【インタビュー】町山智浩氏「『THIS IS US/ディス・イズ・アス』の物語は、計画的にどこまでも広がっていく凄さがある」

1日、都内でのイベントにて本作の魅力を紹介してくれた町山氏

1日、都内でのイベントにて本作の魅力を紹介してくれた町山氏

人生はサプライズの連続、これはあなたの物語――全米で大ヒットしたヒューマンドラマ『THIS IS US/ディス・イズ・アス』が、2017年10月に日本上陸。NHK総合にて地上波放送・同時期に先行していたデジタル配信に続き、2018年2月にはいよいよパッケージのレンタル・販売も始まり、むしろこれからまた盛り上がりを見せようとしているこのドラマがなぜ面白いのか、現在アメリカ在住の映画評論家・町山智浩氏に聞いた。

※以下、一部ネタバレを含みます

物語の主軸となるのはジャック&レベッカ夫妻と、誕生日が同じ36歳の男女3人(自分が演じる役に嫌気がさしているイケメン俳優・ケヴィン、脱肥満を目標に努力する女性・ケイト、幸せな家庭を築いているエリートビジネスマン・ランダル)。物語の進行とともに彼らの人生がクロスオーバーしていくが、それは時に時代も飛び越える。

ジャック&レベッカ夫妻/(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

ジャック&レベッカ夫妻/(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

「『THIS IS US/ディス・イズ・アス』では相当変なことをやっていますね。というのは、まず物語のタイムラインどおりに話を作って撮影し、編集で場面をシャッフルしているんです。先に全体が決まってないと撮影プランが立てられないですよね。毎回順撮りが出来ないわけですから。実はこれはアメリカのドラマでは基本的にあまりないやり方なんです。アメリカのドラマの多くは全体の流れを最初に決めないんです。だから、途中で主人公を変えるとか、ぜんぜん違う話にしちゃったり…といったことが起きるんです。例えば『ツイン・ピークス』がそうでしたけど、途中でローラ・パーマー殺人事件を解決してしまって、途中から違う話にしてしまったので人気が失速しましたからね。『ビバリーヒルズ青春白書』でも最初は双子の兄弟の話だったのに、途中からその友人が主人公になっちゃってますから。こういうのを平気でやっている中で、『THIS IS US』は全体像を組み立ててからやっているので、珍しいんですよ」

(左から)ランダル、ケイト、ケヴィンの3兄弟//(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

もともと一つの流れのものを複雜に組み直すことで、視聴者が発見、もしくは期待する以上のものを毎話毎話ぶつけられる特殊な構成が特徴的だ。

「一番アメリカで受けた理由は、毎回毎回サプライズがあるということですね。『この人はこういう人だ』と思っていると『実は全然違う人だった』と毎回驚かせてきますし、それが行き当たりばったりでなく、最初からある程度組まれた中で展開されていきますから。持っているネタを途中で急にポッと出してくるので、観てる側は『えっ??』となるんです。さて、、『次は何を見せてくれるのか』と、観客を引っ張りました。それともう一つは、毎回必ず泣き要素が入っていて『ここで泣かせる!』という場面がほとんど毎回ある。それも凄いことですよね」

(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

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毎度の驚き――これこそが長くなるドラマでもどっぷり付き合える秘訣だが、町山さんの映画評ではおなじみとなっている肉体描写についても言及せざるを得ない。

「ジャックはセクシーですごく人気がありますね。ケヴィンも当然そうだし、ランダルも脱ぐとムキムキなんですよ(笑)。セクシー3人組が毎回見られますから、それも結構大きかったんですよ(笑)全然意味ないのに脱いでいたり、ケヴィンなんか出演しているTVコメディでは、いつも上半身裸で筋肉でパンパンの胸から赤ちゃんにおっぱいをやるというわけわからん役だし(笑)。でもそれは結構大事な要素だと思いますよ。やっぱり、広い層にうけているのは、老若男女、白人黒人それぞれの視聴者層へのサービスが盛り込まれているからですよね」

(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

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世間の反応を伺いながら突っ走るそれらとは一線を画す本作は、2017年1月早々(本国でまだ放送中のタイミング)にシーズン2とシーズン3(各18話)の制作が発表されていた。これはやはり用意周到に練られた脚本があってこそ出来ることだと考えられるが…?

「シーズン1で残される大きな謎について、最初きっちり想定していなかったと思いますね。逆にその部分だけ空白にしておいて。例えば『ツイン・ピークス』のローラ・パーマーの死や、『LOST』における飛行機不時着事件の真相の真ん中のところだけ空けておいて、その周りの全部を組み立ててくような形で。“何かがあった”ということは分かるんですが“何があったのかはわからない”。それで視聴者を引っ張りましたよね。アメリカでは視聴者がこの空白をそれぞれに想像して盛り上がりました」

(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

地図にある意図的な空白。それは「(人気が出たから)無理やり伸ばしてく形ではなくて、まさに『THIS IS US/ディス・イズ・アス』のマップを広げて深めていくやり方」なのだとか。

「物語は時間軸ではなく、誕生日や、バレンタイン、クリスマスなどのイベントで区切り、それぞれの日に登場人物が36年間に体験したことをフラッシュバックさせたのがシーズン1でした。シーズン2ではさらに深く掘って実は何が起こっていたか、事実の裏側を見せていきます。さらに現在の時間軸は進行中なので、そちらが展開していきます。また、主人公たちの周辺の人物、ランダルを拾った消防士や、産科のお医者さんの過去にも広がっていきます。この構成は、ドラマの中でケヴィンが自分たちの人生をジャクソン・ポロック風の地図に描いてを説明します。家族がいて友達がいて…過去も現在も未来も全部繋がっていると。それが私たち(『THIS IS US』)なんだって。だからいくらでも広げられますよね(笑)。人間関係でも時間軸の深さでも広げられる。心理的にも実はこう思っていたから…と掘り下げられる。いくらでも掘れるんで(笑)。たとえばジャックのお父さんはどんな人間だったのか、とか。それは今までのドラマみたいに無理やりな展開で引き延ばすく形ではなくて、まさに『THIS IS US/ディス・イズ・アス』のマップを広げていく、深めていく。だから面白いんですよ」

(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

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人物像や描かれる内容において、だいたいの日本人は本国の人たちほど意識せず物語を楽しめると思うが、それでも知っておくとよりタメになることもある。

マンディ・ムーアが演じているレベッカの家は、お父さんが亭主関白で威張っていて、お母さんに『飯!』とか言っているような、昔ながらの男尊女卑家庭で。昔は結構、アメリカでもそうだったんですよ。今でも田舎の方に行くとそうなんですけどね。レベッカはそこから脱出して、そういう昔ながらではない家庭を作ろうとしている。でも、虐待されて耐えてきたレベッカのお母さんは、娘にもそういう女になれと圧力をかけてくる。毒親ですね。チラッとしか描かれませんが、ものすごく重要な要素になっていて、レベッカが最初、親になりたがらなかった理由でもある。逆にランダルの実の父親ウィリアムは貧しく、麻薬に溺れたこともあったけど、実は希望と才能に満ちた青年だった。彼が青年期に60年代から70年代にかけてブラック・パワーの時代で黒人文化と政治運動の最盛期だったことと重ねられています。そんな風にアメリカ各地の様々な背景を持つ人々の歴史を内包し、『THIS IS US』の“US”はすべてのアメリカ人でもあるんです」

(C)2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

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本作が「日本でヒットすると思えるならどんなところ?」と問いかけると「(日本語版でケヴィンの吹替えを担当した)高橋一生の声! それはそうでしょう(笑)」と笑顔を見せる町山さん。全世代包囲型ドラマだということを「僕自身も36歳で子供を作っているので、ジャックに感情移入できますし、現在36歳の人達はケヴィンたちに、もっと上の人はウィリアムにとか…誰でも自分に似たキャラクターを見つけられると思いますよ」と改めて語ってくれた。

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海外TVドラマ『THIS IS US/ディス・イズ・アス』
DVDレンタル&発売中!

THIS IS US/ディス・イズ・アス 36歳、これから

THIS IS US/ディス・イズ・アス 36歳、これから

出演者 マイロ・ヴィンティミリア  マンディ ムーア  スターリング・K・ブラウン  クリッシー・メッツ  ジャスティン・ハートリー  スーザン・ケレチ・ワトソン  クリス・サリヴァン  ロン・セファス・ジョーンズ
監督 グレン・フィカーラ  ジョン・レクア  ケン・オリン  ジョージ・ティルマン・Jr  グレイグ・ジスク  サイラス・ハワード  サラ・ピア・アンダーソン  ユタ・ブリースウィッツ  ヘレン・ハント  ティモシー・バスフィールド  クリス・コッチ  ウェンディ・スタンツラー
製作総指揮 ダン・フォーゲルマン  ジョン・レクア  グレン・フィカーラ  ケン・オリン  チャーリー・ゴーゴラック  ジェス・ローゼンタール
脚本 ダン・フォーゲルマン  ドナルド・トッド  ジョー・ローソン  ベッカ・ブランステッター  K・J・スタインバーグ  アイザック・アプテイカー  エリザベス・バーガー  ヴェラ・ハーバート  オーリン・スクワイア  ローラ・ケナー  ケイ・オイェガン
概要 イケメン俳優に肥満女性、エリートビジネスマンという、状況も性格も異なるアラフォー男女3人が、大切なものを失い、問題に直面しながらも人生の素晴らしさを体現する。マイロ・ヴィンティミリア主演の感動ドラマ。

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