又吉直樹インタビュー 同世代芸人を『火花』で、2作目『劇場』は恋愛で青春描く

お笑い芸人、ピース・又吉直樹が、芥川賞を受賞した『火花』に続いて、第二作『劇場』を早くも発表した。内容は、演劇をやっている主人公とその彼女との恋愛小説と銘打たれている。

超絶売れっ子芸人としての活動のさなかでの、『火花』から2年というとても早いペースでの執筆。本業のお笑い芸人としての仕事もありながらのこの早い発表の裏には、どのようなモチベーションが隠されているのだろうか。話を聞いた。

――僕が一読した感想は、『火花』と同じく、『劇場』も青春小説だと思ったんです。又吉さんは、青春に対するこだわりや思い残したことがあったりするんでしょうか。

又吉直樹

又吉直樹

ひとつあるのは、例えば、僕らの世代は、(明石家)さんまさんとかダウンタウンさんとかに憧れて芸人になるんですけど、同世代でそうなれた人はひとりもいないんですね。

なれなかったから「全滅」なのかって言われたら、そうでもない。年表には誰一人載らないかもしれないけど、「全滅」ではないということは実感としてある。

じゃあどう全滅じゃないのか、というのは『火花』で書けたかもしれない。

『劇場』に関しても、簡単に言ったら「恋愛」ってみんなしてるし、付き合う付き合えへんという話はあるにせよ、語られる恋愛なんて本来ない、どんなことが会っても不思議じゃない、ちゃんと突き詰めていったらそこに誰かが存在してる、青春にこだわってるのかもしれないですね。

何もできなかったですけど、何もできなかったって誰もがいうやろうけど、「何もできなかった日々」というのは、「何もなかった」というわけではないと思うので、それは書くモチベーションになってたかもしれないですね。

――又吉さんの青春時代はどんな感じだったんでしょうか。

20歳くらいの頃は、上京してきて、環境に慣れてなくて、実力が伴ってないのにテレビのレギュラーが決まって、何もできなくて悔しい思いをした……そういう日々です。

20代の前半は楽しくなかったですね。全体的にはしんどさが漂っていた。20代後半は、自分の表現の場が与えられるようになってきて、楽しくなってきた。自由度が高くて。

本格的にテレビに出始めたのは30歳になってからなんで、それまでの期間は、劇場にいるぶんは、同じような先輩もいるし同期も後輩もいたんで、あまり気にならないんですけど、地元の友達と会うと、俺らだけ何にも生活が変わってないよなという焦りがありましたよね。

――この小説を「絶望の小説」と捉えるか、「希望の小説」と捉えるかは、読者に委ねられています。又吉さんとしては、どういう気持ちを込めて書かれたのか、お聞きしたいです。

「絶望」という言い方が正しいのかわからないですけど…。

しんどいこととか、思い通りにならないこととか、事態が良くない方向に進んでいくこととか、当たり前のことのように、人間が生きているすべての国にあるのは当然で、そこだけを感じ取られるとわりと絶望的な見方になるんですけど、その前提をちゃんと書こうと思ってて。日々そういう感覚を持っておきたい。

一方で「楽しいやん」という感覚もなくて、しんどいけど、このなかでなんか楽しいこと見つけようとかなんかできることあるんじゃないかという気持ちは常に持っていて、もしかしたら小説もそうなのかなと思います。

(文:神田桂一)

又吉直樹の「最近好きな小説」3選

西加奈子『i』

西加奈子『i』

i(アイ)』(西加奈子)…ワイルド曽田アイの過去・現在・未来が描かれる長編小説。

『ギリシャ悲劇全集』…「『劇場』にもギリシャ悲劇のシーンが出て来るんですけどそれの参考に買いました。これ現代に例えるとどんなことなんだろう、と想像して」(又吉)

罪と罰』(ドストエフスキー)…仕事でロシアのサンクトペテルブルクに行ったんですけど、ミーハーなんで、『罪と罰』の聖地巡りみたいなことをしたんです。

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アーティスト情報

又吉直樹

生年月日1980年6月2日(38歳)
星座ふたご座
出生地大阪府寝屋川市

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