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【2020年に見るべき1本】歴史を変えた映画『パラサイト 半地下の家族』が、心を鷲掴みにする3つの理由

『パラサイト 半地下の家族』(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED.

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED.

ハリウッドで英語圏作品を差し置いての最高賞。歴史が変わった日。

昨年のカンヌ国際映画祭で、審査員の満場一致でパルムドール(最高賞)に輝いた『パラサイト 半地下の家族』。その後、アカデミー賞でも話題を集めたのは記憶に新しい。というのも通常、英語圏以外の映画は外国語映画賞部門でノミネートされることが多いのだが、『パラサイト 半地下の家族』は監督賞、作品賞にもノミネート。それだけでも異例のことだが、今年2月9日(現地時間)に開催された授賞式では、外国語映画賞のみならず、監督賞、さらには作品賞も受賞するという快挙を達成。この映画の監督・脚本を手掛けたポン・ジュノ監督自身が一番驚いていた。

ここ数年、白人の受賞者が多いことを批判され、投票権を持つ会員を白人男性以外に広げてきたアカデミー賞。そういった背景ももちろんあるのだが、それにしても今回の受賞はエポックな出来事。この作品の何がそんなに人々を引きつけたのか。ひとつ大きな要因として挙げられるのは、やはり、この映画が多くの人にとって「他に観たことのない映画」だったからかもしれない。

ポン・ジュノ監督。パルムドール受賞時/(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED.

ポン・ジュノ監督。パルムドール受賞時/(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED.

その1:実は漫画家になりたかったポン・ジュノ監督が仕掛けたもの

主人公は日の当らない半地下住宅で暮らす4人家族のキム一家。誰も定職に就けず、生活に苦労している。といえば、到底笑えない状況なのだが、このヘンな面白さは何だろう……。この一家、とにかく仲がいい。そして、明るい。言うことが妙に面白いのだ。大学受験に失敗し続けている息子ギウのもとへ、あるお客さんがやってくる場面なんて、父→母→姉の一言がほとんど“3段オチ”だし、屋外で散布している消毒薬が家の中に入ってきて、部屋が真っ白になってしまうシーンなんて、画面的にちょっとコントのよう。笑えない状況を描いているはずなのに、根底にひたひたとコメディ要素が流れ続けているのだ。

以前、取材した際に「もともとは漫画家志望だった」と話してくれたポン・ジュノ監督。妙に明るいお父さんも、息子ギウのヘルメットのような髪型も、もっと言えば後半で登場するキョーレツな人物も……どこか登場するキャラクターのビジュアルが漫画的だし、ワンシーンワンシーン、そこかしこに笑いが散りばめられている。そんな不思議な面白さが冒頭から観客を引き込み、その後もずっと観客の気持ちを離さないのだ。

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED.

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED.

その2:ジャンルレスな展開×笑えるのに笑えない面白さ=未体験

それは、一家が豪邸に暮らす裕福なパク一家に寄生(=パラサイト)していく際の展開にも云えること。ギウが、パク一家の娘の家庭教師になったのをきっかけに、物語は予想のはるか斜め上を行く展開を見せていくのだが、それはギウが家庭教師の話を持ちかけられた時には、想像もしなかったこと。そんな「予想外の展開」は、このくだりのみならず、映画全体に及ぶ。映画の時間にして、そこから約1時間後、ある雨の夜にチャイムの音と共に一家に訪れる衝撃の展開なんて、きっと誰にも予想がつかないだろう。

そんな怒濤の展開の中、一家が次々に繰り出す行動はお世辞にも褒められたことではない……というより、明らかにいけないことなのだが、先にも触れたとおり、映画のあちこちに絶妙な笑いが散りばめられているので、観ている私たちとしては「これは……笑っていいの?」というギリギリのボーダーラインを行く独特の感じを味わうことになる。笑いとも怖さともつかない、なんともいえない感情を抱え、一体何を観ているのか、どこへ連れて行かれるのか、まったく読めない緊張感を伴いながら、先へ先へと加速度的に引き込まれていくこの感じ。世界中の多くの観客にとって「これは初めての感覚」だったのではないだろうか。 

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED.

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED.

そのボーダーを行くジャンルレスな感じこそ、この映画の真骨頂なのかもしれない。私たちの日常でも、ひどく悲しい時に、お腹が鳴って思わず笑ってしまったり、悲劇と喜劇が混在するのが人間という生き物。相反する感情がないまぜになっているからこそ、よりリアリティが感じられ、深く感情を揺さぶられる。ひたひたと通底する笑いがあるからこそ、この家族の置かれた状況がより深く観客の心に刺さる。後半、予告編にも登場するネイティブ・アメリカンの格好をしたお父さんのなんともいえない滑稽さと哀しさ。笑えるのに、怖い。笑えるのに、哀しい……。相反する感情のすれすれのところが、この映画ではずっと描かれ、緊張感を保ちながら、私たちの感情を刺激してくる。

その3:深刻な社会問題を芯で捉えつつ、それを感じさせないテクニック

映画を観た時の楽しみのために多くは書かないが、映画のひとつのキーになるのが「雨」と「匂い」。豪雨のシーンでは、『スノーピアサー』('13)や『オクジャ/okja』('17)でも描かれた「格差社会の貧富の差」という世界中でより深刻になりつつあるテーマが、映画ならではの迫力で訴えかけてくる。詳しくは触れないが、一家の娘ギジョンがトイレにいる場面なんて、状況はヒサンなのに、彼女の仕草とビジュアルがあまりに映画的で心をつかまれる。生活に苦しむ人たちを真正面から描かれたら、映画を観ているこちらも辛いが、ポン・ジュノ監督は笑いと映像の力で、その辛さを包み込み、かえって家族の置かれた状況を観客の感覚の深いところで体感させる。重要なのは、この映画がキム一家をかわいそうに描いていないこと。そして、パク一家のことも悪者にはしていないことだろう。そこに監督が込めた思いとは……考えなくても、映画を観終わる頃には、すでに私たちの五感が知っている。

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED.

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED.

今までも、これからもポン・ジュノは変わらない

これまでのどの受賞作とも似ていない『パラサイト』がアカデミー会員の多くにとって「観たことのない映画」だったことは想像にかたくない。しかしながら、監督自身も受賞後のインタビューで語っていたのが「これまでも僕はこういう映画を撮ってきた。知られるまでに20年掛かった」ということ。多くの人にとって「観たことのない映画」は、監督が本当に撮りたいものを撮り上げた、まごうことなきポン・ジュノ映画なのだ。『パラサイト』に引き込まれた後は、『母なる証明』('09)の「誰も観たことがない」冒頭のダンス・シーンで度肝を抜かれてみてはいかがだろう。

2000年、日本でも人気の女優ペ・ドゥナのコメディ演技がかわいい監督デビュー作『ほえる犬は嚙まない』で注目され、続く2003年の傑作『殺人の追憶』で観るものを大いにうならせたポン・ジュノ監督。アメリカでの映画制作も経験し、満を持したところで撮り上げたのが、今回の『パラサイト』だったのではないだろうか。

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED.

(C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED.

一体何を観ているんだろう、どこへ連れて行かれるんだろう……この映画の予測不能かつジャンルレスな独特の感覚は、まさしく「観たことがない」映画にふさわしい。が、実はこれまでも従来のジャンルに収まらない映画作りをしてきたポン・ジュノ監督。もはやジャンルレス、ひるがえって云えば、あらゆるジャンルの醍醐味を絶妙にミックスしたような本作は、観客を笑わせながら、観終わる頃には、笑えないものをしっかりと私たちの中に植え付けている。監督自身、気さくな人柄だが、映画も一見すると気さく。笑っているうちに、とんでもないところに連れて行かれるので要注意だ。

(文:多賀谷浩子)


『パラサイト 半地下の家族』
2020年7月3日(金)、店頭レンタル&動画配信開始/2020年7月22日、Blu-ray&DVD発売

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スノーピアサー

スノーピアサー

出演者 クリス・エヴァンス  ソン・ガンホ  ティルダ・スウィントン  ジェイミー・ベル  オクタヴィア・スペンサー  ユエン・ブレムナー  アリソン・ピル  コ・アソン  ジョン・ハート  エド・ハリス
監督 ポン・ジュノ
脚本 ポン・ジュノ  ケリー・マスターソン
原作者 ジャン=マルク・ロシェット  ジャック・ロブ  ベンジャミン・ルグラン
音楽 マルコ・ベルトラミ
概要 フランスの大ヒット・コミックを基に、「殺人の追憶」「グエムル -漢江の怪物-」のポン・ジュノ監督が、「キャプテン・アメリカ」のクリス・エヴァンスを始め、ワールドワイドな豪華俳優陣をキャストに迎えて贈るSF大作。寒冷化によって人類の大半が死滅した終末的未来世界を舞台に、全生存者を乗せて走り続ける列車の中で形成された激烈な階級社会のありさまと、やがて勃発する凄絶な反乱の行方を描き出す。2014年、温暖化を止めるために行った大規模実験が失敗し、地球は氷河期に突入、人類を含めほとんどの生物は死に絶える。17年後の2031年、いまや走り続ける列車“スノーピアサー”の乗客たちだけが人類のすべてとなっていた。やがて、後方車両に押し込められていた貧困層の反乱が勃発する。

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アーティスト情報

クリス・エヴァンス

生年月日1981年6月13日(39歳)
星座ふたご座
出生地米・マサチューセッツ・サドベリー

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生年月日1979年10月11日(41歳)
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