「芝居の基本としての足固めになったのが加賀刑事」―映画『祈りの幕が下りる時』阿部寛インタビュー

阿部寛

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阿部寛が刑事、加賀恭一郎を演じる東野圭吾原作の「新参者」シリーズ。連続ドラマスペシャルドラマ映画と続いてきたが『祈りの幕が下りる時』で幕が下りる時が来た。本作はフィナーレにふさわしい傑作に仕上がった。

「3年前にいち早く原作を読んだ時、この作品を映像化するには自分の作ってきた加賀刑事像との矛盾を感じて、正直すぐには返事が出来なかったんです。でもこの3年でいろんな作品に携わり、その中で福澤監督と出会い、もしかしたら福澤さんなら「祈りの幕が下りる時」の原作と僕の中の加賀の溝を新しい視点で演出し、埋めてくれると思ったので、監督に無理に僕からお願いしました。福澤監督の演出は、迷いがなく、強い牽引力で引っ張られるし、スタッフやエキストラの人々に至るまですべてが福澤さんの演出に応えようと楽しんでいる。そのおかげで役者にはいつも最高の舞台が用意されるし、監督が現場のすべてを総演出してくれる。昔ある俳優の大先輩が「役者というのはロケットと一緒で、用意スタートと声がかかった瞬間に貯めたものを爆発させるんだ」と教えてくれた。まさに福澤監督の現場はいつもそんなようなもので、ものすごく集中力がいるんです」

(C)2018 映画「祈りの幕が下りる時」製作委員会

(C)2018 映画「祈りの幕が下りる時」製作委員会

阿部ならではの俳優術。それが加賀恭一郎という主人公には活かされているのだと思う。

「8年前にはじめて加賀恭一郎をやると決まった時、物腰は優しくて決して人に威圧感を与えないけど、罪を犯していたり心に憂いのある人間にとってはこおるように恐い刑事にしたいと思ってやってきました。実は(小学)5年生のとき、近所で事件があって。刑事が訪ねて来たときがあったんです。その刑事の印象がそうだったんですよ。誰も家にいなかったから、僕がひとりで応対したんだけど。すごく物腰優しいことが、逆にものすごく怖かったから。そのイメージが焼きついていて。このシリーズをやるときに、それを出せたらいいなと思いました。今でも鮮明に憶えている」

(C)2018 映画「祈りの幕が下りる時」製作委員会

(C)2018 映画「祈りの幕が下りる時」製作委員会

ソフトでありながら凄みがある。ジェントルな物腰だが油断がならない。たしかに阿部が作り上げた加賀恭一郎像のリアリティはそのようなものだ。

「犯人にとっては優しく核心ばっかり衝いてきて、ものすごく嫌でしょうね。でも、事件に関係ない人にとっては少しも怖くない。『優しい刑事さんだったね。あれで捜査できてるのかね』っていうくらいが理想でした」

小学5年生のときの想い出が、俳優、阿部寛だけのオリジナリティを生んでいる。

「8年たった今となっては(加賀は)僕の背骨というか、いろんな役柄をやる上で芝居の軸になっている。それまでは、どちらかと言えばエキセントリックな役が多かったけれど、基本をしっかりやる足固めになったのが加賀刑事だと思う。だからそういう意味で感謝しているんです」

(C)2018 映画「祈りの幕が下りる時」製作委員会

(C)2018 映画「祈りの幕が下りる時」製作委員会

とりあえずの最終作とはいえ、加賀を演じきった実感はないという。

「役は今も生きているし、(自分も)役と一緒に成長してきた。原作でも加賀がまだ不完全で生き続ける以上、演じきったという実感はないんです。ただ、これから先、演じられるかどうかは別として」

「俳優はエネルギーを見られる仕事」だと語る。

「だから、楽をしちゃいけない。たとえば、この役は前もやったから……という楽をお客さんは見たいわけではないと思うんです。別にこれはストイックな話じゃないですよ。楽をしたら、お客さんは一発で見抜きますから。やっぱり、エネルギーは発していかないと。みんな、すごい目で見ている。その視線に耐えうるものにしなくちゃいけないというだけのことです」

熱量は誤魔化せない。

「でもね、熱量は増えてきましたよ。歳をとると涙もろくなるというじゃないですか。それって、いろいろなことが人生経験として積み重なっていくからだと思うんです。人間というものが徐々にわかっていく。もちろん、若いときの熱量もありますよ。『無謀』という。でも、そうじゃない熱量が増えていくんです。これから、まだその熱量が表現できる。まだセリフは言えますしね。表現できる身体でもある。若いときの『無謀』も素晴らしい。でも、ある年齢を過ぎてから無謀な芝居をすると――さっき言った、お客さんの視線は厳しくなります(笑)。若いときの無謀は美しいけれど、それは自分自身のこれまでの失敗から思うことです。反省の連続ですよ」

(C)2018 映画「祈りの幕が下りる時」製作委員会

(C)2018 映画「祈りの幕が下りる時」製作委員会

若いときの無謀は美しい。でも、大人の無謀は美しくない。
「名言ですね」と言うと、「そんなカッコいいもんじゃないですよ!」と笑った。大人の笑顔だった。
阿部寛だけの熱量を、阿部寛ならではの表現に変えること。その実践は、これからも続いていく。

(取材・文:相田冬二 ヘアメイク:丸山良 スタイリスト:土屋詩童)


映画『祈りの幕が下りる時』
2018年1月27日より
全国東宝系にてロードショー

阿部寛 松嶋菜々子
溝端淳平 田中麗奈 / キムラ緑子 烏丸せつこ
春風亭昇太 音尾琢真 飯豊まりえ 上杉祥三 中島ひろ子 桜田ひより / 及川光博
伊藤蘭 小日向文世 山崎努

原作:東野圭吾「祈りの幕が下りる時」(講談社文庫)
監督:福澤克雄
脚本:李正美

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