行列車でスペクタクルな事件が起こる…、それを65ミリフィルムカメラで撮影できるのは私にとってはやりがいのある仕事に思えたんだ」

自身、ミステリーファンであり列車好きというブラナーにとって、「オリエント急行」を撮影できる事に、ワクワク感もひとしおだった様子だ。

オリエント急行殺人事件

(C)2017Twentieth Century Fox Film Corporation

「数多くの人が『読んだ、読んだ』というけど、全員が正直だとは思えない…読んでなくても『読んだ』っていうようにね(笑)。ちゃんと描くことで“感情的にパンチを食らう”ような映画にできるという自信があったんだ。そしてこの映画のラストシーンでは原作に描かれないシーンがあるんだけど、そいういうところでお客さんを映画に誘い、驚きを与えるチャンスがあると思っていたんだ」

「オリエント急行殺人事件」に関しては、ミステリーのオチである犯人やトリックを知っている人も少なくはない。しかし、その裏に潜む繊細な心理描写や人間ドラマを抽出しスクリーンに焼き付けた本作では、洗練された緊張感と不穏さ、そしてエレガントな空気感が車内に満ちている。

製作期間9か月!口髭に込められた想いとは…

原作のエッセンスを取り入れながら、全く新しい「オリエント急行殺人事件」を創り上げていったブラナー。それは彼が演じたポアロにも通じる部分がある。そのひとつがトレードマークの口髭だ。

オリエント急行殺人事件

(C)2017Twentieth Century Fox Film Corporation

「とにかく彼のシンボルなんだ。原作者アガサ・クリスティーのお孫さんにも、まず初めに聞かれたのが『髭はどうするんですか?』ということだった。それくらいアガサ・クリスティー家にとっても口髭はシンボリックなもの。ポアロはひとつとして人とは同じではありたくないキャラクターだったからこそ口髭を蓄えたんだ」

実は撮影にあたりエルキュール・ポアロが登場する小説すべて(長編33作、短編50作)を読破してその役作りに挑んだブラナー。ドラスティックな役作りがあったからこそ、口髭の真意を理解したこだわりのあるビジュアルを創り上げていった。

「なかでも19世紀後半の白黒のペンシル画に映し出されたポーランド騎士の軍人の絵を参考にして、劇中のハンドルみたいにな形になったんだよ。あとはバランスも意識して、いろんなアングルからどう映るかを研究したんだ…ここ(あご)にあるのは、僕は唇が薄いからビジュアルのバランス上で付け加えたんだ。本当は全部自分でも生やそうとしたけど全然生えなくてね…諦めちゃったよ(笑)」

オリエント急行殺人事件

(C)2017Twentieth Century Fox Film Corporation

スタイリッシュなビジュアルとキレのあるアクションまでこなす新生ポアロ。しかし、その新しさは外見だけではない。

「この事件で、ポアロは重荷を背負っているんだ。人間性の面で彼ら(被疑者)の苦しみはよくわかっているけれども、彼の脳と道徳心は決して復讐が正義だとは思っていない。被疑者には『癒されるべきだ』という事を語り一つの解決を与えているけれども、法律には従っていないという事に対して、自分自身に責任を持たなければならない。そういう矛盾を抱え、葛藤する人間臭い面を描きたかったんだ」

“灰色の脳細胞を持つ”と形容されるように、頭脳明晰で難事件を難なく解決する名探偵としてのイメージが強いポアロだが、本作のクライマックス、自問自答を繰り返し煩悶する姿はこれまでにない名探偵の“生身”な部分が露わになっている。

超豪華キャストの中心にいた女優

オリエント急行殺人事件

(C)2017Twentieth Century Fox Film Corporation

またポアロを囲む、怪しげな乗客たちにも目が離せない。富豪美術商にして被害者となるエドワード・ラチェットにはジョニー・デップ、ロシアの貴族・ドラゴミロフ夫人にはジュディ・デンチ、宣教師ピラール・エストラバスにペネロペ・クルス、そして家庭教師メアリ・デブナムには注目若手女優デイジー・リドリーと、大作映画で主演を務めるクラスの超豪華俳優陣が集結している。

そのキャスティングについて、ブラナーは「例え出番が少なくても、存在感がなければならない。それはすごいスキルをもった俳優たちじゃないといけなかったんだ」と語る。中でも中心的な存在となっていたのは…?

「ジュディ・デンチとは前にも仕事をしていたけど、ジュディが(出演について)『YES』と言うとすごいインパクトがあるんだ。ジュディが関わっていると聞くだけで、その映画はすごくちゃんとしたものでかつ面白いというイメージがつく。ジョニー・デップもペネロペもみんながジュディを尊敬していて、デイジーら若手キャストは話せるだけでも嬉しそうだったよ。キャストのなかでも“母親”みたいな存在で、ジュディの撮影の時には、事前にみんなが現場に入って彼女を待たせたくなかったんだ。本当に手で触れるくらいの“敬意”を感じたよ(笑)」

オリエント急行殺人事件

(C)2017Twentieth Century Fox Film Corporation

「007」シリーズの“M”役で日本でも馴染の深い往年の名女優ジュディ・デンチ。ほか大物キャストからも一目置かれる存在であったことを明かす一方で、キャストたち雰囲気は往々にして和やかだったそうだ。

「でも、キャストがみんなすごく気が合った現場だった。仕事がないときでも一緒にいたり、珍しいことだけどロンドンプレミアには全員が参加した。みんな再会したかった。それくらい仲良かったんだ」

オリエント急行殺人事件

(C)2017Twentieth Century Fox Film Corporation

続編の製作も決定!次回作のヒントは…?

すでに、第2弾の製作決定も発表されているブラナーの「エルキュール・ポアロ」! 本作のラストシーンでは、「ナイルに死す」を予感させるラストシーンが描かれるのだが…。最後に次回作についてちょっぴりヒントを語ってくれた。

「脚本はまだ終わってないけど、また監督兼主演でやりたいね。ナイルに死すは『オリエント急行殺人事件』ほどメジャーではないから変える余地がある。なので、もっと新しい要素を放り込みたいと思っているんだ。次は、恋人も出るだろうし、口髭の面白いエピソードも出てくる予定だよ(笑)」

ケネス・ブラナー

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(取材・文・写真/nony)


映画『オリエント急行殺人事件』
12月8日全国ロードショー

監督:ケネス・ブラナー
出演:ケネス・ブラナー、ジョニー・デップ、ミシェル・ファイファー、デイジー・リドリー、ジュディ・デンチ、ペネロペ・クルス
配給:20世紀フォックス映画

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アーティスト情報

ケネス・ブラナー

生年月日1960年12月10日(58歳)
星座いて座
出生地英・北アイルランド・ベルファスト

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