『ジョーカー』は「バズるべき映画」だった! 世界的ヒットを振り返る【第92回アカデミー賞】

TM &  (C) DC. Joker  (C) 2019 Warner Bros. Entertainment Inc., Village Roadshow Films (BVI) Limited and BRON Creative USA, Corp. All rights reserved.

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トッド・フィリップス監督×ホアキン・フェニックス主演の映画『ジョーカー』が、世界興行収入で10億7,000万ドル(日本時間1月22日時点/Box Office Mojo調べ ※1)、日本国内における興行収入で50億円を突破している。配信サービスの発展が進む昨今、この数字は間違いなく「とんでもない成功」と呼べるものだ(本作の予算は5500万ドル。Forbes誌が指摘しているように、本作はアメコミ映画史上で最も利益率が高い ※2)。

果たして、なぜ本作はこれほどの成功を収めることができたのだろうか? 最多11部門にノミネートされた第92回アカデミー賞の発表を前に、その背景を改めて探ってみよう。

「第76回ベネツィア国際映画祭」での反響

本作が脚光を浴びるきっかけとなったのは、お披露目となった「第76回ベネツィア国際映画祭」。世界三大映画祭に数えられる同映画祭で、本作は金獅子賞(=最高賞)を獲得した。これが最初にして最大のプロモーションになったと思う。2020年以前の過去5年の受賞作品は『ROMA/ローマ』 『シェイプ・オブ・ウォーター』 『立ち去った女』 『彼方から』 『さよなら、人類』。いずれも「映画らしい映画」だが、このラインナップに『ジョーカー』という、既存のキャラクターを基にした作品が肩を並べ、いわゆる「アメコミ映画」として初めて世界三大映画祭の最高賞を獲得したことにより、映画史に新たなページを刻んだのだ。

単なる「アメコミ映画」とは異なる求心力

ベネツィアを皮切りに、各映画賞を獲得していった本作は、なぜ映画業界の住人たちの心を掴んだのか? 単純に、映画としての完成度が高いからである。さきほど「アメコミ映画」という表現を用いたが、本作はいわゆる「アメコミ映画」とは一線を画す。ジョーカーという悪の「起源」を描いた本作は、狂気性・悲劇性・暴力性が複雑に絡み合った物語で「『タクシー・ドライバー』『キング・オブ・コメディ』の息子」といった雰囲気を漂わせつつ、丹念かつ強烈に描かれた悪の誕生劇が、一個の映画としてのアイデンティティを確立。主演のホアキンの芝居は実に力強く、美意識と狂気をブレンドした映像表現やブラックジョークが込められた結末は、観客の胸を痛烈に刺す。観客の心を捕らえて離さない、強烈なパワーを持った映画なのだ。

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ティーンを捨てるというリスク=「娯楽的DC映画」からの脱皮

内容の過激さゆえにR-15指定を受けている本作は「R-指定作品で史上初めて興行収入10億ドルを超えた映画」としても評価されている。公開前から大きなリスクを背負っていたにもかかわらず、これほどの大成功を収めたことは、映画史における重要な出来事だと言えるだろう。また、これまでのDC映画に散見された「娯楽性を強調した路線」とは異なる、重厚でダークな作品に仕上がっていること、その中に込められた悲劇性や現実世界に対するブラックジョークも、映画ファンの心を捉える要因になったのではないか。「DC映画っぽくない」というギャップが、本作の支持率の押し上げに一役買った。そう考えるのは大袈裟ではない。

セレブリティたちの好反応

そういった映画の内容・性質に加えて、セレブリティたちの好反応も、少なからず影響を与えたはずだ。マイケル・ムーアは自身のInstagram(※3)で「映画の傑作を目撃した」と絶賛。俳優のヴィンセント・ドノフリオがTwitterに「この若者はこの演技によって表彰されるに値する」と投稿すると、ジェシカ・チャスティンも「同意するわ。私が今まで見た中でも最高の演技の一つ。映画を見ていて口が開いてしまった。とても揺さぶられた」と返信している(※4)。映画界で認められた監督や名優たちが、物語やホアキンの芝居を絶賛することによって、メディアは次々と記事を書き、本作のプロモーションにつながっていく。結果的に、大衆の注目と期待はさらに高まっていく。

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公開3日で100億円の超絶ヒット

いざ公開を迎えると、熱心な映画ファンはもちろんのこと、「とりあえず見たい」「ホアキンのジョーカーってどんな感じなんだろう」という漠然とした興味を抱いた観客も、劇場に足を運ぶこととなった。彼らはその衝撃的なストーリーに「何か」を感じ、それを人々に伝えていった。具体的な数字を示すと、アメリカ本国では公開初週3日間で興行収入約9,620万ドル(=およそ106億円)を突破(これは『ヴェノム』を抜いて10月公開作品で史上最高の数字である)。同時公開となった日本でも大きな盛り上がりを見せ、現在までに50億円を稼ぐという大ヒットを記録している。

『ジョーカー』は「バズるべき映画」だった

決して観客に媚びない物語がこれほどの成功を収めたという事実は、一人の映画ファンとして非常に感慨深く、喜ばしいものがある。人々の心を打つのは、必ずしも希望・笑い・愛を描く物語だけではない。その事実を忘れてはいけないし、スクリーンを通じて人々に改めて示したフィリップス監督、そしてホアキンをはじめとするキャスト陣、縁の下で支えたスタッフたちには、大きな拍手を送りたい。

映画としての完成度、アメコミ映画やDC映画からの飛躍、興行収入における成功…。これらの事実を踏まえると、映画『ジョーカー』はバズるに値した、いや、バズるべき映画だったと思えてくる。第92回アカデミー賞も含め、本作がさらに映画的価値を高めていくことにが楽しみだ。

(文:岸豊)

>関連記事:『ジョーカー』のホアキン・フェニックスって何者?【第92回アカデミー賞】
>関連記事:映画『ジョーカー』レビュー:見る者を打ちのめす、哀しき悪の誕生劇。【第92回アカデミー賞】

<参照リンク>
(※1)Box Offce Mojoの『ジョーカー』興行データ
(※2)Forbesの記事
(※3)マイケル・ムーア(@michaelfmoore)のインスタグラムより
(※4)ヴィンセント・ドノフリオ(@vincentdonofrio)とジェシカ・チャステイン(@jes_chastain)のTwitterコメント


『ジョーカー』
TSUTAYA TVにて配信中/2020年1月29日 Blu-ray&DVDレンタル・発売開始

ジョーカー

ジョーカー

出演者 ホアキン・フェニックス  ロバート・デ・ニーロ  ザジー・ビーツ  フランセス・コンロイ  マーク・マロン  ビル・キャンプ  グレン・フレシュラー  シェー・ウィガム  ブレット・カレン  ダグラス・ホッジ
監督 トッド・フィリップス
製作総指揮 マイケル・E・ウスラン  ウォルター・ハマダ  アーロン・L・ギルバート  ジョセフ・ガーナー  リチャード・バラッタ  ブルース・バーマン
脚本 トッド・フィリップス  スコット・シルバー
音楽 ヒルドゥル・グーナドッティル
概要 ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した衝撃のサスペンス・ドラマ。DCコミックスのスーパーヒーロー、バットマンの宿敵“ジョーカー”に焦点を当て、コメディアンを夢みる心優しい男が、いかにして悪のカリスマへと変貌を遂げていったのか、その哀しくも恐ろしい心の軌跡を重厚な筆致で描き出す。主演は「ザ・マスター」のホアキン・フェニックス。共演にロバート・デ・ニーロ、ザジー・ビーツ。監督は「ハングオーバー」シリーズのトッド・フィリップス。大都会の片隅で、体の弱い母と2人でつつましく暮らしている心優しいアーサー・フレック。コメディアンとしての成功を夢みながら、ピエロのメイクで大道芸人をして日銭を稼ぐアーサーだったが…。

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アーティスト情報

ホアキン・フェニックス

生年月日1974年10月28日(45歳)
星座さそり座
出生地プエルトリコ

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ロバート・デ・ニーロ

生年月日1943年8月17日(76歳)
星座しし座
出生地

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