【インタビュー】『彼女がその名を知らない鳥たち』白石和彌監督×『全員死刑』小林勇貴監督<後編>

小林勇貴監督(左)×白石和彌監督(右)

小林勇貴監督(左)×白石和彌監督(右)

白石和彌監督の『彼女がその名を知らない鳥たち』が4月25日レンタル開始、小林勇貴監督の『全員死刑』が5月2日にTSUTAYA先行レンタル開始! それに合わせて、両監督のスペシャル対談が実現!! 『凶悪』 『日本で一番悪い奴ら』などの実録系作品を手がけてきた白石監督と、『全員死刑』で実際の殺人事件を映画化した小林監督。実際の事件をエンターテインメント映画へと昇華させる両監督が、互いの作品の魅力や演出のこだわりを熱く語る!


【プロフィール】

白石和彌(右)/'74年北海道生まれ。若松孝二監督作などの助監督を経て、'10年に『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で映画監督デビュー。以後、映画『凶悪』('13)や『日本で一番悪い奴ら』('16)などを手がけ、高い評価を得る。映画『孤狼の血』が5月12日、『止められるか、俺たちを』が秋公開。

小林勇貴(左)/'90年静岡県生まれ。初長編監督作『Super Tandem』('14)で第36回PFFに入選し、本物の不良を俳優として起用した『孤高の遠吠』('15)でゆうばり国際ファンタステック映画祭2016のオフシアター・コンペティション部門でグランプリを獲得。『全員死刑』('17)で商業映画監督デビューを果たす。


『全員死刑』/ (C)2017「全員死刑」製作委員会

 (C)2017「全員死刑」製作委員会

小林:まだ僕が商業映画デビューする前、白石監督と対談させていただきました。

白石:そのときにはもう『全員死刑』を撮ることになっていたよね。で、対談の後、僕の『牝猫たち』に出演してもらったね。商業デビューしてどんな感じ?

小林:最高ですね。映画撮るの、マジで面白すぎますね。

白石:景色は変わった?

小林:そうですね。以前の映画のことを知らない不良たちから、映画のことが大好きな人たちに囲まれるようになって、景色が一変しました。

白石:僕なんかはそんなのなかったな。まあ『凶悪』で少しご評価をいただいたので景色が変わったかもしれないけど、やっていることは基本的に変わんないね。ずっと助監督をやっていたので、監督になったという感慨はそんなになかったかもしれない。むしろ、これから大変だなーって(笑)。果たして(監督として)やっていけるだろうかという不安。「楽しいっすー」というのはなかった(笑)。

小林:そうだったんですね。今、めちゃめちゃ楽しいっす。「楽しい!」の声のトーンが変わるくらいに(笑)。

白石:『全員死刑』は原作を読んでいたんだけど、これを小林勇貴はどうやるんだろうと思ったよ。応援する気持ちがあったから、(デビュー作に)難しい題材を選んじゃったなって。でも完成を観たら、堂々たる映画になっていて素晴らしかったよね。

小林:いやぁ、ありがとうございます(照れ笑い)。

小林勇貴監督(左)×白石和彌監督

白石:これは際どい映画だよ、本当は。僕もいくつかやっているけど、実際の事件を扱うと、どういうテンションで映画に入ったらいいのか難しい。でも、小林監督のキャラクターがいい意味でこの『全員死刑』に投入されている。それが作品のエッセンスになっている。それって、できるようでなかなかできないことなんですね。監督のキャラクターが映画のパッケージに合致していくことって。僕が知っている限りだと(自分が師事していた)若松孝二監督ぐらい。少なくとも小林監督の同世代では観たことない。つまり強い作家性があるんでしょうね。キャラクターだけでなく。それにびっくりしたし、嫉妬もした。僕には撮れない映画を量産していくんだろうなという気がします。作品に“タレント性”があるんですよね。本人の前でほめるのもアレだけど、今の日本ではなかなか得がたいなと。

小林:原作が大好きだったので、何回も読んでいくなかで矛盾に感じることもありましたが、それを整理していくうちに見えてくるものがありました。

白石:実録もののいいところって、行われていることが不完全というか、「なんで、こんなことやっちゃったかな…」「ここがこの人たちの分かれ目だったよね」という“理解できない一瞬”がある。そういうところが人間の愛おしさにつながっていったりするんだけど、その描き方もいい。「なんで人を殺すのに家族で仲いいんだ、こいつら」とか(笑)。確かにいろいろ疑問に感じることがあるんだけど、そこで無理に整合性を取るとよくないことが多くて、こねくり回してないところもすごくよかったんですよね。あと、若者が主人公というのもいい。これがお父さんやお母さんが主人公だと、観てられない(笑)。謎の青春映画になっているところがよかった。なるほど、と思いました。僕だったら、こうはなってないでしょうね。

(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

(C)2017映画「彼女がその名を知らない鳥たち」製作委員会

小林:『全員死刑』は、とにかく“おかしな町”感を出したかったんです。地元の静岡県富士宮市に友達が遊びに来ると、コンテナ型のカラオケBOXを気持ち悪がるんですよ。「あの施設は何…?」と(笑)。だから、『全員死刑』にも入れようと、コンテナ型を探しました。車の映像を逆再生して逆走させたり、道にぶっ倒れている人がいたり、“行きたくねえ田舎”にしました。

白石:あの謎の方言はなんなの? 「小林語」みたいな(笑)。

小林:作りました(笑)。静岡の方言がベースなんですが、結構改造したんです。1字足したり、抜いたり、バランスをおかしくして現地の人が絶対に言わないようにしました。

白石:「どこ」かわからないようにした?

小林:そうなんです。松方弘樹さんの自伝に書いてあったことを参考にしたんですが、地方の巡業先で聞いた面白い方言を『仁義なき戦い』の自分の台詞に勝手に盛り込みまくったらしいんです。ウケ狙いで。それですごく楽しんでいたと。自分も不良と話していると、全然聞いたことのない方言が出てくるんですよ。「調子乗りやがって」じゃなくて「チョーたれやがって」とか、「ガタガタぬかすな」じゃなくて「ガシャガシャぬかすな」とか。なんで「ガシャガシャ」なんだろう? 歯がやられているか、栄養が行き届いてないんじゃないかな(笑)。

白石:シンナーで歯が溶けてるんじゃないの(笑)。

小林:それで「ガシャガシャぬかすな」になっちゃう。そういうことを盛り込んでいますね。この事件を身近に感じて、「ここ、お前んちの近所だよ」と観客に感じてほしかったんです。これはどこか特定の場所の話ではないと、攻撃的にいきたかったから。

白石:怖い、怖い(笑)。僕も田舎出身なので、田舎の殺伐とした風景に感じるものがある。小林監督ほど攻撃的な強さはないですけど、僕も物語の舞台が自分たちのいる場所と地続きであることは観た人に感じてもらいたい。それはどんな映画でもそうです。ただ、なかなか狙ってできるものでもないんですよね。監督に備わった特性みたいなものが大きく作用してるのかなと最近思います。その感じが小林監督にはあったから、すごくよかったよね。あと、キャスティングがうまい! 出てくる人がみんないい。小林監督は“いい人”を発見するんだよね。そう思わせられる映画が作れているということは、演出的にも自力があるんだな。

(取材・文/相田冬二 撮影/岩下洋介)


Blu-ray&DVD『彼女がその名を知らない鳥たち』
発売中&レンタル中

監督:白石和彌
原作:沼田まほかる
脚本:浅野妙子
出演:蒼井優 阿部サダヲ 松坂桃李 竹野内豊

Blu-ray&DVD『全員死刑』
発売中&TSUTAYA先行レンタル中

監督・脚本:小林勇貴
原作:鈴木智彦
脚本:継田淳
出演:間宮祥太朗 毎熊克哉 六平直政 入絵加奈子

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