最新8巻はルビー、有馬かな、MEMちょの新生「B小町」のMVロケで高千穂へ行く話が中心として描かれている。高千穂はアクアとルビーが生まれた病院のある町、そしてアクアの前世であるゴロー先生が殺された町でもある。(1巻参照)
そしてついに1巻のインタビューパート【映画監督】編で五反田の横に置かれていた看板にあった「15年の嘘」の企画書が作中に登場する。
│『【推しの子】』は紛れもないミステリーで自分の考察を語り合う楽しみが本気で出来る作品だ
1巻目はミステリーで言う所の“出題編”と捉えるとわかりやすい。
そんな1巻に収録されている2話から10話まで冒頭1ページ目で描かれたインタビュー〇(〇には1から9の数字)とタイトル付けられた部分がインタビューパートだ。
誰かが誰かにインタビューをしているような形式で描かれたこの部分は、ストーリーが進んでいくにつれて大きな意味を持つようなものになっている。
まずインタビュー①【アイドル】編ははっきりと「ルビー」と名前も書かれているので、アイドルであるルビーが女優に初挑戦する上で受けているインタビューであることは間違いない。
ここで気になるのはルビーが呼び止めた「おにいちゃん」という存在だろう。普通に考えたらアクアであると思うのが自然だが、7巻で判明したとある可能性や何となくアクアっぽくない服装からアクアではない可能性も見えてきた。
もちろんミスリードの可能性もあるが……気になるポイントだ。
インタビュー②【マネージャー編】で描かれているのはお酒を飲んでいるミヤコさんだろう。ルビーのインタビューとはうって変わってラフな会話(敬語ではあるが)で②は描かれている。誰と話しているのか気になるところだが、もっと気になるのは最後の彼女を呼び出したルビーのコマ。醤油はミスリードなのか否かでこのコマの意味は大きく変わる。
先か後かは不明だがミヤコ、ルビーの見た目などから①と近しい時間軸での出来事のようには読み取れる。
インタビュー④【映画監督】編では先に触れたように「十五年の嘘」という看板の横でインタビューに答える五反田監督の姿が描かれている。このインタビューはTVでよく見る映画監督へのインタビューのような画面構成から本格的なインタビュー感が漂う。
気になるのはこのインタビューのとられた時間軸。「7年連続で何かの監督賞にノミネート」「この企画は15年前にポシャった脚本のセルフリバイバル」、メインキャストに対して「あいつらがオムツの時から見てきたから孫みたいなもの」と非常に意味深なセリフが描かれまくっている。特に最後の「オムツ」「孫」はこのインタビューから始まる5話を読むとミスリードにも核心につながっている事にもつなげて考えられるポイントだろう。
そしてこのインタビューでははっきり「アイ」の名前が出てくることも忘れてはいけない。
インタビュー⑤は【女優】編、有馬かな。「ここカットで」という言葉があるので正式なインタビューである可能性が高い。そしてここでは「天才だってナイフで刺されればお陀仏です」という言葉がどうしても目につく。これはいったい「誰」を指した比喩なのか。
時間軸は①②とさほど変わらないように思うが、有馬かなが「あーくん」とアクアを呼んでいる点(あーくんがアクアであることは以前のインタビューで赤坂先生が認めている)で、いつからあーくん呼びをしているのかや、少し大人っぽく有馬かなが描かれているポイントから①②よりも少し未来の時間軸の可能性も考えられる。
この仮定が正で②の醤油がミスリードだとすると……。
そして、インタビュー⑧【役者】編は舞台編で描かれた「黒川あかね」の表現で考察の幅が一気に広がってしまった。6巻を読んでからここを読み返したときにその可能性に鳥肌が止まらなくなるほど衝撃を受けてしまった……。
この⑧についてはあえてここまでで止めておきたいと思う。
今回は自身の考察というポイントからレビューを書かせていただいた。
今まではこういったレビューをさせていただいたのは『【推しの子】』は紛れもないミステリーで自分の考察を語り合う楽しみが本気で出来る作品だとあらためて8巻を読んで感じたところが大きい。
気にはなっていてタイトルは知っていたけどまだ『【推しの子】』を読んでいないという方にとって今回の8巻のタイミングは現時点での読み初める最高のタイミングだと断言できる。
全巻ネタバレありで語ったら一晩じゃ足りないくらいの考察バトルが繰り広げられ、可愛さも少年漫画のような熱く夢中になる展開も多方面のファンを取り込める魅力を持つ『【推しの子】』
ほぼ確実に覇権を取るであろうアニメ化で幅広い層に広がり、国民的な人気が出る一足先に読み始めてみてはいかがだろうか?
(文:仕掛け番長)
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【コンシェルジュ】仕掛け番長
栗俣力也(くりまた・りきや)。TSUTAYA IPプロデュースユニット 企画プロデューサー。
TSUTAYA文庫、コミック、アニメグッズの企画を担当。10年以上のキャリア持つ書店員でリアル店舗からヒット作を次々と生み出す事から仕掛け番長と呼ばれる。人生のバイブルは『鮫島、最後の十五日』
Twitter(@maron_rikiya)