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ユ・アイン主演! 村上春樹の短編小説『納屋を焼く』が原作の韓国映画『バーニング 劇場版』を観た私が感じた映画の解釈【マニアックでもケンチャナヨ?】

バーニング 劇場版/(C)2018 PinehouseFilm Co., Ltd. All Rights Reserved

(C)2018 PinehouseFilm Co., Ltd. All Rights Reserved

今回は、村上春樹が1983年に発表した短編小説「納屋を焼く」を原作に、イ・チャンドン監督が8年ぶりに監督した『バーニング 劇場版』をご紹介します。ラストまで謎は謎のまま明確な答えが出ることなく観る側の解釈に任せられる村上春樹の小説を見事に現代の話に再現し、新たな味わいとして村上春樹の世界観を映像化した映画です。
この映画は観る側の解釈によって結末の受け取り方は変わってきますので、今回は私が感じた解釈としてご紹介していきます!

『バーニング 劇場版』ストーリー

バーニング 劇場版/(C)2018 PinehouseFilm Co., Ltd. All Rights Reserved

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ウィリアム・フォークナーが好きで小説家を目指すジョンス(ユ・アイン)は、アルバイト中の幼なじみのヘミ(チョン・ジョンソ)と偶然再会する。
その夜、ジュンスとヘミは近況を共有し、ヘミはアフリカ旅行の計画を話し、旅行にいく間飼い猫の世話をして欲しいとジュンスに頼む。旅行から帰ってきたヘミは、アクシデントにより空港で3日間過ごすことになった際に出会った男性ベン(スティーブン・ユァン)と親しくなり戻ってくる。謎に包まれたお金持ちのベン。とある日、ベンとヘミは実家の農場に戻ったジョンスの自宅を訪れる。ベンが秘密を打ち明けたそのあとから、ヘミの消息が忽然と消える…。

この映画はストーリーはこうなります! とシンプルにストーリーの流れだけで説明するには非常に難解です。3人の主要人物をどのように観るかによって映画の結末をいろんな角度で解釈することができてしまうからです。

まずは、この物語の3人の主演人物を紐解いていきたいと思います。

小説家を目指すジョンス

バーニング 劇場版/(C)2018 PinehouseFilm Co., Ltd. All Rights Reserved

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主演のジョンスは、演技派俳優として名高いユ・アインが演じています。
ジョンスは感情の起伏が少なく、決して特別ではない。就職もするわけでもなければ、小説家を目指しているが「何を書きたいのかわからない」と答え、むしろ本当に小説家を目指しているのかも疑いたくなるくらい、向上心も見えない日々配達員のアルバイトをしているごく普通の青年です。ヘミのことが好きなのか、ヘミが誘ってくるから従ってしまうような、前半は欲に溺れているようにも見えた青年が嫉妬に変わり、それが愛だと言うジョンスの気持ちの変化も、曖昧に変わってしまう人間の気持ちをどう受け止めるかも視聴者に委ねられます。

幼なじみのヘミ

バーニング 劇場版/(C)2018 PinehouseFilm Co., Ltd. All Rights Reserved

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ヘミ役のチョン・ジョンソは新人女優でオーディションで決まったそうです。チョン・ジョンソが演じるヘミは独特な世界観を持っており、パントマイムや裸で夕陽に向かって踊る姿がとても新人とは思えないヘミという人間の魅力が伝わってきて、とても惹きつけられました。
ヘミの言葉が真実なのか嘘なのか、この伏線もとても見どころの一つです。
ケニアに行っている間、飼っている猫の面倒を見て欲しいとジョンスに頼み、家に招き入れた日から、幾度とヘミの家を訪れてもジョンスは一度も猫の姿を見ることができなかったり、ヘミが7歳の時に井戸に落ちてジョンスが助けてくれたとヘミは言うが、ジョンスは覚えていませんでした。ヘミの両親も井戸なんてなかったわと話します。

彼女が話すことがまるでパントマイムのように現実にはなかったように描かれています。
しかし、ストーリーが進むと彼女が消えた後に、彼女が話していたことがパントマイムのように現れてきます。彼女は忽然と消えます。まるで最初からヘミはパントマイムのようにそこに居たのかも疑いたくなってきます。

謎のお金持ちで悲しさがわからないベン

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ベン役は、『ウォーキング・デッド』で知られるスティーブン・ユァン。アカデミー賞候補となった『ミナリ』にも出演していたことが記憶に新しいです。ベンは、謎に謎めいています。高級車を乗り回し、仕事なのか遊びなのかわからない生活をしているといい、富裕層の仲間たちで賑やかなパーティーにも参加するも笑顔を見せながら本心は笑っていないのが伝わってきます。
アフリカから帰国後、三人でホルモン焼肉を食べにいった時にベンが「泣いたことがない。悲しいかどうかわからない」と言うセリフが響いてきます。
ベン自身が怪しい動きや行動をしてないのに、冷たさと怪しさが伝わってくるのはスティーブン・ユァンの演技力の高さゆえです。

ベンの実家を訪れた際に、この映画で最も重要なセリフを吐きます。
「古いビニールハウスを選んで燃やす。2ヵ月に1度。存在してなかったように消せるんです」
それはまたすぐジョンスのとても近くで実行すると伝え帰っていきます。
そしてそのあと、ヘミの消息は忽然と消えてしまいます。

この言葉の意味の正解はわからないですが観た人それぞれの解釈に任せられます。
きっとそう言うことだろうと推測はできるがそれが本当に正解なのか、ベンのどこか狂気的な心が隠れているように見受けられますが、それがはっきり描かれることはないので、果たして本当にベンがビニールハウスを燃やしたのか、はたまたそれが比喩なのか、確かめる術はありません。

『バーニング 劇場版』の私なりの解釈

バーニング 劇場版/(C)2018 PinehouseFilm Co., Ltd. All Rights Reserved

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ジョンスとベンの格差やヘミを取られたことによるベンへの嫉妬心、ヘミが居なくなったことに気づいてからのジョンスの喪失感、居なくなってから判明する真実の数々…。ヘミはどこに消えたのでしょうか?

映画には数多くのメタファーが登場します。猫、窓から見える南山タワー、リトルハンガーから人生に意味を求めるグレートハンガーに変化する踊り、井戸の話、カードの負債、ビニールハウス…一つひとつの意味・解釈を変えてみると、ラストの結末が正しい判断なのか誤った判断なのかが人によって変わってきます。

ジョンス目線で見るとベンがきっとヘミを…と勝手に思い込んでしまいますが、ベンが本当に悪いやつなのかは最後までわかりません(あやしい物はいくつかあるが)。ベンが度々サイコにつながるような比喩的発言をしますが、確信めいた何かがあるわけではありません。

もしかしたらヘミは、姉から「カードの負債を返済するまで帰ってくるな」と言われた通り、カードの返済に困り本当に自ら姿を消した可能性もあり得ます。そうだとしたらジョンスは、ベンへの格差社会における嫉妬と恨みからくる勘違いに陥いってしまったことになります。
また、もしかしたらヘミは意図しない事故に巻き込まれて、ヘミが7歳のときに井戸に落ちた時のように、どこかでジョンスの助けを待っているかもしれない。

バーニング 劇場版/(C)2018 PinehouseFilm Co., Ltd. All Rights Reserved

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さらに言えばヘミは、昔ジョンスに「本当にブスだ」と言われて整形までして、ジョンスを見返したいがためにベンとわざと帰国し、ジョンスを嫉妬させるためにベンを利用したのだとしたら、最後にジョンスに言われた言葉に絶望し、自ら消える選択をした可能性もあります。
もちろん、ベンがサイコ的な人間でヘミを消した可能性は一番高い気はしますが…。

映画で描かれる事実はヘミが消えているということ。それ以上でもそれ以下でもないのに、なぜか他の可能性を考えずにはいられなくなってしまいます。

現実に起こる不可解な「謎」を私たちに提示することで、観るものの解釈と想像の世界観で終結していくストーリーです。

不穏な空気感が続いていきますが、148分という長編があっという間に感じました。
『バーニング 劇場版』ぜひご覧いただきどう解釈するか試してみるのはいかがでしょうか?

村上春樹の短編小説『納屋を焼く』が原作の韓国映画『バーニング 劇場版』

バーニング 劇場版/(C)2018 PinehouseFilm Co., Ltd. All Rights Reserved

バーニング 劇場版

製作年:2018年
出演者:コン・ヒョジン、キム・イェウォン、キム・ソンオ、キム・グァンギュ、イ・チョニ、チョ・ボクレ、キム・ジェファ、イ・カソプ

CHITOSE/ちとせ

【Editor】CHITOSE/ちとせ

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CHITOSE/ちとせ。韓国語を学びに韓国の語学堂に留学し、韓国の伝統建物「韓屋」のシェアハウスで2年生活した経験を持つ。少しだけマニアックな内容を主にお届けします。

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