米津玄師 「本当に、いろんな人に対して感謝したい」重厚なテーマにリアルな体験を織り込み、初のドラマ主題歌で、米津玄師が目指したものとは?【インタビュー】

米津玄師

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初の日本武道館2DAYSの大成功という華々しいニュースから始まった、2018年の米津玄師。畳みかけるように届けられたニューシングル「Lemon」は、TBS金曜ドラマ『アンナチュラル』主題歌として、リリース前から話題騒然の注目曲。かつてないほどリアルな出来事を歌詞に織り込んだ、その制作過程についてじっくりと話を聞いた。

─これまで以上にストレートな言葉使いと、ウェットで抒情的なメロディが、とても新鮮でした。

「ドラマの主題歌は初めてなので…。これって、いつまで自分で言うのかわからないですけど、インターネットから出てきた人間なので、テレビで何かをやるということは、自分としても新たな挑戦であって。たぶん、層が全然違うんですよ」

─違いますね。

「なので、テレビドラマが好きな人と、インターネットから出てきた自分との、中間にあるものを探していく作業でした。『アンナチュラル』というドラマは解剖医が主人公で、人の死を扱う物語なので、自分なりに人が死ぬということは一体どういうことなんだろう? と考えて、ワンコーラスくらいできあがった時に…うちのじいちゃんが死んだんですよ」

─えっ。そんなことが。

「死というものは常に身近でとらえていたつもりではあったんだけど、それが実体となって現れてきて、もう一回考え直さなきゃいけなくなったんですね。ドラマの意向を汲みながら、死と向き合い傷ついた人を癒すようなニュアンスを考えていたものが、そこで一回ゼロになってしまった。それで最終的にできあがってみれば、“あなたがいなくなって悲しいです”ということを、4分ぐらいかけてずっと言うだけの曲になってしまった。それをドラマサイドの人たちも喜んでくれたので、結果的に良かったと思うんですけど」

─想像よりも、現実のほうがはるかに重かった、ということですか。

「そうですね…。そういうのって、頭ではわかっているつもりでも、自分の頭蓋骨を自分で見たことがないのと一緒で、毎日を生きていくとどうしても希薄になってしまうところがあって。それが実際、じいちゃんの死という形となって現れてきたので。ダイレクトに受け入れざるをえなかったんですね」

─はい。

「そういうことがありつつも、ドラマと自分との接点ということを考えた側面は絶対にあって、完全に俺とじいちゃんの曲ではないんですけど。“#アンナチュラル”というハッシュタグを見ると、本当にいろんな反応があって、当たり前ですけど、各々に感じることは違うなあと思いましたね」

─タイトルになった「Lemon」は、歌詞に出てきますけど、これはどこから?

「最初、仮タイトルを『Memento』(memento moriは、ラテン語で“死を想え”)に決めて、作り始めて、ワンコーラスできて、じいちゃんが死んで…。これは『Memento』じゃないなと思ったんですね。人の死を思う曲だから『Memento』って安直な気がして。もっと普遍的なワードで、身近で、ポップなものをタイトルにしたいなと思った時に、歌詞に“胸に残り離れない/苦いレモンの匂い”という、これは本当は仮のつもりで書いた歌詞で、自分でもなんでレモンなのかわからないんですけど、なぜか“レモンっていいな”と思いながら作っていて。最後の最後の歌詞で、“切り分けた果実の片方の様に/今でもあなたはわたしの光”という言葉が、レコーディング前日の明け方ぐらいにバッと浮かんできて、それでようやく自分の中でしっくり来たんですよ」

─ああ。なるほど。

「音楽を作っていて、自分が思いもしなかったようなことを、作り終わったあとに教えてもらうような、そういう感覚が起こることがたまにあって。今回も、それがあったと思います。“レモンって何なんだろう?”って、ずっと思いながら作っていたものが、最後の最後で納得できたというか」

─非常に鮮烈なイメージが伝わります。

「果物は人間と似ているというイメージが昔からあって。だから果物って、俺の曲にたびたび出てくるんですけど。皮があって、肉があって、種があるという構造とか、人間に似ているものだというイメージがあるんですね。レモンって、文学の題材にもなるじゃないですか」

─梶井基次郎ですね。

「あと、『智恵子抄』(高村光太郎・著)のなかの『レモン哀歌』とか。そういうイメージが自分の中にあって、たぶんそこから来たということもあると思うんですけど」

─曲の話をすると、静かなピアノバラードという風に始まって、でもトラックはHIP HOP的で、サビでは激しいバンドサウンドになって、ストリングスも入ってくる。非常にドラマティックな展開になってます。

「バラードにしようとは思ってたんですけど、ただのバラードでは面白くないし、ただひたすらに暗いものにしたくはなかったんですよ。実際ドラマにはコミカルなシーンもあって、ものすごくテンポよく物語が進んでいくので。自分の中では踊るような感じというか、スキップするような感覚で、悲しみの言葉を乗せるという、ハイブリッドな感じを出したくて。だからHIP HOPのトラックを参考にしました」

─メロディの、どこか懐かしいような、あえて言うなら歌謡曲的な湿り気のある感じも、今までとは違う気がします。

「それこそ、昭和のポップソングを作りたかったんですよ。今回の曲とは直接関係ないですけど、中島みゆきさん、松任谷由実さん、吉田拓郎さんの曲がマイブームで、ずっと聴いていた時期があって。そういう曲を1曲作れるかな? と思って、作り始めた曲なので。そのへんのニュアンスが色濃く反映してるなって、自分でも思います」

─今までとは違う層に届く曲だと思います。

「ドラマが本当にすばらしいんですよね。時の運もあると思うんですけど、本当にいろんな人に対して感謝しないといけないという気がします」

─c/wはどうですか。「クランベリーとパンケーキ」は、アダルトでグルーヴィーな曲調に乗せて、男くさくてダルい感じの歌い方がかっこいい。

「俺はお酒を飲むのが好きなんですよ。毎晩お酒を飲んで、朝まで遊んで、帰って、ダルいなーみたいな。その時の気だるい感じを曲にしようかなと(笑)。実際レコーディングも、朝まで飲んで、次の日にレコーディングして」

─わざわざ、そんなことを(笑)。

「そっちのほうが、心に届くと思ったので。だから、手を抜いたわけじゃないけど、ドラマの主題歌を作るような責任がないので(笑)。気楽に作る感じで、肩の力を抜いて、自分の私生活にすごく密接した曲になりましたね」

─もう1曲、「Paper Flower」は、従来の米津節というか、エレクトロニカっぽい繊細な曲。

「よく作る感じの曲ではあります。徐々に上がっていくような曲にしようとか、ハットの音を使わない曲にしようとか――結局使っちゃったんですけど――サビでベースを歪ませて迫力を出すとか。細かい手法から入った曲ですね」

─美しい曲ですけど、歌詞にはダークなイメージもある。

「自分は美しい音楽を作っているという自負がありますけど、たまに、誰しもあることだと思うんですけど、“こんなものが一体何になる?”と思うこともあって。自分自身に対する皮肉、というニュアンスはありますね」

─新しい挑戦がたくさん詰まったシングルになりましたね。米津さんの活動をずっと見てきてすごいなと思うのは、毎回新しい挑戦があること。今年の10月に、初の幕張メッセ公演も決まりましたね。すごく刺激的で、楽しみです。

「新しいことが出て来なくなったら、ヤバいですね。それっていつか来るとは思うんですけど、今はそこまで考えてないです。とりあえず今は、やれることをやるだけです」(取材・文:宮本英夫)

米津玄師 リリース情報

Lemon

NEW SINGLE
2018年3月31日レンタル開始
2018年3月14日発売

レモン盤【初回限定】(CD+レターセット):SRCL-9745~6 2,000円(税抜)
映像盤【初回限定】(CD+DVD):SRCL-9747~8 1,900円(税抜)
通常盤(CD):SRCL-9749 1,200円(税抜)
全形態共通・初回封入
米津玄師 2018 LIVE チケット最速先行抽選応募券
応募期間:3月13日(火)12:00~3月18日(日)23:59

 

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米津玄師 オフィシャルサイト

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アーティスト情報

米津玄師

生年月日1991年3月10日(28歳)
星座うお座
出生地徳島県

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