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【レビュー】映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』―過去2作とは大違い! エンタメ全開な楽しいマイティ・ソー

(C)Marvel Studios 2017
正直に言うと、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)において、映画『マイティ・ソー』シリーズにはあまり好印象を抱いていなかった。作品の色合いや売りがどこかパッとしなかったし、そもそも見ていて「楽しい」と感じることが少なかったのだ。しかし、11月3日に日本公開を迎える最新作は、なかなか楽しませてくれる映画だった。『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』などで知られるタイカ・ワイティティ監督が、過去2作とは異なる陽気なタッチで作り上げた『マイティ・ソー バトルロイヤル』は、2時間弱にわたって見る者の感性を刺激し続ける、この秋必見のエンタメ超大作である。
物語は、雷神マイティ・ソー(クリス・ヘムズワース)が義理の弟ロキ(トム・ヒドルストン)とともに、ロキによってアスガルドから地球へ追放されていた父オーディン(アンソニー・ホプキンス)と再会することから幕を開ける。オーディンからラグナロク=終末が近づいていることを知らされたソーは、アスガルドへの復讐に燃える死の女神ヘラ(ケイト・ブランシェット)の襲来を受けた結果、ゴミと見世物の戦いで成り立つ奇妙な惑星サカールに飛ばされてしまう。ここでハルク(マーク・ラファロ)と予期せぬ再会を果たしたソーは、ヘラの復讐を阻止するため、新たな仲間とともにアスガルドへ戻ろうと奔走するのだが…。

(C)Marvel Studios 2017
過去の2作品がシリアスでダークな雰囲気だったこととは打って変わって、本作はコメディとしての色合いが非常に強い。それはオープニングから宣言されている。スピード感とソーらしいパワフルさを感じさせるアクションで彩られた序盤では、思わずクスッとくるような笑いも効果的に機能しており、これが観客を引き込むパワーを放っているのだ。そしてその笑いは、時折シリアスな空気が流れる劇中を通じて、作品の魅力として輝き続ける。コメディアンとしての顔も持つワイティティ監督は、過去2作では見られなかった笑いを軸とする演出・構成によって、ポジティブな意味でこれまでの『マイティ・ソー』との差別化を実現している。
ソーとヘラの邂逅後、物語はサカールで展開するのだが、この惑星も見る者をとことん楽しませてくれる。カラフルでポップ(少しサイケデリックでもある)なビジュアルはもちろん、暮らしている生物たちの奇妙な姿や、頂点に君臨するグランドマスターの奇想天外な言動など、画面には常に予想を超えた何かが映し出される。上質な物語を作るうえでは、筋とともに舞台にも趣向を凝らすことが必須だが、脚本を務めたエリック・ピアソンは、観客を飽きさせることがない上質な舞台設計を見せてくれた。

(C)Marvel Studios 2017
キャストの芝居も素晴らしい。これまでのソーは、熱くてまじめな男というイメージが強かったが、主演のクリスはコメディを意識したワイティティ監督の物語にしっかりとついていき、要所要所で愉快なギャグを成立させている。一方、どうしようもないが愛すべき弟ロキとして魅力を振りまいてきたトムも、これまで以上に三枚目な扱いを受けながら、持ち前のミステリアスかつ悪戯っぽい少年性を融合させ、随所で笑いを生んでいる。さらに、サカールの支配者であるグランド・マスター役のジェフ・ゴールドブラムや、ソーの仲間となるヴァルキリー役のテッサ・トンプソン、そしてハルクを再演したマークなどの実力派キャスト陣も、それぞれの役どころと親和した好演を見せ、SFアクション・コメディとしての物語に厚みを出している。
ただ、本作は単なるSFアクション・コメディではない。物語の中には、人間味あふれるキャラクターたちの葛藤も映し出されるのだ。ソーはアスガルドに隠された歴史を知ることでアイデンティティを見つめ直し、ロキもヘラの出現によって自分の振る舞いについて考え直すこととなる。一方のヴァルキリーは、ソーとの出会いによってそれまで逃げてきた悲劇的な過去と向き合う。少し言葉を話せるようになったハルクも含めて、各々が一物を抱えた変わり者たちは、それぞれのリベンジを果たすため、そしてヘラを止めるために「リベンジャーズ」を結成する。現実離れしているようで、実は共感できるキャラクターたちが、終盤にかけて手を取り合い、強敵に立ち向かっていく姿には、胸が熱くならずにいられない。

(C)Marvel Studios 2017
物語を通じて、既存の設定を活かした新事実の導入(特にムジョルニアの秘密には唸った)、終盤にかけての伏線の回収は巧みで、ヒーロー映画にありがちな“納得できない”という印象を与える描写・展開が生じていない点も実に素晴らしい。マーベル作品ではおなじみの、ポスト・クレジット・シーンには遊び心があふれており、最後までファンを楽しませようというクラフトマンシップには、頭が下がる思いだ。全体的な仕上がりは文句のつけようがなく、全米公開からの3日間で、約4億2700万ドル(日本時間で11月1日現在※Box Office Mojo調べ)というハイレベルな世界興行収入を記録していることも頷ける(製作費は約1億8000万ドル)。
唯一の不満を挙げれば、B級アクション映画のように聞こえる邦題だけだ。原題のラグナロクの方が響きもいいし、ストーリーに沿っているのに、なぜこんなタイトルを付けたのか?作品のタイトルは最も観客にアピールする要素の一つなのだから、もっとしっかりしたものを考えてほしいものだ。とはいえ、作品の質には何ら影響を及ぼしていないので安心してほしい。また、過去2作を見ていればより『マイティ・ソー』シリーズ、そしてMCUへの理解が深まるし、見ていないファンでも作品の方向性が掴めるよう設計されていることも付け加えておこう。オープニングからエンディングに至るまで「楽しさ」が詰め込まれた『マイティ・ソー バトルロイヤル』は、間違いなくシリーズの最高傑作だ。
(文:岸豊)
監督:タイカ・ワイティティ
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:クリス・ヘムズワース(ソー)、トム・ヒドルストン(ロキ)、ケイト・ブランシェット(ヘラ)、アンソニー・ホプキンス(オーディン)他
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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