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説明するのはとても難しいけど、新しいSFの形、観たことのない映画。神木隆之介×門脇麦『太陽』【連載コラム Vol.5】
映画ライター・新谷里映が心動かされた、本当に観て欲しい映画たちを連載コラムでお届け。
第5回目は劇作家・演出家の前川知大が主宰する劇団イキウメの同名舞台の映画化『太陽』。SF映画のジャンルで久々に「こんなの観たことない!」という衝撃を受けたという本作の何が衝撃なのか、それは…

(C)2015「太陽」製作委員会
SF映画の面白さは、もしかしたらこんな未来がやってくるのかもしれない、こんな世界がどこかにあるのかもしれない……と、驚かせてくれることだと思っていました。
代表的なSF映画で言えば、宇宙への興味をかき立ててくれた『2001年宇宙の旅』『スター・ウォーズ』、未来への期待と恐怖を疑似体験させてくれた『ブレードランナー』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ターミネーター』、宇宙人はいるのかもしれないと本気で思った『E.T.』『エイリアン』、映像的にも設定的にも新しいと感じた『マトリックス』……いずれも説明不要のSF映画ですが、それらを初めて観たときの驚きは相当大きかった、本当に大きかった。私の場合は、映画をあれこれ観始めた、10~20代に観たそれらの名作が基準になっています。ゆえに、その後もSF映画は観ているものの、映像の美しさやダイナミックさに驚くことはあっても、映画の根底にある世界感そのものに“もの凄く”驚くことはなかなかないわけです。
たとえば、ここ数年でいうと『ゼロ・グラビティ』はまるで宇宙にいるような感覚を、『インセプション』は意識の世界の面白さを、『オデッセイ』は火星に取り残されたら……というサバイバルを体験させてくれました。けれど、やっぱり先に挙げた作品で感じたような“初めて”の驚きではなかった。人はあらゆるものに“慣れる”生き物です。それはとても素晴らしい才能ですが、映画を観れば観るほど美しい映像に慣れていく、斬新なストーリーに慣れていく、過激な描写に慣れていく──捉え方によっては悲しくもある。それでも観続けることで、いつかまた“初めて”の驚きを得られるはず! と期待して、この映画は? あの映画は? とあれこれ観たくなる。

(C)2015「太陽」製作委員会
そして! ついに! SF映画のジャンルで久々に「こんなの観たことない!」という衝撃を受けました! 入江悠監督、神木隆之介&門脇麦ダブル主演の『太陽』。劇作家・演出家の前川知大が主宰する劇団イキウメの同名舞台の映画化です。
物語の舞台は21世紀初頭。バイオテロによってウイルスが蔓延した世界に生きる2つの人類のお話。太陽の下では生きられないけれど、若く健康な肉体と高い知能を持つ進化した人類【ノクス】。太陽の下で自由を謳歌しつつも暮らしは貧しいままの旧人類【キュリオ】。バイオテロはよくある設定ですし、夜にしか生きられない設定もヴァンパイアものではお決まりです。ですが、『太陽』はそれらをさらに昇華させた新しいSFの形、観たことのない映画を作り出している。
何が新しいのか──。まず、日本映画でSF映画は珍しいことがひとつ。しかも、莫大な製作費をかけているハリウッド映画と対抗するような作品ではなく、ノクスとキュリオそれぞれの世界を日本の風景で描いていることです。そしてSFのなかに青春ドラマがあり、ラブストーリーがあり、家族の物語があり、さまざまな要素が組み合わさっている。

(C)2015「太陽」製作委員会
ただ、入江監督をはじめ主演の2人もコメントしていましたが、どんな映画なのか、何が面白いのか説明するのはとても難しい作品なんです。
もしも映画『太陽』の世界に自分が生きるとしたら、ノクスとして生きたいか、それともキュリオとして生きたいか、どちらを選ぶか? という選択にはじまり、さらには生きることはどういうことなのか? ものすごく大きな問いを投げかけられる。ふつう、何かしら答えを提示してくれない映画は消化不良を感じることもありますが、『太陽』に限っては明確な答えはいい意味で出てこない。出てこないけれど、その答えを探したくなる。自分のなかに抱えたまま生きたいと思う。そんな“初めて”の感覚を与えてくれた映画です。
こうしてふり返りながら書いていても、やっぱり答えは見つからなくて……。でも、それでいいと思える。こんなにも余韻が続くSF映画は初めてかもしれません。
(文・新谷里映)

フリーライター、映画ライター、コラムニスト
新谷里映
情報誌、ファッション誌、音楽誌の編集部に所属、様々なジャンルの企画&編集に携わり、2005年3月、映画ライターとして独立。 独立後は、映画や音楽などのエンターテイメントを中心に雑誌やウェブにコラムやインタビューを寄稿中。
映画『太陽』
大ヒット上映中
出演:神木隆之介、門脇麦、古川雄輝、水田航生、村上淳、中村優子、高橋和也、森口瑤子、綾田俊樹、鶴見辰吾、古舘寛治
監督:入江悠
脚本:入江悠、前川知大
原作:前川知大 戯曲「太陽」(第63回読売文学賞戯曲 ・シナリオ賞受賞)
企画・製作:アミューズ、KADOKAWA
制作プロダクション:デジタル・フロンティア、アミューズ映像製作部
配給:KADOKAWA
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