ベニチオ・デル・トロ出演作にハズレなし!?―『ロープ/戦場の生命線』【連載コラムVol.42】

映画ライター・新谷里映が心動かされた、本当に観て欲しい映画たちを連載コラムでお届け。

第42回目は「個人的にこれまでの出演作にハズレがない=ベニチオ・デル・トロが選んだ作品は面白いと信じている」という、彼が出演する最新作『ロープ/戦場の生命線』。映画のストーリーにあるのは「戦争の先にある悲劇と不条理」である。


(C)2015, REPOSADO PRODUCCIONES S.L., MEDIAPRODUCCION S.L.U.

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もともとベニチオ・デル・トロが好きだということもあり、彼が出ている、それだけで『ロープ/戦場の生命線』は観たいと思っていた。演技力は今さら言うまでもなく、彼がこれまで出演してきた映画は、個人的にハズレがないことから、ベニチオ・デル・トロが選んだ作品=面白い、と信じているというのもある。しかも今回の『ロープ』は共演がティム・ロビンス、オルガ・キュリレンコという演技派に加え、メラニー・ティエリー、フェジャ・ストゥカンなど国際色豊かであることも映画のテーマに添っている。しっかりとキャスティングされているというのもそそられた。その役に合った俳優がキャスティングされるのは当たり前のことではあるのだが、なかには「なぜ、この人が? どうしてこの配役?」と、がっかりすることも少なくない。そういう意味でもこの『ロープ/戦場の生命線』は、映画に集中できるキャスティングだと言える。

彼らが演じるのは“国境なき水と衛生管理団”。物語の舞台は1995年、停戦直後のバルカン半島のある村での一日を描いている。村人が生活用水として使っていた井戸に死体が投げ込まれ、彼らの生命線である水を確保するため、マンブルゥ(ベニチオ・デル・トロ)ら“国境なき水と衛生管理団”はロープで死体を引き上げようとするが、死体は巨漢で重量があり、ロープはとても古く、あと少しというところでロープは切れてしまう。死体は再び井戸の中へ──。彼らは代わりのロープを探すために、たった1本のロープを手に入れるために、走り回る。

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物語の主軸にあるのはロープを探すこと、ロープで死体を引き上げて井戸を元に戻すこと。そんなの簡単なことじゃないか? と思うだろう。日本で暮らしていれば、ロープは容易に手に入る。ホームセンターに行けば色々な種類が売っているし、ホームセンターが近くになくても、ネットで注文すれば翌日に届けてくれる。そんな便利な生活を送っている人たちにしてみたら、たかがロープ1本をめぐる話? と思うかもしれないが、当たり前が当たり前ではなくなるのが戦争だ。紛争地域でロープを探す彼らを通して観客が目にするのは、武装勢力、犯罪組織、撤去されていない危険な地雷……そして1人の少年との出会いで明らかになる村の実状。戦争の先にある悲劇と不条理だ。

戦争を描いた映画、紛争地帯を描いた映画、そこで闘う戦士たちを描いた映画は数多くあり、そういう映画で悲劇を目の当たりにすることで、戦争を繰り返してはいけないというメッセージを受け取る。この映画にも、もちろんそういったメッセージは組み込まれているが、よくある戦争映画と異なるのは、映画としてはあまり主人公になってこなかった援助活動家たちの目線で描いていること。監督のフェルナンド・レオン・デ・アラノアはこう言っている──

「彼らは戦争が日常となった場所で、闘い続けている。落胆と意思との闘い、常識と不条理との闘いである。悲劇の予兆を前にしながら、希望をユーモアの力で立ち向かっている」

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この映画をジャンルで分けるとすれば「LIFE(人生)そのものだ」とも語っているように、戦争が終わった先にあるその土地の人々の暮らし=人生を描いている。そこにドラマを感じるのは、実際に戦争の風景を目にした者が見聞きしたものが元になっているからだろう。原作は“国境なき医師団”に所属する医師でもある作家パウラ・ファリスの小説「Dejarse llover」。それを国境なき医師団をはじめ国際NGOの活動に関するドキュメンタリーを手掛けているフェルナンド・レオン・デ・アラノアが脚色、監督している。そこにはニュースでは知り得ない事実がある。観るべき映画のひとつで、観て良かったと思う映画だった。

劇中にはロックな楽曲が使われているが、クライマックスでは多くのアーティストたちがカヴァーしている反戦ソング「花はどこへ行った」のマレーネ・ディートリヒ歌唱バージョンが流れる。曲の歌詞──「あの花たちはどこへ行ったのか〜」「あの少女たちはどこへ行ったのか〜」「あの若い男たちはどこへ行ったのか〜」「いつになればみんな分かるのだろう〜」を聞きながら、1本のロープが紡ぎ出す衝撃と感動に浸り、原題である「A PERFECT DAY」=完璧な日についても考えた。自分のなかで自分なりの答えを探すその余韻を決して忘れないだろう。

(文・新谷里映)

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新谷里映

フリーライター、映画ライター、コラムニスト
新谷里映

情報誌、ファッション誌、音楽誌の編集部に所属、様々なジャンルの企画&編集に携わり、2005年3月、映画ライターとして独立。 独立後は、映画や音楽などのエンターテイメントを中心に雑誌やウェブにコラムやインタビューを寄稿中。

【tumblr】新谷里映/Rie Shintani

映画『ロープ/戦場の生命線』
公開中

監督:フェルナンド・レオン・デ・アラノア
原題:A PERFECT DAY
出演:ベニチオ・デル・トロ、ティム・ロビンス、オルガ・キュリレンコ、メラニー・ティエリー、フェジャ・ストゥカン
2015年/スペイン/カラー/英語、セルビア語、スペイン語、フランス語、ボスニア語/シネマスコープ/106分/5.1ch/DCP/後援:スペイン大使館/セルバンテス文化センター東京/公益財団法人 日本スペイン協会
提供:レスペ、中央映画貿易
配給:レスペ

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アーティスト情報

ベニチオ・デル・トロ

生年月日1967年2月19日(51歳)
星座みずがめ座
出生地プエルトリコ

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ティム・ロビンス

生年月日1958年10月16日(60歳)
星座てんびん座
出生地

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