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全く違うタイプの映画に見えた共通項―『サーミの血』『プラネタリウム』【連載コラムVol.32】

映画ライター・新谷里映が心動かされた、本当に観て欲しい映画たちを連載コラムでお届け。

第32回目は「女たちの生きる力を感じる映画だった」という『サーミの血』『プラネタリウム』の2本立て。意図しない時に垣間見える共通項は、なんとなく嬉しいもの!?


『サーミの血』/(c) 2016 NORDISK FILM PRODUCTION

『サーミの血』/(c) 2016 NORDISK FILM PRODUCTION

同じ時期に公開の『サーミの血』と『プラネタリウム』は全くタイプの違う映画だが、いくつか共通点があった。この2作のキーワードは、「姉妹」「運命に抗う」「1930年代」「女性監督」「女の人生」。

まずは『サーミの血』。タイトルのサーミとはサーミ人のこと。彼らは、北欧ラップランド地方──ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの北部とロシアのコラ半島でトナカイを飼い暮らしている先住民族で、1930年代、分離政策において他の人種よりも劣った民族として差別を受けていた。戦後、サーミの権利に対する政策改革が行われ、現在は是正されているが、サーミ人の多くが迫害のため自分たち民族のルーツを捨てスウェーデン人になった。

『サーミの血』/(c) 2016 NORDISK FILM PRODUCTION

『サーミの血』/(c) 2016 NORDISK FILM PRODUCTION

この映画の監督、アマンダ・シェーネルはスウェーデン人の母親とサーミ人の父親の元にスウェーデンで生まれたが、サーミ人の祖父母は自分たちのルーツを隠し語ることはなかったという。シェーネル監督は「自分の過去を捨てたサーミ人は、本当の人生を送ることが出来たのだろうか」そんな疑問を抱き、サーミ人の血を引く自分のルーツを映画にした。ただ、この映画『サーミの血』は、サーミという民族についての映画ではなく、家族や故郷を捨ててでも自由に生きようとしたサーミ人の少女エレ・マリャの成長物語だ。

十代の少年少女が、此処ではない何処かに憧れる、初めて恋をしてその気持ちが止められなくなる、もっと自由でありたいと願う──描かれるのは誰もが経験する感情だが、エレ・マリャが望む生活を手にするには、トナカイと暮らすラップランドの故郷を捨て、妹と離れ離れになり、親の援助もなくたった1人で生きていかなければならなかった。その決意と勇気、たくましさに感動する。それは、エレ・マリャを演じるレーネ=セリシア・スパルロクのナチュラルな演技と圧倒的な存在感によるところも大きい。彼女を含め、映画に登場するサーミ人役は全員本物のサーミ人が演じているのも監督のこだわりだ。

一方、ナタリー・ポートマンとリリー=ローズ・デップが姉妹を演じている『プラネタリウム』の舞台も1930年代、監督はフランスのソフィア・コッポラとも言えるレベッカ・ズロトヴスキ。映し出されるのはスピリチュアルな世界だ。

ナタリーとリリーの演じるバーロウ姉妹は、死者を呼び寄せる降霊術を披露する美人スピリチュアリストとして活躍していた。ショーを仕切る野心家の姉ローラ、好奇心旺盛で純粋な妹ケイト。ヨーロッパツアーでパリを訪れたときに、映画プロデューサーのコルベン(エマニュエル・サランジェ)と出会うことで姉妹の人生は大きく変化していく。姉妹の能力に魅せられたコルベンは、彼女たちの力で呼び寄せた霊をフィルムに収め、新しい映画を作ろうと試みる。

映画『プラネタリウム』/(C)Les Films Velvet – Les Films du Fleuve – France 3 Cinema – Kinology –

映画『プラネタリウム』/(C)Les Films Velvet – Les Films du Fleuve – France 3 Cinema – Kinology –

そして浮上する疑惑。姉妹は本当にスピリチュアルな能力があるのか、コルベンは彼女たちの力を借りて一体何を見たのか、観客は目に見えないものをどう信じるのか。

ズロトヴスキ監督が『プラネタリウム』を撮るきっかけとなったのは、19世紀後半に活躍していたアメリカ人スピリチュアリストのフォックス三姉妹だが、この映画も『サーミの血』と同様に、スピリチュアリストについて描いているのではなく、抗えない運命を背負った姉妹の話だ。姉はコルベンに女優としての才能を見いだされ、妹はコルベンのために霊を写すための危険な実験に協力する。1人の男によってすれ違っていく2人の行く先は……。

それぞれが見えているもの、見えていないもの──それは単にスピリチュアルなものだけではなく、どこまで相手を信じるかを含めた人の心であり、観客も、何を見るのか、何を感じるのかによって、この映画の見え方は異なる。ズロトヴスキ監督が、この映画をジャンル分けするとしたら「アドベンチャー映画ね」と答えたその意味は、映画を観終わったときに実感するだろう。

『サーミの血』と『プラネタリウム』の物語はぜんぜん違うけれど、1930年を舞台に、ヒロインたちが自分たちの力で生きようとする話。女たちの生きる力を感じる映画だった。

(文・新谷里映)

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新谷里映

フリーライター、映画ライター、コラムニスト
新谷里映

情報誌、ファッション誌、音楽誌の編集部に所属、様々なジャンルの企画&編集に携わり、2005年3月、映画ライターとして独立。 独立後は、映画や音楽などのエンターテイメントを中心に雑誌やウェブにコラムやインタビューを寄稿中。

【tumblr】新谷里映/Rie Shintani 

映画『サーミの血』
公開中

監督・脚本:アマンダ・シェーネル
音楽:クリスチャン・エイドネス・アナスン
出演:レーネ=セシリア・スパルロク、ミーア=エリーカ・スパルロク、マイ=ドリス・リンピ、ユリウス・フレイシャンデル、オッレ・サッリ、ハンナ・アルストロム
後援:スウェーデン大使館、ノルウェー王国大使館
配給・宣伝:アップリンク
2016年/スウェーデン、ノルウェー、デンマーク/108分/南サーミ語、スウェーデン語/原題:Sameblod/DCP/シネマスコ―プ


映画『プラネタリウム』
公開中

監督:レベッカ・ズロトヴスキ
脚本:レベッカ・ズロトヴスキ、ロバン・カンピヨ
出演:ナタリー・ポートマン、リリー=ローズ・デップ、エマニュエル・サランジェ、アミラ・カサール、ピエール・サルヴァドーリ、ルイ・ガレル、ダーヴィット・ベネント、ダミアン・シャペル
提供:ファントム・フィルム/クロックワークス
配給・宣伝:ファントム・フィルム
宣伝協力:ブリッジヘッド PG12
2016年/フランス・ベルギー映画/英語・フランス語/108分/シネマスコープ/カラー/字幕翻訳:松浦美奈
原題:Planetarium

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