【連載】LIFE相場正一郎さんと12カ月の道具たち:7月は手作りボードで、サーフィンと仕事の波に乗る

2003年、代々木八幡商店街にレストラン「LIFE」はオープンした。訪れた人を心地よく包み込むような空間とほっとさせる料理だけでなく、カルチャーやライフスタイルの発信地としても多くのお客さんから愛されている。

そんな「LIFE」の生みの親であるオーナーシェフ・相場正一郎さんは、自他ともに認める“道具好き”。食はさることながら、山登り、サーフィン、インテリア、カメラなど、さまざまなことに造形が深い相場さんは、一体どんな道具たちと寄り添いながら一年を暮らしているのか。その月ごとの欠かせない愛用の道具をひとつずつピックアップして、相場さんと道具たちのストーリーを紡いでいく。

第4回目となる7月は、長く続けている趣味のひとつであるサーフィンの相棒、サーフボードのお話。仕事の合間を縫って訪れるという湘南の海で話を伺った。

知らないからこそ、海へ憧れていた

――サーフィンを始めたきっかけは何でしょうか?

(海のない)栃木県出身ということもあってか、小さい頃の海は遠い存在でした。夏休みに遊びに行くのは山が多くて、海に行くことはほとんどなく、憧れの存在でした。実際に海に足を運ぶようになったのは東京で店をはじめて1年くらいたってから。時間や経済的に余裕ができたのがきっかけでしょうか。空いた時間に海に通って。サーフィンは誰かに薦められたわけではなく、自発的にはじめましたね。

――幼い頃からなじみのある山ではなく、海へ通うようになったのですね。

もちろん今でも山も好きで休日などを利用して行くのですが、仕事場のある東京は山よりも海のほうが近いんですよ。千葉、茨城、湘南など気軽に遊びに行ける場所がある。東京でアウトドアを楽しむには海の方が手軽なんです。

コーヒーを淹れていくスタンレーの水筒と、SONYの水中カメラ

平日の午後勤務の日や半休のときに2~3時間、ぱっと行ってぱっと帰れるのは魅力ですね。山だとなかなかそうはいかない。逆にサーフィンを休日丸一日使ってやることはあまりないです。

――スポーツのような感覚でしょうか?

もともと絶叫マシンなどのアトラクションが好きなので、はじめたらのめり込みましたね。最初はヴィンテージのボードを購入したのですが、長い上に重くて、持ち運ぶのが大変。2枚目は板を削ってくれる友人に作ってもらい、かれこれ直しながら十数年使っています。

相場さんが2枚目に購入したというロングボード。

相場さんが2枚目に購入したというロングボード。

本当に好きなことをしていると、自然と仲間が集まってくる

――どのタイミングでボードを新しくしていますか?

しょっちゅう作ることはないのですが、板を変えたときにその時点の自分のレベルがわかる気がします。

このグレーのボードは4枚目に作ったものなのですが、7フィートのファンボードで手軽に楽しめるところが気に入っています。僕がサーフィンを始めたのはわりと年をとってからなので、ゆったりとしたロングボードから始めたのですが、新しい板を作るごとに少しずつ短くなってきました。

――板を削ってくれるシェイパーさんとは、どのようにして知り合うのですか?

2枚目の板を一緒に作ったシェイパーさんは、サーファーのお客さんに紹介いただいた方なんです。そのお客さんは、LIFEでサーファーが好きそうな音楽を流していたら声をかけてもらいました。海でも山でも、アウトドア全般に言えることですが、本当に好きな人って、その人の出す雰囲気でわかるんですよ。

――好きなことをしていると同類は自然と集まってくるのですね。 感度の高いお客さんが多いこともLIFEの魅力のひとつな気がします。

弟(『LIFE Sea』 料理長=相場義文氏)の奥さんもサーフィン好きですしね(笑)。『LIFE Sea』を始める前――それこそ『LIFE son』より前に鎌倉に店を出そうと思ったことがあって、本気で鎌倉移住も考えましたね。

――移住しなかった理由は?

僕の奥さんがあまり海が好きではないんですよ(笑)。サーフィンがどんなに好きでも、あくまで趣味なので……自分が嬉しいだけではだめなんです。

仕事があるから遊びが楽しい

――家族を大切にされる相場さんらしいですね。

仕事と家族と趣味のバランスがきちんととれていること、それが自分にとって何よりの幸せです。ただ漠然と遊んでも楽しくない。基本、僕は常に仕事が中心ですから。仕事が忙しくて、忙しくて、その中でがんばって時間を作ってサーフィンに行く……。その達成感がないとつまらなく感じてしまう。

人は皆そうだと思うのですが、「しょっぱい」「甘い」両方必要。それに好きなことが増えてきて、年々仕事が早くなっていますね。1時間時間をつくるためにはどうやったら効率よく仕事が進むか考える(笑)。本当に好きなことなら、自然とエネルギーがわいてきますから。

――常にアクティブに動いてらっしゃいますが、元気の秘訣は?

毎日30分~1時間、マラソンをして体力を維持しています。アントニオ猪木ではないですが「元気があれば何でもできる」と思っているので。ちなみに僕は遊ぶときには明日の仕事をまったく気にせず、つっこんで遊びますね(笑)。

――一見タイトなスケジュールでも好きなことを思い切りやったあとなら、仕事もうまく流れそうですね!

サーフィンもカメラもですが、自分の中でのブームに逆らわず、構えず、格好つけず……。仕事とのバランスを考えながら長く付き合っていきたいですね。

(インタビュー・文:山本加奈子、撮影:MASA(PHOEBE))

「LIFE」オーナーシェフ
相場 正一郎

イタリアのトスカーナ地方で料理修行をした後、2003年に代々木公園にカジュアルイタリアン「LIFE」をオープン。現在、「LIFE son」「LIFE Sea」など全国に5店舗を運営する。店舗では、イベントの開催、オリジナルプロダクトの制作、地元の情報を集積したフリーペーパー『PARK LIFE』の発行など、カルチャーの発信地としても多くのファンを持つ。最近、渋谷の東急本店に抜ける長い一本道「奥渋谷」に話題の店が続々と増えているが、その走りとなったパイオニア的な店が「LIFE」と言える。

著書は『世界でいちばん居心地のいい店のつくり方』(筑摩書房)『LIFEのかんたんイタリアン』(マイナビ)『LIFE OF THE MIND』(ネコ・パブリッシング)など。

公式サイト  Instagram

■他の月の「【連載】LIFE相場正一郎さんと12カ月の道具たち」を読む

4月はイタリア時代からの相棒・カメラと旅立つ
5月は思い出のインテリアを囲んで家族と寄り添う
6月の朝はコーヒーと読書ではじめる
8月は愛車ディフェンダーでドライブ。山へ海へ
9月はグリーンを飾ってお客さんをもてなす
10月はとっておきの調理道具で料理を作る
11月の休日は男のアウトドアを楽しむ
12月はお気に入りの食器&カトラリーで食卓を彩る
1月は憧れの人ゆかりの腕時計で時を刻む
2月はメガネを使い分けて日々のおしゃれを楽しむ
3月は愛用の道具を鞄に詰めて街へ繰り出す

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