『シェイプ・オブ・ウォーター』『しあわせの絵の具』のサリー・ホーキンスの活躍に見る、年齢と女優力の関係【連載コラムVol.43】

映画ライター・新谷里映が心動かされた、本当に観て欲しい映画たちを連載コラムでお届け。

第43回目は、話題作への出演が続く実力派女優のサリー・ホーキンスに注目。第90回アカデミー賞で作品賞・監督賞ほか最多4部門を受賞した『シェイプ・オブ・ウォーター』や有名画家を演じた『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』での素晴らしい演技は、彼女の女優としての実力を目一杯に感じられるおすすめ作品。


『シェイプ・オブ・ウォーター』(公開中)は第90回アカデミー賞で作品賞・監督賞ほか最多4部門を受賞/(C)2017 Twentieth Century Fox

『シェイプ・オブ・ウォーター』(公開中)は第90回アカデミー賞で作品賞・監督賞ほか最多4部門を受賞/(C)2017 Twentieth Century Fox

年齢を重ねてから注目を集める人は、本当にお芝居が上手い人なのだと思う。若い年代は才能があったとしても、やはり若さや、若さが創り出す輝きの方が目立ってしまうもの。それはそれで、その年代に与えられた特権でもあるが、年齢と共に徐々に薄れていくものであり、そういったものに邪魔されないようになる年代が40前後なのではないかと。ふとそんなふうに感じたのは、40代を迎えたサリー・ホーキンスの最近の立て続く活躍を見たからだ。

今年は、すでに公開されている『パディントン2』に続いて、『シェイプ・オブ・ウォーター』『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』が公開となり、後の2作はどちらも主役。知名度はぐんと上がるはずだ。もちろんこれまでにも数多くの作品に出ていて──たとえば『ハッピー・ゴー・ラッキー』『ブルージャスミン』など、「ああ、あの女優さんね」と思い出す人もいるだろう。

『シェイプ・オブ・ウォーター』はギレルモ・デル・トロ監督の描くファンタジックなラブストーリー。話すことのできないイライザ(サリー・ホーキンス)と、人間ではない不思議な生きもの(ダグ・ジョーンズ)との言葉を越えた物語だ。すでにゴールデングローブ賞では監督賞と作曲賞を受賞、ベネチア国際映画祭では金獅子賞を受賞、第90回アカデミー賞では最多13部門にノミネートされ、作品賞・監督賞ほか最多4部門を受賞した。

賞レースでの評価からも素晴らしい作品であることは言うまでもない。ただ、不思議な生きものに出会った瞬間に恋に落ちるイライザを誰もが演じられるわけではなく、誰かを好きになること、愛することは、理屈じゃないということをサリー・ホーキンスは見事に演じてみせた。しかも今回は話すことのできない役、セリフなしでイライザの溢れんばかりの愛情を表現する。本当にすごい女優だ。

『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』/(c)2016 Small Shack Productions Inc. / Painted House Films Inc. / Parallel Films (Maudie) Ltd.

『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』/(c)2016 Small Shack Productions Inc. / Painted House Films Inc. / Parallel Films (Maudie) Ltd.

一方、『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』は、カナダで最も有名な画家モード・ルイスの物語だ。この映画でモード・ルイスを知る人も多いだろう。だが、本国では小品でもオークションで500万円を超えるほどの人気の画家だ。彼女の創作意欲はどこからきていたのか、どうやって名前が広まっていったのか、そして創作を支えた夫エベレット(イーサン・ホーク)との暮らしを丁寧に綴っている。実生活においてサリー・ホーキンスは絵本作家の両親を持ち、自身もイラストレーター志望だったそうで、モードを演じるにあたって、素朴派画家の絵画クラスに数ヵ月通いモードに近づいていった。何よりも素敵なのはモードのチャーミングな性格だ。魚の行商などいくつも仕事を掛け持っているエベレットが家政婦を探していることを知り、半ば押しかけるようにやってきたモードの恋愛力にも驚かされるだろう。

2作品とも愛の物語だが、前者はファンタジーの世界の住人、後者は実在する人物、キャラクターはまったく異なる。けれど、過去のトラウマが原因で話すことができないイライザ、子供の頃から重いリウマチを患っているモード、どちらも抱えているものがあるキャラクターであることや、生きる力と愛する力がたくましいことは共通している。

王道ラブストーリーでは、大抵の場合、男性キャラクターが女性をリードするように構成されているが、この2作は違う。イライザもモードも決して華やかなキャラクターではないが、自分から愛を掴みにいく、とても行動力のある女性だ。そこに惹かれる。愛嬌があって、純粋で、愛する力と愛される力を持っている。それも魅力的だ。そんなふうに観客が映画を通してイライザやモードの目線でその世界を見ることができるのは、サリー・ホーキンスがサリー・ホーキンスではなくキャラクターそのものとしてスクリーンのなかで生きているから。彼女の女優としての実力を目一杯に感じられるこの2本の映画を見逃さないでほしい。

(文・新谷里映)

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新谷里映

フリーライター、映画ライター、コラムニスト
新谷里映

情報誌、ファッション誌、音楽誌の編集部に所属、様々なジャンルの企画&編集に携わり、2005年3月、映画ライターとして独立。 独立後は、映画や音楽などのエンターテイメントを中心に雑誌やウェブにコラムやインタビューを寄稿中。

【tumblr】新谷里映/Rie Shintani

映画『シェイプ・オブ・ウォーター』
公開中

監督・脚本・プロデューサー:ギレルモ・デル・トロ
出演:サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス、ダグ・ジョーンズ、マイケル・スツールバーグ、オクタヴィア・スペンサー
原題:The Shape of Water
配給:20世紀フォックス映画

映画『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』
公開中

監督:アシュリング・ウォルシュ
出演:サリー・ホーキンス、イーサン・ホーク
2016年/カナダ・アイルランド/英語/116分/DCP/カラー
配給:松竹

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