新作映画『修道士は沈黙する』を観るべき3つの理由―――沈黙が物語る真実とは? 世界経済の縮図を舞台にした心理サスペンス

(C)2015 BiBi Film-Barbary Films

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『修道士は沈黙する』ってどんな映画?

ドイツの高級リゾート地、ハイリゲンダム。この地で開催されるG8財務相会議に招待されたイタリア人修道士のロベルト・サルスは、会議の前夜に、著名なエコノミストで国際通貨基金のダニエル・ロシュ専務理事に呼び出され「告解したい」と告げられる。彼が宿泊する2308室で、告解を聞き入れるサルス。しかし翌朝、ロシュは同じ部屋でビニール袋を頭にかぶり、窒息死した姿で発見される。目撃証言から、容疑者にサルスが浮上するが…。

観るべき理由:1――“招かれざる客”と経済エリートが激突?

『ローマに消えた男』で知られるイタリア人監督ロベルト・アンドーの最新作で、昨年開催された「イタリア映画祭2017」にて『告解』のタイトルで上映された話題作が、ついに劇場公開。自殺か、殺人か――。大物金融マンの謎の死をめぐって、世界経済の縮図ともいえる国際会議を舞台に、“招かれざる客”でもある修道士と、経済界のエリートたちが静かなる駆け引きを繰り広げる心理サスペンスだ。ちなみに“告解”とは、キリスト教用語で、司祭に自らの罪を明かす行為。秘密の厳守が義務付けられている。

観るべき理由:2――絶対マネできない! 修道士の厳しい戒律とは

というわけで、物語の命運を左右するのが、戒律を理由に修道士サルスが貫く「沈黙」だ。たとえ、自分が殺人の容疑者になったとしても、死亡したロシュから何を告げられたのか一切語ろうとせず、会議の参加者は翻ろうされるばかり。その結果、彼ら経済人が内に秘めた良心や葛藤、狡猾さがあぶり出され、「沈黙こそがいかに雄弁であるか」を物語る点がとても興味深い。

サルスが所属するカルトジオ修道会は、カトリック教会の中でも最も戒律が厳しく、現在は約200人の修行僧が「沈黙」「孤独」「清貧」を重んじた生活を送っているのだとか。片や、多くの現代人は経済を通じた「成長」「発展」「繁栄」という神話にいまも取りつかれている…。そんな対比も、本作が突きつける痛烈なメッセージである。

観るべき理由:3――難しそう? 実はエンタメ色が強い痛快作

そもそも、経済とは無縁に思えるサルスが会議に招待された理由は? ロシュが死の直前、サルスに告げた罪とは? 会議が強引に決定しようとする衝撃の経済政策とは? さまざまな謎解きが同時進行するなか、回想シーンや「紛失したICレコーダー」「防犯カメラ」「謎めいた方程式」といった映画的アイテムが効果を発揮している。タイトルも含めて「経済? 宗教? ちょっと難しそう」と敬遠されがちな映画だが、実際に見てみると、意外にもエンタメ色が強く、エンディングは痛快ですらある。舞台となる高級リゾートホテルの美しくも、どこか空虚なたたずまい。それを捉える優麗なカメラワークも大きな見せ場。野鳥や犬など、動物をうまく使った演出も意味深で、想像力をかき立てる。

(文:内田涼)


『修道士は沈黙する』
3月17日(土)、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー

監督・原案・脚本:ロベルト・アンドー『ローマに消えた男』
出演:ト二・セルヴィッロ、ダニエル・オートゥイユ、コニー・ニールセン、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ
2016年/イタリア・フランス合作
配給:ミモザフィルムズ

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ローマに消えた男

ローマに消えた男

出演者 トニ・セルヴィッロ  ヴァレリオ・マスタンドレア  ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ  ミケーラ・チェスコン  アンナ・ボナイウート  エリック・グエン  アンドレア・レンツィ  ジュディス・デイヴィス
監督 ロベルト・アンドー
製作総指揮 ガエタノ・ダニエレ
脚本 ロベルト・アンドー  アンジェロ・パスクィーニ
原作者 ロベルト・アンドー
音楽 マルコ・ベッタ
概要 「グレート・ビューティー/追憶のローマ」のトニ・セルヴィッロが性格が対照的な双子の兄弟を一人二役で演じ、自らの職責を投げ出し失踪した野党党首と、その替え玉となって政界に旋風を巻き起こす哲学教授それぞれの人生模様を、皮肉とユーモアを織り交ぜて描くヒューマン・ドラマ。監督は「そして、デブノーの森へ」のロベルト・アンドー。イタリア最大の野党を率いるエンリコは、大事な国政選挙を前に支持率低迷に苦しんでいた。ある日、プレッシャーに耐えられななった彼は、いきなり失踪してしまう。慌てた部下のアンドレアは、双子の兄ジョヴァンニの存在を知り、彼を替え玉に仕立てて急場を凌ぐことに。すると意外にも、その歯に衣着せぬ物言いが大衆の心を掴み、支持率は急回復していくが…。

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