【インタビュー】『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ』二宮健監督「楽しいサプライズをたくさん与えられたら」

二宮健監督

二宮健監督

商業監督デビュー作が自身の自主映画のリメイク――映画監督・二宮健のデビューは本人が「自分の想像を超えていますよね(笑)」と驚くオファー内容だった。オリジナルとなった2014年発表の『眠れる美女の限界』から3年。映画の尺は43分から約90分とほぼ倍になり、名だたる監督の作品に出演してきた女優・桜井ユキと、人気を不動のものとしていた高橋一生を主演に迎えて2017年10月に公開となったのが『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ』である。

(C)2017 KingRecords

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当時25歳の若手監督が作り上げるその世界観には、はっきりと好き嫌いが別れる感じがある。これは「賛否両論だったと思いますね。人によって全然感想が違いました」と公開当時を振り返るが、「『眠れる美女の限界』をリメイクしたいという声自体が面白かったんで、よくそんな事を思ってくださったなって思いますね」とそもそも制作を持ちかけたキングレコードに対して驚きを隠せなかったようである。

本作の感想を見ていると「ミュージックビデオのよう」という意見も多い。実際作品を観てもらうとわかるのだが、音楽をベースとした演出やカメラワークなど、随所にこだわりが詰まっていると見受けられる。実際、「音楽を聴きながら映像のイメージを膨らませることは多いですね」とイマジネーションの源が音楽発信にもなっているそうだが、音楽へのこだわりを聞くと「自分ではわからないんですが、こだわり強いんですかね?」と笑みをこぼす。

(C)2017 KingRecords

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映画で使用されているのは、Kyla La Grangeの「Hummingbird」(主題歌)、Kingの「Promise」、Hundaesの「Be There」、Phill Goodの「Growing up」といった海外のインディーズ楽曲ばかり。「映画で使用する音楽については細かく言いますし、指定もします。ここは粘りますね、『音楽にもっと力を注いで』って」との力強い言葉に、そのこだわりが並々ならぬものだと感じ取れる。

そしてこれらのアーティストとの二宮監督の出会いは、Youtubeでのネットサーフィン。「時間を見つけて探すのが趣味ですね。知らない音楽と不意に出会える機会はあるんで。自宅にいながら(笑)」。ただ、自分が好きな音楽が活かしづらいこともわかってきたと自覚している。「音楽は権利商売なので、だんだん音楽を使う不自由さもわかってきました。音楽だけでイメージ膨らませていったら意外と門戸狭いんで、映画の作り方はもっと違う角度からアプローチしていかなくては、と感じています」。

(C)2017 KingRecords

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若くして商業デビューを果たした二宮監督だが、頭の中には高いプロ意識が明確にある。

「商業作品は人のお金で撮ることになるので、結果『それ誰が観たいの?』というものにはしたくないんですよね。こだわる箇所も見極めないと、想定外のニッチさを作品が抱えることになるので。例えば映画の中でカイト(演:高橋一生)がアキ(演:桜井ユキ)にプレゼントする10曲のMIX CDに関して、自分の好きな10曲これだぜ! って全部権利とってお金かけてサントラ発売したいくらいですけど(笑)、それはもうビジネスにならないですから、日本の市場では」

そう語る二宮監督は「音楽を一番贅沢に使う人」と一番好きだというキャメロン・クロウ監督の名前を挙げ、「彼のような豊かな選曲でやってみたいですけど、仮にそれをやって楽しい人が10人しかいないんだったら無理ですよね。それでもこの映画の中で何曲かは提示してますし、映画を観て『リミスリのプレイリスト作ってます』って喜んでくれている人もたくさんいたので、それは素敵なことだと思ってます」とも話してくれた。

(C)2017 KingRecords

(C)2017 KingRecords

こうして音楽ベースで作られた本作だが、撮影はわずか11日の中、限られた時間でどこまでこだわりを見せるか―二宮監督の選択は「任せる」だった。現在・過去・妄想の中と様々なシチュエーションが目まぐるしく変わるこの作品においては大きなチャレンジではなかったのだろうか?

「撮影期間についてはあまりバレたくないんですけど(笑)、現実、妄想といった今キャストたちが置かれている記号的な状況よりも、『今、アキがどういう心情に基づく状況に置かれているのか』ということに準じてやっていたので、現場でキャストが迷うことはなかったと思います」

さらに作中では唯一キャラクターとして異彩を放っているピエロのブッチ(演:古畑新之)については、カイトが営むサーカス団にかけているのもあるというが、そこにはもっと意外な理由があった。

(C)2017 KingRecords

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「昔、油絵を描いていたんですけど、何故かずっとピエロの絵を描いていたんですよね。昔はピエロがすごく怖かったんですけど、それって無意識に関心を示しているってことだなと思えば、なんで『バットマン』のブルース・ウェインがコウモリになったのかって、やっぱり昔コウモリ怖かったところから来ているし…僕はピエロがすごく怖かったがゆえに、ピエロに対する好奇心がつきないんですよね」

インタビュー時点で、すでに次作となる岡崎京子原作の『チワワちゃん』を「絶賛編集中」だという二宮監督。本作のようなオリジナルをやることと、原作ものをやる違いをどう考えているのだろう?

「『チワワちゃん』は僕がずっとやりたいと思っていた原作で、ずっと言い続けていたんですよね。それが実現したんです。『リミスリ』は『やらないか?』ときっかけを頂いて動き出したものですから。要するに、オリジナルだろうと、原作だろうと、作品によって自由の領域が違うので、一概に違いは語れないと今は思っています。『チワワちゃん』に関しては30ページ位のマンガを長編にしているので、表現を作っていかなきゃいけないという必然性もあって、どちらもそれぞれの環境の中で自由にやらせて頂きました」

(C)2017 KingRecords

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作家性の強いオリジナル作が世に出たということは、現在監督を目指しているような人たちには大きな希望にもなるだろう。「そういう人たちの背中を押せたら光栄ですよね」と謙遜気味に話す二宮監督だが、あっという間にスターダムに駆け上がる俳優と違い、監督は立てる打席が限られる。しかも人気監督がいる中で評価されていくことは並大抵のことではない。「好きな役者・使いたい役者」を聞くと「トム・クルーズ好きですね」と頬を緩める二宮監督。「もしトム・クルーズと仕事できるような機会があればすぐに飛びつきますけど、それとは別にそういう風に思えるものを自分たちの世代の中でも作っていかなきゃいけないと思っているんですけどね」と先を見つめる。

二宮健監督

二宮健監督

二宮監督も言っていたとおり「人のお金」というハードルはあるものの、もっと若手監督たちが活躍していく土壌が出来れば、映画はもっと楽しくなっていくのではないだろうか。「作品を撮り続けて、毎度『(二宮健が撮る作品は)こういう感じなんだ』って楽しいサプライズをたくさん与えられたら良いなと思っています。トムも毎回サプライズをくれますからね」。


『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ』
2018年7月18日発売・レンタル開始

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