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韓国映画『はちどり』14歳の狭く苦しい日常を美しく描く【マニアックでもケンチャナヨ?】

はちどり / (C) 2018 EPIPHANY FILMS. All Rights Reserved.

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「あなたの知り合いの中で、本心まで知っている人は何人いますか?」

塾の先生が、漢文の一節を14歳のウニに問いかけるセリフ。この言葉が刺さったなら、ぜひ一度この映画を見て欲しい。
今回ご紹介するのは韓国映画『はちどり』です。この映画は 2018年釜山国際映画祭での初上映を皮切りに、 ベルリン国際映画祭をはじめ国内外の映画祭で50を超える賞を受賞しました。

14歳の狭く苦しい心情を、美しく感じさせる『はちどり』のストーリー

はちどり / (C) 2018 EPIPHANY FILMS. All Rights Reserved.

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1994年、韓国ソウル。ソウルの江南区にあるテチ洞にある団地で、餅屋を営む両親とそれぞれに問題を抱えた姉と兄と暮らしている中学2年生の少女ウニの日常の物語。
仕事で忙しい両親の関心はもっぱら長男の大学受験のことだけ。ウニのことなど気にかける素振りもみせることはなかった。
父から学歴プレッシャーをかけられる兄は、ストレスからウニに暴力を振るう。ウニは学校でもクラスに馴染めず、孤独な日々を送っていた。そんなある日、ウニは初めて自分に関心を示してくれる大人と出会う。
それは通っていた漢文塾に新しくやって来た女性教師だった。

映画では14歳のウニの日常の世界を通じて、1994年韓国・ソウルがどんな時代だったのかという大きな背景を知ることができます。
映画を観る前に、ソウルの時代背景を知っておくとより理解度が上がるかもしれません。

高学歴社会・受験戦争のヒートアップ

1994年、急速な経済成長を遂げた韓国のソウルで、その成長の速さゆえ綻びが見え始めたと言われる頃でした。
かつ高学歴が重要視され教育熱が高まり、受験戦争の厳しさが顕著に現れてきたのもこの頃です(大学入試制度もこの頃にスタートしました)。

映画の中では、家父長制がゆえ兄に、父がとことん学歴プレッシャーを与える場面や、ウニのクラスの担任がクラスメート全員に「私はソウル大学に行く」というスローガンを一斉に言わせる場面があります。
高学歴を目指すことが当然であると、社会全体が受験戦争にヒートアップしていることが伝わってきます。
特に、ウニ一家が暮らす江南区のテチ洞は、実際でも教育の熱がすごい高く受験熱を示す象徴の町でもあり、実際に監督のキム・ボラが育った場所でもあるそうです。
私が韓国に留学していた時も、学生の夏休みはほぼ学業のために使い、語学は2ヵ国語の習得では足りず、3ヵ国以上習得しようとする人が多くいたことに驚かされました。

聖水大橋の崩壊事故

映画にも出てくる韓国ソウル市内の漢江に架かる聖水大橋の崩壊事故。これは本当に1994年にあった事故で、橋の中央部分が、長さ48mにわたって突然崩壊しました。
早朝の通勤時間帯であったため、橋を通過中のバスや乗用車が落下した悲惨な事故は、1994年に起きました。
キム・ボラ監督は、事故が起きた1994年を背景にしたストーリーを描こうと思ったと伝えています。

14歳のウニが眺める世界と、家族という枠組みに対する不安と苛立ち

(注意:ここからはネタバレを含みます)

はちどり / (C) 2018 EPIPHANY FILMS. All Rights Reserved.
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そうした韓国ソウルでの社会背景の中で、14歳のウニの日常は、とても窮屈なものとして見えてきます。
映画の冒頭で、ウニはお使いから戻ってきたらドアを開けてもらえず「オンマー(お母さん)、オンマー」と強く叫ぶシーンから始まります(これはウニが部屋の階を間違えていただけだった)。
このシーンの他にも母を叫び呼びするシーンが出てくるのですが、これはウニが「自分がいつか親から見捨てられるかもしれない」という思いを強く印象づける場面でした。
厳格な父と母は、兄をソウル大に合格させること、素行の悪い姉を叱り、末っ子のウニは親の関心から外れていたことで、ウニ自身「愛されていない、いつか見捨てられるのかもしれない」という不安が常に潜んでいたからかもしれません。

クラスメイトになじめず、カラオケやクラブ、万引きや喫煙など素行の悪さが出始めるウニ。
14歳という思春期は、自分の過ごす世界があまりに窮屈で、その狭い世界に自分を合わせていけず、突発的な行動に出ることを、ユニを通じて感じました。
そんな中、漢文塾の先生に出会い、初めて関心を持ってくれる大人に出会います。
「あなたの知り合いの中で、本心まで知っている人は何人いますか?」
その問いかけの意味をどうウニは見つけていくでしょうか。

また、これは私が勝手に感じたのですが、漢文塾の先生役のキム・セビョクとキム・ボラ監督の姿がとても似ているような気がしました。ウニの暮らす街で本当に幼少期を過ごしたキム・ボラ監督。
今の大人になった監督が、ウニを通して幼少期の監督自身に、教えを説いているようにも感じました。

この映画を見終わった後、胸が苦しくなるような感覚ではなく、どこか違う軽やかでどこか美しさもあるように感じられる不思議な感覚でした。

タイトルの”はちどり”のような軽やかに飛んでいきそうなウニがとても愛おしく思える作品でした。
ぜひ『はちどり』ご覧ください。

14歳の狭く苦しい心情が、美しく愛おしい映画

はちどり

はちどり

製作年:2018年
出演者:パク・ジフ 、 キム・セビョク 、 チョン・インギ 、 イ・スンヨン 、 キル・ヘヨン 、 パク・スヨン[女優]

【Editor】CHITOSE/ちとせ

CHITOSE/ちとせ。韓国語を学びに韓国の語学堂に留学し、韓国の伝統建物「韓屋」のシェアハウスで2年生活した経験を持つ。少しだけマニアックな内容を主にお届けします。

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