【連載】LIFE相場正一郎さんと12カ月の道具たち:10月はとっておきの調理道具で料理を作る

2003年、代々木八幡商店街にレストラン「LIFE」はオープンした。訪れた人を心地よく包み込むような空間とほっとさせる料理だけでなく、カルチャーやライフスタイルの発信地としても多くのお客さんから愛されている。

そんな「LIFE」の生みの親であるオーナーシェフ・相場正一郎さんは、自他ともに認める“道具好き”。食はさることながら、山登り、サーフィン、インテリア、カメラなど、さまざまなことに造形が深い相場さんは、一体どんな道具たちと寄り添いながら一年を暮らしているのか。その月ごとの欠かせない愛用の道具をひとつずつピックアップして、相場さんと道具たちのストーリーを紡いでいく。

第7回目となる10月は相場さんの商売道具でもあるキッチンツールのお話。機能性はもちろん見た目も美しい調理道具の数々を紹介してもらった。

お店やケータリングで大活躍の包丁セット

――まずは味のある皮のケースに入った包丁セットについてお聞きしたいのですが、こちらはいつ頃購入されたものでしょうか?

5年ほど前にアメリカのサンフランシスコのマーケットで購入したヘンケルスの業務用のものです。ちょうどその頃はお店に加え、ケータリングの仕事が多くなった時期でしたので、よい機会だなと。こちらは日本では販売されていないモデルのものなのですが、肉用と野菜用に各1本ずつとペディナイフが入ってセットになっています。柄の部分が木製のものとゴムのものがあるのですが、自分は木でできたものが好きで木のものを使っています。

  

――柄の素材の違いで調理に影響はあるのでしょうか?

ゴム製のものは手触りが優しいのですが、使っていくうちに感触が変ってくる気がしますね。僕は木の素材が手になじむ感じが好きなのですが、もちろんフィット感のあるゴムのものを好む料理人もいますので、使いやすさというよりも好みの問題だと思います。

――ナチュラルな素材を好まれる、相場さんらしい印象です。

重さのある鉄鍋はサイズごとに様々な料理に活躍

――お鍋はサイズ違いのルクルーゼとストウブをメインに使われているようですが、これらの鉄鍋を愛用するようになったきっかけは?

17、8年前に自宅で料理をするためにルクルーゼのシンプルな白の20センチのものを買ったのが最初です。当時ルクルーゼは今ほどメジャーではなかったのですが、和の鉄鍋とは違った佇まいに惹かれました。この鍋ひとつでカレーや鍋料理など色々なものを作りましたね。

――ルクルーゼもストウブもフランス製の鍋ですが、これらはイタリアンでもよく使われるのでしょうか?

いいえ、こういった鉄鍋はイタリアではほとんど使われていないのですが、ワインに合う肉料理を作るのに適しているんですよ。

――なるほど。大中小と様々なサイズがありますが、大きさごとにおすすめの使い方はありますか?

小さいサイズのものは付け合わせ用の野菜とオリーブオイルを入れてオーブンにかけて、表面に焼き色を付けると美味しく仕上がりますよ。見た目もよいのでお皿に移さず鍋のままテーブルに出してもいいですね。中サイズのものは鶏肉や豚肉をソテーし、蓋をして蒸し焼きに。僕は主に肉料理に使いますね。使い勝手がよいサイズなので、ブイヤベースやソーセージの煮込み料理を作るのにも活躍します。大きなものは主にスープなどの仕込みに使うことが多いですね。

――想像するだけで美味しそうですね。ルクルーゼとストウブの使用用途の違いはありますか?

どちらも鋳物で表面をホーローでコーティングしてあるのですが、ルクルーゼのほうが少し軽いので家庭向きですね。また、ルクルーゼは蓋の内側が平らなので当たりがよく、手入れもしやすいのも利点だと思います。逆にストウブは重さがあり、蓋の内側に水蒸気がまんべんなく落ちるように凹凸が付けられていて、均等に火が入るように工夫されている。どちらかというとプロ向きのお鍋ですね。

よい道具と少しの知識で料理はもっと美味しくなる。

――どちらでも一家に一台あると重宝しそうですね。お鍋だけでなくフライパンも鉄製で重めのものをメインに使われているのですね。

ドイツのターク製のフライパンを愛用しています。

――いかにもプロ仕様といった印象の鉄製フライパンは手入れが難しそうで、家庭で使うには少々ハードルが高く感じてしまうのですが。

そんなことはないですよ、ドイツの鉄は錆づらいのが特徴なんです。鉄の年代が違うからでしょうか、他の鉄製のフライパンは少し外に出しておいたらすぐに錆てしまうものも多いのですが、タークのフライパンは油をよく吸収して錆づらく手入れもしやすいです。継ぎ目のない一体型のフライパンなので、壊れにくく半永久的に使えるのも魅力だと思います。

――機能的なだけでなく経済的でもあるのですね。手入れ面以外のタークの魅力は何でしょうか。

タークのフライパンを使って肉などを焼き込むことでパリっと香ばしく仕上がります。テフロンのものだと温度調節が「あつい」か「つめたい」だけなのですが、鉄だとその中間の温度調節もできる。フライパンをある一定の温度まで温めた後、低温にすることできれいな焼き色を付けることができる。同じ焼き方をテフロンのフライパンで行うと焦げてしまうのですが、タークだと中間の優しい温度調節が可能なので、まるでオーブンを使ったようにじっくり焼き込むことができるんです。

相場さんにタークを使って作ってもらったポークソテー。表面はパリっと香ばしく中はジューシー。付け合わせの野菜も食感がよく甘みがあり、手軽でありながらゴージャスな一品。

――よい道具を使うことでより美味しい料理を作ることができるのですね。

ある程度よい道具に少しの知識を入れることで、誰もが料理を美味しく作れる確率が増えると思っています。これこそ優れた道具のもつ意味なのかなと。美味しい料理を作れるだけでなく、日々使い込むことで道具がより味わい深くなっていくのも嬉しいことですね。

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(インタビュー・文:山本加奈子、撮影:MASA(PHOEBE))

「LIFE」オーナーシェフ
相場 正一郎

イタリアのトスカーナ地方で料理修行をした後、2003年に代々木公園にカジュアルイタリアン「LIFE」をオープン。現在、「LIFE son」「LIFE Sea」など全国に5店舗を運営する。店舗では、イベントの開催、オリジナルプロダクトの制作、地元の情報を集積したフリーペーパー『PARK LIFE』の発行など、カルチャーの発信地としても多くのファンを持つ。最近、渋谷の東急本店に抜ける長い一本道「奥渋谷」に話題の店が続々と増えているが、その走りとなったパイオニア的な店が「LIFE」と言える。

著書は『世界でいちばん居心地のいい店のつくり方』(筑摩書房)『LIFEのかんたんイタリアン』(マイナビ)『LIFE OF THE MIND』(ネコ・パブリッシング)など。

公式サイト

■他の月の「【連載】LIFE相場正一郎さんと12カ月の道具たち」を読む

4月はイタリア時代からの相棒・カメラと旅立つ
5月は思い出のインテリアを囲んで家族と寄り添う
6月の朝はコーヒーと読書ではじめる
7月は手作りボードで、サーフィンと仕事の波に乗る
8月は愛車ディフェンダーでドライブ。山へ海へ
9月はグリーンを飾ってお客さんをもてなす
11月の休日は男のアウトドアを楽しむ
12月はお気に入りの食器&カトラリーで食卓を彩る
1月は憧れの人ゆかりの腕時計で時を刻む
2月はメガネを使い分けて日々のおしゃれを楽しむ
3月は愛用の道具を鞄に詰めて街へ繰り出す

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