【対談】ギレルモ・デル・トロ監督×町山智浩「ラブストーリーを語る意義」『シェイプ・オブ・ウォーター』

映画評論家・町山智浩氏とギレルモ・デル・トロ監督

映画評論家・町山智浩氏とギレルモ・デル・トロ監督

1月30日(火)、東京・渋谷 ユーロライブにて、第90回アカデミー賞最多13部門ノミネートを果たした『シェイプ・オブ・ウォーター』(3月1日に公開)のFOXサーチライト・ピクチャーズ・ファンミーティングが開催。イベントには映画評論家町山智浩とギレルモ・デル・トロ監督が登壇した!

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「モンスターは不完全なひとにとっての“守護聖人”なのです」

『パンズ・ラビリンス』『パシフィック・リム』などの世界的ヒット作で知られる、メキシコの巨匠ギレルモ・デル・トロ監督。本作では、ひとりの孤独な女性と水の中で生きる不思議な生物との言葉を超えた“愛”を描き、第90回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞(サリー・ホーキンス)、助演男優賞(リチャード・ジェンキンス)、助演女優賞(オクタヴィア・スペンサー)、脚本賞(ギレルモ・デル・トロ)、作曲賞、編集賞、衣裳デザイン賞、美術賞、撮影賞、音響編集賞、録音賞の最多13部門ノミネートを果たし大きな話題を呼んでいる。

イベントに登壇したギレルモ監督。「日本に来れて本当にうれしいです。日本は私の心の本当に近いところにあります」とファンのあつい声援に答えた。町山からは「アカデミーノミネートおめでとうございます。モンスタームービーが作品賞に違づいたのは歴史上初めてかと思われますが?」と早速アカデミー関連の質問が飛ぶ。ギレルモ監督は「以前『パンズ・ラビリンス』が6部門でノミネートされた経験もありますが、今回はまた全然違う作品です。“水”というのが色んなジャンルを含んでいる。おとぎ話と呼ぶのが一番ふさわしいと思っているんです。ミュージカルもコメディーもホラーもドラマも含まれているんです」とコメントした。

ギレルモ・デル・トロ監督

ギレルモ・デル・トロ監督

また、町山から「なぜ、監督は昔から“モンスター”にシンパシーを感じられていたそうですが、お金持ちの家で育たれた監督がなぜそんなに共感があるのですか?」と直球な質問も…。ギレルモ監督は「私は人間は“ガラス”のようなものと思っていて、政治、経済、宗教などの環境とは関係なくて、どのように反響していったかが大事なことだと思っています。私も子どもの頃は変わった子供で、色が白くメキシコでは逆に差別も受けました。そんな子どもの頃は世界が壊れることがあると思いますが、我々は芸術でそれを金継ぎしていくことに責任を感じています。また、お金があることが幸せかといういと、それは全くバカげたことで、幸せはどれだけ自分が満足できるかなのです。私がずっと怪獣を愛してきたのも、怪獣は不完全なひとたちにとっての守護聖人なのです。我々全員は欠点の多いモノだと早く気付ければ良いと思います」とモンスター愛を語る一幕も。

さらに、本作のクリーチャーの特殊メイクを担当した辻一弘氏について町山から「なぜ、辻さんは目だけ担当したのですか?」との質問。ギレルモ監督は「辻さんは、目の透明感や形をつくることに長けていて、美しさと奥行きがまるでオパールのような目にしてくれました。クリーチャーを作ることはもちろんひとりではできません。専門的に一か所、一か所作っていきます。形をきめるところから初めて、血管、しわ、毛穴やイボイボまでを作っていくので、“層”がいっぱいある。それぞれが専門職なので、クリーチャーに関わったのは全員で60人くらいいます」と制作秘話も明かしてくれた。

トークの様子

トークの様子

そして本作の時代背景について「テレビの中でベトナム戦争時のヘリコプターなども登場しますが、1962年という象徴的な年については?」との質問には、「非常に重要な年です。アメリカが裕福で夢のように理想な国だと考えていました。しかし実際には、性差別、人種差別、男女不平等があったりベトナム戦争も続いていました…。62年はあらゆる意味で今日と同じ状況です。それは、62年に設定して『むかしむかし…』とおとぎ話にして語れるのです。特にみんなが憎しみ合っている時代にラブストーリーを語ることが大事なのです。冷戦時代のように、今もまた核戦争が始まると思わせる時代も似ているでしょう」と現代の社会情勢との一致点、またラブストーリーを語る意義についてもコメントした。

「本当にやりたい作品はあるけど…」

イベント終盤ではではファンからの質問も受け付けたギレルモ監督。

ファンの一人からは「今後予算やスケジュールも度外視して、監督が描きたいキャラクターや作品はありますか?」との質問がとんだ。するとギレルモ監督は「この映画は7,000万ドルくらいかかってるかと思えるかもしれませんが、実際には1,930万ドルで作りました。大きな予算があればあるほど自由がないのです(笑)」とぶっちゃけ。さらに自身の過去作を引き合いに出して「『クリムゾン・ピーク』という大好きな映画を作った時は、5,500万ドルかかりました。予算回収するために宣伝会社はホラー映画として売ったんです…本当はゴシックロマンスなのに(笑)。グッチのバックを買ったのにトースターを与えられえたら怒りますよね? トースターはトースターとして売ってほしいです」とコメントし会場を沸かせた。

通訳中、ファンに笑顔で応えるギレルモ監督

通訳中、ファンに笑顔で応えるギレルモ監督

さらに「大きな予算の大きなフランチャイズ映画のオファーは来ていますが、朝起きて現場に行くときに、本当に自分が惚れ込んでいる作品でなければやる価値はないです。でも、本当にやりたいフランチャイズはありますが、インターネットに当然出ますから、言えません(笑)」と狙っている作品があることを明かすも、その詳細の“おあずけ”にファンからは笑いがこぼれた。

(取材・文:nony)


映画『シェイプ・オブ・ウォーター』
3月1日(木) 全国ロードショー

【STORY】

1962年、アメリカとソビエトの冷戦時代、清掃員として政府の極秘研究所に勤めるイライザ(サリー・ホーキンス)は孤独な生活を送っていた。だが、同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)と一緒に極秘の実験を見てしまったことで、彼女の生活は一変する。
人間ではない不思議な生き物との言葉を超えた愛。それを支える優しい隣人らの助けを借りてイライザと“彼”の愛はどこへ向かうのか……

監督・脚本・プロデューサー:ギレルモ・デル・トロ『パンズ・ラビリンス』『パシフィック・リム』
出演:サリー・ホーキンス『ブルージャスミン』、マイケル・シャノン『テイク・シェルター』、リチャード・ジェンキンス『扉をたたく人』、ダグ・ジョーンズ『パンズ・ラビリンス』、マイケル・スツールバーグ『シリアスマン』、オクタヴィア・スペンサー『ドリーム』
原題:The Shape of Water
配給:20世紀フォックス映画

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