サナギから蝶へ、少女が成長する姿とは裏腹に感じる不気味さはなんだ…? 映画『エコール』

(C) Ex Nihilo / Bluelight l'Ecole Ltd / UK Film Council / Les Ateliers de Baere / Gimages Films / Love Streams Productions

│エコール

<あらすじ>
深い森の中、少女たちが学校に通いながら生活していた。そこでは異性の姿は無く、バレエの発表会のときのみ外部から客がやってくる。
しかし、少女たちは次第に外の世界への憧れを募らせていく。

│白すぎるものは観続けると怖くなってくる

ホラー映画にもたくさん種類があって「ホラーが観たい!」という気分の時にも、幽霊が出てくる系やゾンビなどのモンスター系、はたまたコメディなのかと様々な種類の中から選ぶことがあると思います。ゾワゾワと怖いものを1人で観たい時や、ドッキリする系をみんなでわいわい観たい時など鑑賞するシチュエーションに寄っても変わりますよね。
今日ご紹介するのは全くドッキリもしなければ、どちらかというとガーリーでファンシーな作品なのですが、どことなくホラー…?と感じてしまう『エコール』という作品です。

監督は以前『エヴォリューション』の記事でも触れたルシール・アザリロヴィックさんです。撮っている作品数は多くなく、そのひとつひとつには共通する空気感がありこだわりを感じます。無駄な音や物、光さえも使わずにファンシーな空気なのになんだかゾッとする空気感、これが彼女の作品の魅力であると思います。

水の中でもがいて泡立っているようなシーンから始まり、どこからともなくやってくる棺から少女が出てきます。本人はどこからやってきたのかも、ここがどこなのかも分かりません。そこには小学生くらいまでの幅で様々な年齢の少女たちがいて深い森の中の5つの寮に分かれて暮らしています。少女たちはみんな茶色の皮靴に白いスカート姿で色のついたリボンを髪の毛に結んでいます。リボンの色は決まっていて最年少は赤、最年長は紫という具合です。
「ここはどこ?」と聞いても「私たちの家よ」と返ってくるし、「おうちに帰りたい」と言っても「ここがあなたの家なのよ」と埒があきません。

そこにいる少女たちは自由に遊びながらも教育を受け、そしてバレエの練習をして発表会に向けて準備をする日々が当たり前なのです。なぜこんなところにたくさんの少女が集められているのか?バレエの発表会に来ている人たちは誰なのか? 全く分からないまま物語は終わるのでした。

│ぼんやりとした夢のような空間

周りを森に囲まれ、逃げ出せないように高い壁まで作られ閉鎖された空間に生きている少女たちはまるで囚われた蝶々のようです。
森の中のはずなのにバカでかい電灯がいくつも連なって置かれている人工的な面からも、ケースの中に入れて飼われている生き物のような印象を受けます。そこにあるのは森の色と髪に巻いているリボンの色だけで、少女たちはみんな白い服だけを着ています。このリボンもまるで観察のためにつける識別の道具のようです。季節が冬になったときの真っ白なコートとマフラー姿はとってもかわいいのですが、どこか着させられている様子。真っ白な服も全員統一することで個性が生まれるのを防いでいるようで意味深です。
観察のためなのか最年長者は夜21時に呼ばれてどこかにでかけているが、結局どこに行っているのかも分かりません。大人たちに従う彼女たちはこの後どうなっていくのか、最後まで観終わって妄想が膨らむこと間違いなしです。

光も音も最小限にしか使わないので、夜のシーンでは画面は真っ暗で眠くなるような、夢のようなカットばかり。こういったドリーミーさもある意味ではホラージャンルの作品なのではないかと感じてしまいます。
似たような作品に『ヴィオレッタ』や『ロリータ』があります。何も知らない少女が大人に言われるがままに振る舞うのは危うくて脆くて恐怖を感じるほど。
監督もそんな成長していく過程の年齢の子どもを作品の主役にすることが多く、そんな子どもたちの不安を描きたいという思いがあるんだとか。何かを信じきった存在をずっと見させられる不思議な感覚です。
これをホラーと感じるかは分かりませんが、他の映画にはない不気味さがあるのではないかと思いますので気になる方はぜひ鑑賞ください!


エコール

製作年:2004年
監督:ルシール・アザリロヴィック
出演:ゾエ・オークレール、ベランジェール・オーブルージュ、リア・ブライダロリ、マリオン・コティヤール、エレーヌ・ドゥ・フジュロール、ソニア・ペトロヴナ ほか

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【Editor】septmersfilms

三度の飯よりホラー好き。ホラーがないと夏が始まらないと思っている。たまにおしゃれ映画・アニメーションも嗜むが、基本的にゾンビ映画をみることで心を癒している。Twitterでは映画以外にも本業のマーケティング関連記事もつぶやきます! ぜひチェックしてください!

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