恋をすると人はダサくなる!?―映画『伊藤くん A to E』岡田将生×中村倫也インタビュー

岡田将生と中村倫也

岡田将生と中村倫也(クリックでフォトギャラリーへ)

『伊藤くん A to E』この映画を観た後、多くの人が、モンスター級の【痛男】伊藤誠二郎について、崖っぷちアラサーの【毒女】矢崎莉桜について、タイトルにある【A~E】の女性キャラクターについて語り合いたいと思うだろう。主演で痛男を演じた岡田将生と売れっ子脚本家のクズケンこと久住健太郎を演じた中村倫也が、男子目線で語り合って見えてきたものとは──。

ドラマ「太陽と海の教室」から実に9年ぶりの共演となる岡田と中村。知っている仲だからこそ思いきり演じることができたそう。そんな2人が演じる伊藤とクズケン、そして【D】の女・実希(夏帆)は同じ大学のサークル仲間でもあることから、廣木隆一監督は「この3人の青春の終わらせ方もテーマのひとつ」と語っている。すべての中心にいる伊藤というキャラクター、岡田と中村にはどんなふうに映ったのだろうか。

(C)「伊藤くん A to E」製作委員会

【D】ヘビー級処女・実希/(C)「伊藤くん A to E」製作委員会

中村:僕自身もドラマ版で莉桜(木村文乃)の妄想のなかの伊藤を演じていますが、伊藤はプライドが高く、コンプレックスの塊のような、ものすごく周りの人をかき乱すキャラクター、こじらせ男子ですよね。それを映画版では、真打ち登場! (岡田)将生が演じる──ものすごく楽しみでした。伊藤役がぴったりだというと営業妨害になっちゃうかもしれないけれど(笑)、本当の意味で将生が嫌われていたり痛男だったりすると成り立たない。容姿端麗で品もある、みんなに愛されている将生が演じるからこそ生まれるものがあると思うんです。だって、どうしたって岡田将生という俳優は素敵ですから。

岡田:倫也さんの言葉──将生が演じるから伊藤は愛されるキャラクターなんだ、という言葉に救われました。僕自身、演じながら伊藤が愛おしくなりましたし、彼の考え方を肯定できるようにもなったけれど、どうしたって共感はできないですから。倫也さんの演じたクズケンは、実はこの作品のなかで一番まともなキャラクターですよね。夏帆ちゃんの演じる実希とのホテルのシーンとか、クズケンの立場としてはものすごく切なくて……。僕(伊藤)はセリフを吐いてバンッとホテルの部屋を出ましたが、あのシーンは長回しだったので、その後の倫也さんと夏帆ちゃんのお芝居をモニターで見ていました。クズケンの後ろ姿が切なすぎました。

(C)「伊藤くん A to E」製作委員会

(C)「伊藤くん A to E」製作委員会

中村:ハリケーン伊藤だったね(笑)。あのホテルの窓辺に伊藤と実希とクズケンの3人が並んで座っているシーンについて廣木監督が「同じ大学繋がりの3人、彼らの青春の終焉みたいにしたい」と言っていたのが印象的で、風情を感じました。この作品は、伊藤に出会った女性たちが断捨離じゃないけれど、伊藤を通過することで前に進んでいく、みんな何かから卒業する物語。クズケンにもそれがあるんだと監督のそのひと言で感じました。それにしても、かわいい実希を挟んで、派手なシャツの伊藤とバスローブに赤いパンツのクズケンの画は、何ともシュールで面白かったよね(笑)。

伊藤と出会うA~Eの女性キャラクターたち──【A】都合のいい女・智美、【B】自己防衛女・修子、【C】愛されたい女・聡子、【D】ヘビー級処女・実希、【E】崖っぷち脚本家・莉桜のなかで特に印象深く残っているのはどの女性なのだろうか。W主演となる莉桜役の木村文乃をはじめ、佐々木希志田未来池田エライザ、夏帆、そうそうたる女優たちが伊藤というキャラクターに振り回される。

(C)「伊藤くん A to E」製作委員会

【C】愛されたい女・聡子/(C)「伊藤くん A to E」製作委員会

岡田:Dの女・実希とCの女・聡子は親友同士ですが、実希が伊藤に3年間片想いをしているのを知っていて、聡子は伊藤を寝取るって、女性の心理は分からないなって思いました。完成した映画を観て、改めて伊藤は聡子に対してものすごく無神経なことを言っていたんだなと……。撮影現場では見えなかった聡子の表情がとても印象的でした。

中村:クズケンは莉桜と実希とのシーンだけだったので、他の女性たちについては完成した映画で観ましたが、Aの女・智美がラーメン屋でレンゲのなかに小ラーメンを作っているのは腹が立ちましたね(笑)。第三者的な立場としては、ラーメンはすすれ! と思うけれど、恋をすると人はダサくなる、だから面白いのかもしれないね。

(C)「伊藤くん A to E」製作委員会

【A】都合のいい女・智美/(C)「伊藤くん A to E」製作委員会

岡田:僕個人としてはレンゲの小ラーメン可愛いなって思いましたけど(笑)。恋をするとダサくなるというのは確かにそうですよね。伊藤と実希のホテルのシーンで、実希がバーンとベッドに横になるシーンがありますが、ベッドに仰向けになっている実希を前に伊藤が悩んでいる、そのときに夏帆ちゃんと目があって思わず笑ってしまったんですよね。でも、そのシーンの廣木監督の「もっと間を取れ」をはじめ、監督のこだわりは本当に面白かったです。

中村:面白いよね。伊藤と聡子のシーンはバスルームなんだ! って、ちょっと驚いた。

岡田:もともとはベッドでしたが、歯みがきをしながらそのままバスルームで──という流れになった。現場で変更になったシーンですね。

(C)「伊藤くん A to E」製作委員会

【B】自己防衛女・修子/(C)「伊藤くん A to E」製作委員会

物語の後半、伊藤が何者であるのかが明らかになり、伊藤と莉桜、クズケンと莉桜がそれぞれ互いの本音をぶつけ合うシーンも見どころのひとつだ。撮影前に俳優たちが「楽しみにしている」と語っていたシーンでもある。特に莉桜と伊藤の対決シーンは、長回しで10分! という廣木監督節炸裂のシーンとなっている。

岡田:莉桜と伊藤の最後のシーンは、莉桜の表情が変わるように、変わってくれるように心がけて演じていました。莉桜が変わることが、伊藤を演じた僕にとっての最後にできることというか……僕自身、莉桜に幸せになってほしいと思っていましたから。撮影後に原作の柚木先生とお話する機会があって、その時に先生が、おっしゃっていたのは「伊藤は合わせ鏡のような存在、伊藤に会うことで自分のダメなところが見えてくる」。なるほど! と思いました。伊藤は人のダメなところを見抜く目を持っている、それしか持っていないとも言えますね(笑)。

(C)「伊藤くん A to E」製作委員会

(C)「伊藤くん A to E」製作委員会

中村:僕も莉桜に幸せになって欲しいと思って演じていました。莉桜とクズケンとの会話で、良いセリフだなと思ったのが、クズケンのセリフ──「俺は、莉桜さんを仲間だと思っていた。自分をさらけ出して~」と続くセリフは、表現の世界にいる誰もが思っていることなので、僕自身にも響きました。周りの評価とどう向き合えるか、逃げずに頑張れるかが大事だけれど、逃げ腰になってしまう気持ちもわかる。クズケンは莉桜のことを先輩として大好きだし尊敬もしている。だからスランプになって言い訳ばかりしている彼女がもどかしくもあったんですよね。

伊藤という痛男に振り回される女たちの恋愛ミステリーの面白さはもちろん、伊藤が最後に語る理論をどう受け取るか、実は考えさせられる深いテーマがある。岡田が「伊藤は確かに【痛男】だけれど、【A~E】すべての女性も【痛女】、全員ダメ(=愛すべきキャラクター)」だと語るように、共感したり、肯定したり、あるいは否定したり、男と女について語り合える映画であることは間違いないだろう。

(C)「伊藤くん A to E」製作委員会

(C)「伊藤くん A to E」製作委員会

最後に自分が痛男だと思うことはあるのか、2人に投げかけてみた。

中村:ほんのちょっとのことで、この人は俺のことが好きなのか? って勘違いをしてしまうことですね。大概、勘違いですけど(笑)。

岡田:たとえば、捨てるものと残すものがあったとして、残さなくちゃならないものを捨てちゃっていた……とかですね。

中村:自らダメ−ジを負う方をチョイスしちゃんうんだね、将生は(笑)。

(取材・文:新谷里映 撮影:nony)


映画『伊藤くん A to E』
公開中

出演:岡田将生 木村文乃/佐々木希 志田未来 池田エライザ 夏帆/中村倫也 田中 圭
監督:廣木隆一
原作:柚木麻子「伊藤くん A to E」(幻冬舎文庫)
制作プロダクション:ドリマックス・テレビジョン
配給:ショウゲート

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