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止まらない自己嫌悪の渦、「小さな家具」が意味するものは? 映画『タイニー・ファニチャー』

タイニー・ファニチャー

『タイニー・ファニチャー』

ニューヨークのど真ん中。職なし、夢なし、居場所なし。

<あらすじ>
オーラは大学卒業後、彼氏と別れて実家に帰っている。進路の決まっていない彼女は、家に居場所がない。そんなとき、ネットにアップしている自作動画でちょっとした有名人であるジェドと出会うが、彼はオーラに気がない。また、アルバイト先でキースという男とも出会うが、彼にはデートをすっぽかされる。だらしない異性との交遊のせいで、母親とも喧嘩してしまったオーラの進む道とは……。

家族・友人が出演しているからこその空気感

今回は、前向きに何かに打ち込んでいるときに鑑賞するのではなく、未来に迷ってこれからどうしよう〜と考えているときに観るのが最高にフィットする作品『タイニー・ファニチャー』をご紹介いたします。
『GIRLS』というドラマをみたことがある人は覚えがあるはず、レナ・ダナムが監督・脚本・主演の3役を務める作品です。
レナの作品といえば、大都市ニューヨークに生きる女性をメインキャラクターにした作品が多く、大学を卒業し就職…という絶妙な時期のあるあるを描いているところが人気のポイントです。

タイニー・ファニチャー

今作はレナが弱冠23歳の時に制作した初めての長編映画であり、実母と妹が家族役として出演している自伝映画とも言われているものです。1人で監督もして脚本も書いて主演もしているなんて、若いだけではなくすごいパワーですよね。
彼女の作品はそのリアルさが強みと言われています。レナが演じるオーラの髪の毛が結んでいるのにボサボサだったり、家の中ではパジャマでウロウロしていたり…。ドアの隙間からのカットが、覗き見しているようだったり…。誰しもが共感できる絶妙なシーンが多く現実にありそうなものばかりなので、映画を観ているのか、ホームビデオを観ているのか分からなくなっていくほどです。

出演しているキャストをみても、いい雰囲気の「身内感」を感じられる配役となっています。先ほど紹介したように実の母親と妹がそれぞれ母役、妹役をやっている以外にも『GIRLS』に出演していて親友のジャマイマ・カークが同じく友人役として出演していたり、親しい先輩のアレックス・カルボウスキーが憧れの存在として出演していたりと出演者たちが知り合いのメンバーだからこその空気感が画面越しに漂ってきます。

タイニー・ファニチャー

特に事件が起こるわけでもなく、全体を通してスーッと平坦に進んでいく作品で、その中で周りの人との関係性が擦れてしまい、変化の生まれる過程に注目するようなストーリーのため何か山ありオチありを期待する人にはオススメできません。
まさにレナにとって「自分の自分による自分のために映画」というような『タイニー・ファニチャー』は大学を卒業した後の同年代の悩める女性、あの頃悩んでいた女性にぜひみてほしいです。

こじらせてしまった女のリアルを追求した映画

タイニー・ファニチャー

仕事で成功する母親と学業に優れた妹に挟まれ、何もしていない・できていない自分が嫌になる。嫌になって周りの人に当たるも相手をしてくれず、そんな自分勝手な自分にまた嫌気が差す。自覚しているからよりタチの悪い…こんな経験はありませんか?

素直になれずモヤモヤとした気持ちの中で必死に生きるオーラの周りで起きることは、どこか元気づけてくれるものばかり。そんな印象的なシーンをピックアップしてご紹介いたします。

まずは、『25や30歳で経済的に自立するなんて不可能よ』というシャルロットの発言。シャルロットはオーラの幼馴染でありながら薬物の更生施設に入っていたり、面白いけどイカれていると周りから言われているような人物です。オーラも5年間距離を置いていたと言っていましたが、一度話してしまうとすっかり昔の仲良しに元通り。そんな久しぶりに会ったときの会話で彼女がさらっとこのセリフを言っていたのですが、なんとなくいま25〜30歳前後の人が感じている心の底の言葉のように感じられてちょっとスッキリしました。

次はオーラの妹、ネイディーンが詩の大会で優勝をしたときの言葉。
『詩は夢と同じ。みんな語りたがるのに他人の詩には無関心』
これは本当にその通りだと思いました、みんな好きですよね夢の話。自分のみた夢の話は嬉々として語るのに、人の夢の話には全く興味を示さないのが詩と同じだというのです。詩と夢はちょっと不確かな感情や出来事を文字化したものとして同等の存在のように感じられます。これもまたどこかスッキリする表現。

タイニー・ファニチャー

続いて、言葉のない数秒のシーンから。
出張でたまたま来ていたジェドという男性に、家族が留守にしていることを理由に家を貸していたオーラ。しかし彼は期限としていただいた1週間を過ぎてもなかなか出ていこうとはせず、むしろお金がない、お腹が空いたとたかるようになってしまい、終いには追い出すような形で別れを迎えてしまいます。その彼が寝ていたマットレスの空気を抜くシーンがあるのですが、これがただオーラがマットレスに乗ってシューっと空気が抜けるのを待っているだけ。
少しずつ空気が抜けて下がっていくオーラの様子が、空気が抜けていくのに合わせて「ジェドに出て行ってと言わなきゃ…」という気持ちの落ち込みに合わさっているように見えてどこか寂しげです。
こうした言葉はなくとも画面のカットの演出などで心情をみせるのがうまいな〜と感じました。これもまたいいシーンでした。

最後は、母親の仕事現場でレナが寝そべっているときに、小さい紙製のミニチュアを持ち出して「これ要らない?」と母親が聞くシーン。映画ポスターにも使われている場面です。
「要らない」と即答するレナの姿は、周りに比べて自分が上手くいかないことへの反抗のシーンだったのでしょうか。
監督としてのレナのインタビューにて、作中にこうしたミニチュアがよく出てくる点や『タイニー・ファニチャー』というタイトルについて『この映画は、自分が小さくて世界になじめないと感じていたときの話だからです。』と言及がありました。
恋も仕事も人間関係も、自分の生活を誰かと比べて落ち込んでしまう…という感覚をもったことがある人には、この作品のどこかのポイントがきっと刺さるはず。私が挙げた以外にもたくさん名シーンがありますので、ぜひ気になる人は鑑賞ください!


タイニー・ファニチャー

 

タイニー・ファニチャー

製作年:2010年
監督:レナ・ダナム
出演者:レナ・ダナム、ローリー・シモンズ、グレイス・ダナム 他

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【Editor】septmersfilms

三度の飯よりホラー好き。ホラーがないと夏が始まらないと思っている。たまにおしゃれ映画・アニメーションも嗜むが、基本的にゾンビ映画をみることで心を癒している。Twitterでは映画以外にも本業のマーケティング関連記事もつぶやきます! ぜひチェックしてください!

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