「人間は、絶滅しないために、恋をしている」―『勝手にふるえてろ』松岡茉優×渡辺大知×北村匠海インタビュー

北村匠海、松岡茉優、渡辺大知

北村匠海、松岡茉優、渡辺大知(クリックでフォトギャラリーへ)

松岡茉優、1995年生まれ。渡辺大知、1990年生まれ。北村匠海、1997年生まれ。

年齢差はある。だけど、この3人はまるで同級生のようだ。

綿矢りさの同名小説を映画化した『勝手にふるえてろ』は、24歳OLのヨシカが、10年恋しつづけている理想の王子様「イチ」への想いと、現実にできたばかりの恋人「ニ」との日々との間で葛藤する物語。

脳とハートで自問自答を繰り返すヒロインと、対照的な男性ふたり。素っ気なくもナイーヴな「イチ」と、一途で空気を読まない「ニ」と。

3人のキャラクターは全員違っているようで、どこかで「精神の連帯」を育んでいるように感じられる。

それは、この3人が演じているからなのだと感じることができる。

(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

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渡辺大知:こうやってがっつり映画の撮影にかかわれるのが久しぶりだったんですけど。自分はカメラが回ってないときもなんとなく「ニ」の気分でいたような気がするんですよ。そういうときに松岡さんは僕に対してヨシカでいてくれたような感じがありまして。

松岡茉優:ふふふ(笑)

渡辺:それにすごく救われたというか。「この人、何考えてるかわからない、だから好きだ」という(「ニ」の)台詞もあるんですけど、まさにそういう感じで。松岡さんのことをちょっと知りたいと思わせてくれるような。そういう魅力のある人だなあと。

(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

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松岡:ほんとに渡辺さんって掴みどころのない人で。

渡辺:それ、松岡さんでしょ。人のこと言えないよ(笑)

松岡:違うよ、違うよ。私、現場では、渡辺大知さんという人はほんとうにこういう人なんだなと思ってたんですよ。「ニ」っぽい人なんだなって。でも撮影が終わったあとごはんをご一緒する機会がありまして。そしたら、つるつるの渡辺大知さんがいて。卵みたいな。現場とはなにか違う感覚といいますか。つるつるの渡辺さんはすごくシャイだし、言葉を紡いで紡いで話してくれて。「ニ」って結構ベチャベチャって喋るじゃないですか。でも渡辺さんは一個一個大事にお話しされてました。

渡辺:(苦笑)

北村匠海:(それ)大事だと思う。

(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

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松岡:大事よね。でも、こうやって(インタビューなどで)話すときは「ニ」みたいに明るく話してくれるし。現場でもスタッフさんとかの空気を明るくしてくれたのは大知くんだし。ほんとはどういう人なの? と思ってる。北村くんのことは中学生の頃から知ってるからね。なんとなくわかるけど。

北村:(自分が)中学1年生のときからだから「姉貴」感はある。

松岡:やめてよ(笑)

北村:実質4回目の共演。でも(松岡が)初主演って最初、信じられなくて。絶対主演やってた気がする。他の作品での存在感がやっぱあるので。映像を見たときに“松岡茉優”という女優の存在感がすっごく大きいイメージがあったから、あ、初(主演)なんだ、という驚きからまず入って。

松岡:北村くんは当時からほんとに魅力的な俳優さんで、真っ直ぐで、曲がったことしなくて。お芝居のこと真摯に捉えていて。ひとりひとりに隔てなく話す方でした。ほんとに、こんなに真っ直ぐ成長する青年がいるんだなあと。すごく、お母さんがうらやましい。

北村:(笑)。お姉さんどころか、お母さんだ。僕からしたら、映画で一緒になれて。ふたりのシーンって、共演4回目で初めて。すごく新鮮。本当に共演できて嬉しかった。

(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

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松岡:(渡辺と北村は)ふたりともバンドマンじゃないですか(渡辺は黒猫チェルシーのボーカル。北村はDISH//のボーカル&ギター)。それもこの映画にはすごくいいエッセンスになっていて。俳優だけじゃないという余裕さが、私の余裕のなさに上手くハマったんじゃないかなって個人的には思ってて。

渡辺:余裕なかったんですか?

松岡:なかった……

北村:(撮影)後半は大変だったかもね。大知くんと共演するのはすごく楽しみで。音楽とお芝居(両方を)やってる方と共演するのが。昨年その道の頂点の寺尾聰さんと共演させていただいたのですが、とても勉強になることばかりでした。

松岡:♪曇りガラスの……

(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

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北村:バンドやってる人は初めて。しかも(同じ)ボーカル。(共演日は)1日だけでしたけど。でも、あの時間だけですら感じる「同じ匂い」がありました。

松岡:あるんだ。

北村:僕はすごく感じて。

松岡:(渡辺に)あった?

渡辺:確かに。醸してる(現場での)居方、たたずまいがなんか違う感じがしましたね。お芝居だけされている方とは。

北村:その後、対談させていただいたとき、価値観が一緒だなと。僕の場合は、たとえばお芝居だけやっていたら、何かのバランスが崩れてしまう。音楽だけやってたら、きっと思いつめていたと思う。(やることが)ふたつあるから、ふたつ生きれてて。

そんな3人だからこそ、ヨシカも「イチ」も「ニ」も、血の通った人物になった。

(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

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松岡:ヨシカという人は普段は周りから頼られるぐらいちゃんとした人で。だから人と話せないわけでは全然なくて。ちゃんと(環境に)擬態して過ごしていて。それって嘘ではなくて。ヨシカにとって「戦闘服」なだけで。武装しているだけで嘘ではない。考えてみるとヨシカって嘘つかないんですよ。嬉しいときは「嬉しい」って言うし。悲しいときは「悲しい!」って叫ぶし。だから、お芝居の中で誰かと話すときも嘘はつかないようにしたかった。相手に話を合わせているときも、「話合わせてるんです、自分」を出そうと思って。上手く合わせるのではなくて「合わせてあげてるんですよ」という感じでどのシーンでもヨシカの中で嘘だと思うことは絶対にしないようにしてました。

確かにヨシカはカモフラージュしないキャラクターだ。

松岡:なあなあにしない。自分の気持ちはちゃんとその場で吐く。それは意識的にやってました。肉体的には何も出してないけど、ヨシカのすべてがむき出しになって描かれていると思います。

(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

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渡辺:最初に原作を読んだとき、自分はヨシカ側の人間だなと。もしヨシカに逢ったなら、もっとその話聴かせて、となる。(逆に)「ニ」はなんて空気の読めないヤツだろうと思いながら読んでたんですけど。だから監督に初めて逢ったときも、「僕はあまりよくわかってないところがある」と言ったら、「そんなことは考えなくていい。実は『ニ』もヨシカ側の人間だと私は思ってる。だから渡辺さんをキャステングした」と言ってくださいまして。つまり「(自分と)違う人を演じようとしなくていい」と。それで自分の中で吹っ切れて。脚本を読み直して、自分の中にあるマイペースさだとか、楽観的な部分とか、鬱陶しい部分とかを全面に出して。でも『ニ』にも、カッコつけて、ほんとに思ってることを言わない部分があって、カッコつけるがゆえにから回ってる部分があるけど、ほんとうは考えてるヤツなんだと思ったんです。ヨシカとの出逢いと関わりの中で、徐々に殻が破けていったらなと。それが映画に映ればなと。

北村:僕はヨシカという人物に対して理解が、台本読んだ段階ではまったくできてなくて。

松岡:出た。一刀両断。

(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

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北村:男ですからね。大知くんはヨシカに共感した男子だと思うんですけど。僕は「スゴいな、女子は」と謎めいてくるぐらい。唯一共感できたのがイチで。誰しもが抱く感情だなあという印象がすごくありました。イチが抱いてる周りへの負の感情は、すごく誇張されて描かれているかもしれないけど、僕はすごく「人間だなあ」と思った。イチという人物が理解できたから。イチでいるということに関しては、ヨシカを理解できなくて正解かもしれないと。たとえば中学生のときの自分にイチは似てるんですよね。僕はイチが抱いている「当たり前にマイナスな感情」に共感を得た。最初はヨシカを理解しようと思ったんですけど、あ、これは違うと思って、そのまま(違いを)突き通してやったという感じですね。

ヨシカも、イチも、ニも、どこかがつながっている。たとえば、他人にどう思われるかということを過敏におそれてはいない。

松岡:意外と3人は好きなように生きている。ただ、進んでる場所が違うから息苦しそうなだけで。器用じゃないから。

北村:ちゃんと真っ直ぐな道なんですけど、決して綺麗ではない。そんな道をかき分けながら生きてる感じはする。

松岡:そこは綿矢先生の世界観なのかなあと思いますね。綿矢先生が生み出したキャラクターだからこそ、真っ直ぐ。というか。綿矢先生の小説で、ひん曲がってるな、という人はあんまり出てこないなと。捻くれてて、なんでそう思うんだろう、というときもあるけど、それぞれ真っ直ぐやってるから乱反射してるっていうか。それは綿矢先生が目指したからこその「真っ直ぐ具合」なのかなと。でも、たぶん、真っ直ぐ進んでいるようで、後ろに行ったりしてるんでしょうね。

(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

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恋は一人相撲な部分がかなりある。逆に言えば、一人相撲が現実の相手を前にいかに通用しないかを知る過程こそが恋でもある。人は、ひとりだから恋をする。だが、ひとりじゃ恋はできない。

映画『勝手にふるえてろ』は、そんなふうに観る者ひとりひとりの恋の捉え方を照射する。

松岡:やっぱり脳内で恋愛するには限界があったんだと思います。自分から出てくる栄養素しかないから。誰かからもらったり、誰かに当てて返ってきたもので、新しくなる。無限っていうのは相手がいるからあることで。一人だと「ノッキング」が起こる、というのは感じましたね。もちろん、頭の中に大好きな人がいつまでもいていいと思う。30歳になっても40歳になっても。私の中にも好きなアニメキャラクターはまだいるし。でも、誰かと――それが恋愛じゃなくても、友達でも家族でも他人でもいいんですけど、会って話したり、意見を言わないと、限界が来るんだと、この作品で思いましたね。

(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会

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渡辺:映画の最後とか、だからこそ、だよね。腹わって。カッコつけたりとか、そういうの、取っ払って話すっていうのが大事なんだろうなって。

松岡:きっと、そのとき、お互い初めて見る自分に出逢う。

渡辺:松岡さんがいま言ったことがほんとにそうだなって思うんですけど。まさに相手がいるから、自分も鏡のように見えるというか。やっぱり人は一人じゃ生きられない生きものだなと思いました。恋愛っていうのはそれを教えてくれるものだなと。

北村:(人間は)言ってみれば個体で、世界的に見ても、一人ひとりが「絶滅危惧種」なわけで。結局、一人でも生きていける人が、鏡のように自分と向き合う時間があって初めて、絶滅しそうだったものが、円で囲まれた。僕は、この映画を観て、それがわかった。絶滅しないよ、と思った。「この恋、絶滅すべきでしょうか?」が映画のキャイチコピーですけど、いつ絶滅してもおかしくなかった登場人物が、最後まで観たとき、きっと僕の中ではなくならない。そういう感情に至った。いろんなことが裏表になりながら進む中で、最後の最後に表に返った。恋愛って、どこか独りよがりになりがちなものというか。この人と私は「こうなっていきたい」という感情も独りよがりなものではあると思うんですが、(人間って)集合体なんだな、恋愛ってそういうもんなんだなと、漠然と考えることができました。この恋、絶滅すべきでしょうか? 絶滅すべきではないと思います! そう言える自分がいま、います。

人間は、絶滅しないために、恋をしている。

取材・文:相田冬二
松岡茉優 メイク:宮本愛 スタイリスト:池田未来
カーディガン:13,000円/CIAO PANIC COUNTRY MALL
ニット:43,000円:LIAH
ネックレス:10,800円/MAISON VIOLET
靴:57,000円:LOEFFLER RANDALL
(すべてCIAO PANIC COUNTRY MALL)

CIAO PANIC COUNTRY MALL(03-3406-1104)

北村匠海 メイク:佐鳥麻子 スタイリスト:鴇田晋哉
渡辺大知 メイク:AMANO スタイリスト:鴇田晋哉


映画『勝手にふるえてろ』
12月23日(祝・土)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋ほか全国公開

原作:綿矢りさ著『勝手にふるえてろ』文春文庫刊
監督・脚本:大九明子
出演:松岡茉優 渡辺大知(黒猫チェルシー) 石橋杏奈 北村匠海(DISH//)
趣里 前野朋哉 池田鉄洋 稲川実代子 栁俊太郎 山野海
梶原ひかり 金井美樹 小林龍二(DISH//) 増田朋弥 後藤ユウミ 原扶貴子 仲田育史 松島庄汰 古舘寛治 片桐はいり
主題歌:黒猫チェルシー「ベイビーユー」(Sony Music Records)
配給:ファントム・フィルム

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綿矢りさ

生年月日1984年2月1日(35歳)
星座みずがめ座
出生地京都府京都市

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